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西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」

2019年10月28日
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西島和弁護士(水源連事務局)のインタビュー記事がネットに掲載されましたので、その記事を掲載します。

注目の人 直撃インタビュー
西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」

(日刊ゲンダイ 公開日:2019/10/28 06:00) https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263717


(写真)西島和氏

大型台風が次々に日本列島を襲い、甚大な水害をもたらしている。一方、巨大ダムやスーパー堤防があったから被害を食い止められたという自民党政治礼賛の声がネットで飛び交っている。果たしてそれは事実なのか。河川公共事業の住民訴訟に取り組んできた専門家に話を聞いた。

◇  ◇  ◇

――台風19号は記録的な大雨を降らせましたが、八ツ場ダムがギリギリまで貯水した画像がネットで拡散され、おかげで利根川の氾濫を防げたという意見もあります。これは事実なのでしょうか。

誤解です。八ツ場ダムがなくても、利根川の河道で流せる程度の降雨量でした。治水というと、ダムを連想する人が多いと思いますが、基本は堤防や河道掘削などの河道整備です。雨がどこにどれだけ降っても、一定量を流せる河道整備が進められてきたことにより、利根川では氾濫が起きませんでした。これに対し、ダムの効果は不確実で、限定的です。降雨が「想定した場所」「想定した規模・降り方」で発生し、かつ、放流のタイミングを誤らないという場合に河川への流入量を減らせるにすぎないのです。

――八ツ場ダムが本格稼働していなかったことも背景にありましたね。

今回ラッキーだったのは、八ツ場ダムが試験湛水中だったため貯水量が少なく、本来より多くの水を貯めることができたことです。

――もし八ツ場ダムが本格稼働していて今回のような雨量になったらどうなっていたのでしょうか。

危なかったと思います。ダムは無限に水を貯めることができるわけではありません。ダムが貯められる以上の降水が発生した場合、ダムはダム自体の決壊を防ぐために緊急放流を行うことがあります。それで失敗したのが昨年の西日本豪雨で大規模な浸水被害を引き起こした愛媛県の鹿野川ダムです。緊急放流をしたため肱川が氾濫し死者を出しました。今回もいくつか緊急放流をしたり、準備をしていたダムがあります。ダムの限界には注意する必要があります。

――八ツ場ダムの住民訴訟の弁護団に加わっていましたが、どのようなきっかけでしょうか。

八ツ場ダムは治水と利水という相反する目的をもつ多目的ダムです。東京都は約500億円の利水負担金で新たな水源を得ようとしていました。しかし東京は人口は増えていますが、水需要は頭打ちで減少傾向ですから、負担金支出は違法だという訴訟を住民が起こしたのです。弁護団に加わるきっかけは「岸辺のアルバム」で知られる多摩川水害訴訟を手がけた高橋利明弁護士のお話を聞いて、ダムのイメージが変わりショックを受けたことです。

――訴訟は敗訴しました。

裁判所は八ツ場ダムが治水で役に立つ可能性が皆無ではないなどと判断しました。

――秋田県・雄物川の成瀬ダム訴訟もされていましたね。

緑にかこまれた美しい沢もある自然豊かな場所に造る計画で、農家の方などが子や孫に自然を残したいと起こされた訴訟です。成瀬ダムは最上流にあり、流域面積の1%の集水面積しかなく、治水効果がきわめて限定的です。堤防整備が相当遅れている状況で利水負担金約200億円を支出してダムを造ってもらうメリットは秋田県にはありません。しかし、裁判所は、治水に役に立つ可能性はゼロではないし、利水負担金は支出しない民意が明らかではないから公金支出は違法ではないとしました。

――「可能性はゼロではない」と繰り返す裁判所の理屈は暴論ですね。

「ダム優先」「人命軽視」の国策で堤防整備は後回し

――デタラメですね。

盛り土をともなう再開発で立ち退きが必要になりますから、計画が進まないのです。北小岩では強引に進めて「まちこわし」になりました。

――ところで国交省の堤防は土を盛ることしかしないのですか。

今回の長野県・千曲川も洪水が土の堤防を越水し破壊したことによる決壊だといわれています。堤防を越えると水が反対側に落ちて、滝つぼができるように土の堤防を削って決壊させるのです。ですので、国交省がかつて研究してきたアーマー・レビー工法のような堤防強化が必要なのですが、今の国交省は河川管理施設等構造令の土堤原則だからと土を積むだけです。

――堤防に矢板(鋼板)を入れるのもダメですか。

矢板やセメントなど異物を入れてはいけないそうです。土堤原則には例外もあり、場所によっては堤防強化されている例もあるのですが、決壊を防ぐには原則と例外を逆にすべきです。理解に苦しみます。

■国土強靭化は“やってる感”のスローガン

――安倍政権は国土強靱化を掲げていますが、水害対策は強靱化されましたか。

国土強靱化は“やっている感”を出すためだけのスローガンです。公共事業批判を封じ込めたいのでしょうが、事業の中身は問わず規模を大きくするだけでは問題は解決しません。“忖度道路”(安倍・麻生道路と呼ばれる下関北九州道路)など民主党政権時代にできなかったような事業も復活させる一方で、堤防決壊を回避するための本当に必要な対策は後回しにされています。

――河川水害はどうしたら防げるのでしょう。

水害を100%防ぐことはできませんが、氾濫しても人命が失われることのないよう、越水しても決壊しない堤防を整備していくことです。日本全国の堤防は土を盛っただけの“土まんじゅう”で、安全度も低いところが多いんです。2015年の豪雨で利根川水系の鬼怒川が決壊し、死者が出ました。10年に一度くらいの規模の雨でしたが、堤防を強化して氾濫だけで済んでいれば、あれほど深刻な被害にならなかった可能性があります。数時間の越水に耐えられる堤防を造って、少なくとも短時間に大量の水があふれないようにすることです。

――今後はどのような活動をされていきますか。

安全度が低い堤防などの整備を後回しにして、ダム整備を優先するのは人命軽視だと成瀬ダム訴訟でも主張してきました。広範囲で大規模な災害が起こる気候危機の一方で、災害対策の予算・人手は限られており、整備の順番はとても大事なんです。国交省にいる志のある人などを後押しして、住民の命を最優先で守る治水への方針転換を実現したいと思います。ただその前に現政権が代わらないと無理だとつくづく思います。

(聞き手=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

▽にしじま・いずみ 1969年、長崎県生まれ。東京外国語大学卒。2006年から弁護士。八ツ場ダム住民訴訟、スーパー堤防差し止め訴訟など治水問題や福島原発事故の避難者訴訟の弁護団に加わってきた。

八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか?(朝日新聞のウェブサイト「論座」)

2019年10月23日
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朝日新聞のウェブサイト「論座」に「八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか?」を書きました(嶋津)。

公開されていますので、全文を転載します。
八ッ場ダムが利根川の氾濫を防いだというフェイクニュースが出回っていますので、周りの方への拡散をよろしくお願いします。

八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか? 治水利水の両面で必要性は失われている
嶋津暉之 水源開発問題全国連絡会・共同代表
(朝日新聞「論座」 2019年10月23日)

千曲川決壊に関する参考資料3点

2019年10月23日
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千曲川決壊に関する参考資料も3点掲載します。

一つは破堤地点の地図です。千曲川の穂保で破堤して洪水が流入し、千曲川と並行して流れている支川・浅川の周辺が氾濫域になりました。

一つは浅川等の支川が合流した後の立ケ花の観測水位の推移です。立ケ花の上流で浅川や鳥居川が合流します。立ケ花の最高水位は12.44m(時間単位の最高水位であって10分単位の最高水位はこれより大きい)で、計画高水位を超え、計画堤防高をも約20cm超えました。立ケ花は狭窄部ですので、その直上流で水位が高くなり、穂保地点で越水し、破堤に至ったと考えられます。

さらに一つは浅川合流点から約14km上流にある浅川ダムのデータです。決壊した10月13日3~5時の前は流入量と放流量がほぼ同じで、何の役割も果たしていません。
ただし、浅川ダムの集水面積は15.2㎢で、微々たるものです。千曲川の立ケ花地点の流域面積6442㎢の約1/400です。

とにかく、今回の破堤は、未曽有の豪雨で千曲川の水位が上昇し、穂保地点で越水したことによって引き起こされたのですから、そのように破堤の危険性のある箇所をピックアップし、(旧建設省が一時は進めようとした)耐越水堤防工法を導入することが急務だと思います。

(「堤防決壊は71河川130か所 耐越水堤防の導入・普及を!」https://suigenren.jp/news/2019/10/20/12451/を参照)

浅川ダム(出典:国土交通省「川の防災情報」)

決壊メカニズムに違い 「100年に1度」超す雨直撃 国交省、千曲川・阿武隈川など調査へ(千曲川決壊に関する記事3点)

2019年10月23日
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千曲川決壊に関する記事を3点掲載します。

決壊メカニズムに違い 「100年に1度」超す雨直撃 国交省、千曲川・阿武隈川など調査へ
(日本経済新聞2019/10/20)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51197660Z11C19A0CC1000/

台風19号は東日本の広い地域で「100年に1度」を超える大雨をもたらし、河川の氾濫や大規模な浸水被害が相次いだ。現地調査などによって、決壊は場所によって異なるメカニズムで起きたことが分かってきた。地球温暖化のため今後、同等以上の大雨は増えると予想されており、防災のあり方を見直す必要もでてきそうだ。
国土交通省は15日、大規模な浸水被害が起きた千曲川の堤防決壊現場に専門家らを派遣して調査した。参加した信州大学の吉谷純一教授は「川の一部の水が堤防を乗り越える『越水』が発生した可能性がある」と分析する。乗り越えた水が堤防の上部や外側の土を削り、堤防の強度を低下させて決壊を招くケースだ。
堤防の決壊メカニズムには他に、川の水によって堤防が川側から削られる「浸食」や、堤防から水が染みだして外側で土砂が崩れる「浸透」などがある。
阿武隈川沿いで浸水が起きた宮城県丸森町では、14日に東北大学災害科学国際研究所の専門家らが調査した。同研究所の森口周二准教授は「堤防上部に川の石や砂が見られず、浸食や浸透で決壊した可能性がある」と指摘する。
国交省は千曲川や阿武隈川など6つの河川について、堤防決壊の原因を調査する委員会を設置した。今後の復旧作業を決めるため詳細な調査をする。まだ計画の詳細を詰めており、しばらく時間がかかる見通しだ。
個別の詳細な調査はこれからだが、大きな要因は想定を超す大雨が降ったことだ。大きな河川の堤防は一般に、過去の記録をもとに100年に1度の大雨が流域内で降っても耐えるように計画されている。
防災科学技術研究所の分析では、千曲川上流や阿武隈川上流の広い地域で、12日の24時間降水量が100年に1度よりもまれな規模だった。気象庁によると、台風の接近から通過までの半日の間に、全国の120地点で観測史上最高の雨量を記録した。
防衛大学校の小林文明教授は「台風は上陸前から日本に大量の湿った空気をもたらしていた。それが山地にぶつかり、強い雨が降り続けた。さらに台風本体による雨が続いた」と分析する。
この先、温暖化が進めば降水量が増える可能性は高い。小林教授は「治水対策は一般に20~30年前の災害状況をもとに作られているが、当時と現在で状況は異なる。この規模の台風を当たり前と捉え対策をする必要がある」と話す


巨大台風と治水 「まさか」はもう通用しない


(信濃毎日新聞2019年10月20日)https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191020/KP191019ETI090006000.php

「ぼくらの大事なふるさとを守ってくれてる(略) ぼくらの歩む未来が輝き続けるように」

長野市の長沼小6年の児童たちが2015年3月に上演した創作劇「桜づつみ」の主題歌だ。

歌われているのは長沼地区にある千曲川の堤防。1984年に完成した既存の堤防を、地元の要望を受け再整備した。

4・3キロにわたって国が盛り土をして堤防機能の維持を図り、市が遊歩道をつくった。地元が寄付した約400本の桜も植えた。

15年かけた事業が完成したのは16年。水害に苦しめられてきた地区には待望の堤防だった。竣工(しゅんこう)式では地元役員から「これで安心できる」などの声が出たという。

児童たちは、水害の歴史を地域の人たちから学び、語り継ごうと劇にした。竣工式でも歌い、歌碑も遊歩道に設置された。

今回の台風で決壊した千曲川本流の堤防はこの「桜づつみ」だ。

<83年を超えた水位>

本流の堤防が決壊したのは1983年の飯山市以来になる。この時に決壊したのは整備前の暫定的な堤防だ。完成堤防の決壊は、千曲川では今回が初めてになる。

長野市の加藤久雄市長は記者会見で「破堤しないという安心感があった」と述べた。住民からも「切れると思わなかった」「大丈夫と過信していた」などの声が相次いだ。今回の災害は、堤防やダムに頼る「治水の限界」を改めて浮き彫りにしたといえる。

国土交通省は2014年に策定した信濃川水系河川整備計画を基に、千曲川の改修を進めてきた。

県内で堤防が必要な区間は226キロ。計画通りの堤防が完成しているのは18年度末時点で145キロ、計画より高さや幅が不足している暫定、暫々定堤防が70キロ、堤防がない無堤区間が11キロある。

計画の想定は、83年の洪水と同程度の流量があっても決壊や越水を防ぐこと。堤防が不十分な区間の整備が中心で、完成堤防の強化は予定されていない。

今回の豪雨で中野市立ケ花の水位は12・44メートルとなり、83年の11・13メートルを更新した。流量は分析中だが、整備計画の想定を上回っていた可能性が高い。

<防ぎきれない水害>

千曲川では決壊、越水地点が中野市や上田市など広範囲にわたった。2044年ごろに終了する現計画が完了していても、今回の水害は防げなかった可能性がある。

信州大工学部の吉谷純一教授は「いつか発生するのでは」と危機感を持っていたという。

特に決壊部分の危険性は以前から指摘されていた。千曲川に犀川が合流し、長野市内の水を運ぶ浅川などが流れ込む。流量が増えた先に立ケ花の狭窄部分があり、水位が増しやすい。

近年は台風などの豪雨で全国各地で氾濫や土石流などが発生し、犠牲者が出ている。整備計画も「防ぎきれない大洪水は必ず発生する」と社会の意識を改革する必要があると強調していた。

吉谷教授は「堤防を水が越えればいずれ決壊する。被害がさらに大きくなっていた可能性もある」とする。その上で「水害は起きるという意識を持ち、行政に頼るだけでなく、河川監視カメラを確認するなどして住民が主体的に避難することも大切」と指摘する。

地域のリーダーに対する危機意識の啓発や、子どもへの教育を進めることも欠かせないという。

市町村が作成したハザードマップを確認し、避難先の確認や手段も確かめておきたい。企業も水害への対応を見直す必要がある。

自治体は避難勧告や指示などを出すタイミングを、堤防は完全ではないという意識を持った上で再検討しなければならない。

<災害から何を学ぶ>

国土交通省北陸地方整備局(新潟市)は、今回の災害を受けて、現在の整備計画をどう進めるのか検討していくという。

より大きな流量に対応するには完成堤防の改修、強化なども必要になる。その場合、限られた予算の中で巨額の費用がかかる。

まずは上下流のバランスを取りながら、危険地域の改修を確実に進めたい。支流が本流に流れ込めない内水氾濫を軽減するには、都市部に降った雨を遊水地などで一時貯留する総合治水を、各地で進めていくことも考えたい。

千曲川は、新潟の信濃川を含めて総延長は国内最長の367キロ。山間の狭窄部と盆地で河道が広い部分が連続し、氾濫しやすい。

大型で非常に強かった台風19号は、千曲川の広い流域に豪雨をもたらした。支流を通し本流に集まった大量の雨水は、時間をかけて下流に押し寄せた。温暖化の影響で同じような巨大台風が常態化する恐れもある。

国直轄の千曲川改修工事が始まったのは1918(大正7)年。今年で101年となる。この間にも大きな氾濫が各地で発生し、乗り越えてきた歴史がある。

今回の災害から何を学ぶのか。流域で生きる全ての人たちが考えていかなければならない。


長野市、決壊周知せず 千曲川、被災住民から批判も

(中日新聞 2019年10月22日)https://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20191022/CK2019102202000028.html

長野市が、台風19号で千曲川の堤防が決壊したとの情報を把握したにもかかわらず、周辺住民に即座に知らせていなかったことが分かった。市の担当者は「(濁流が堤防を越える)『越水』に関する情報は住民に知らせ、避難指示も出していた」と説明。「解釈上は『越水』も『決壊』に含まれる」としているが、決壊した後に避難先から自宅に戻り、その後再び避難した住民からは「決壊を知っていたら戻りはしなかった」との批判の声が出ている。
国土交通省北陸地方整備局(新潟市)によると、堤防は十三日午前三~五時半に決壊したとみられる。
長野市危機管理防災課などによると、堤防の決壊は千曲川を管理する国交省千曲川河川事務所職員が十三日午前五時半に確認し、午前六時に発表した。市は同じ時間にテレビ報道で決壊を知ったが、国交省側に確認しなかった。
しかし、市は午前七時ごろの防災メールでも「決壊の恐れがある」と発信し、その後も住民向けに決壊したとの情報は公式には出していない。市の担当者は今回の対応は、実質的に問題はなかったとの認識を示している。
ただ、水防法では水防を担う市に対し「堤防が決壊したときは、ただちに関係者に通報しなければならない」と義務付けている。
国交省水防企画室の担当者は「一般的には『関係者』には周辺住民も含まれる」と解説する。
堤防決壊で濁流が自宅に押し寄せた同市豊野地区の無職男性(74)は十三日午前六時半ごろ、避難所から車でいったん自宅に戻った直後、周辺で浸水が始まった。慌てて車で逃げたが、自宅は一階部分が浸水した。
男性は「一歩間違えたら大変なことになっていた。市は、今後の課題として検証をしてほしい」と注文した。
(伊勢村優樹、日下部弘太、我那覇圭)

続けて来る洪水には対応能力が大きく低下するダム

2019年10月23日
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台風20号が温帯低気圧になりましたが、近畿から関東にかけてかなりの雨を降らせました。台風19号の被災地に更なる災厄をもたらさないことを祈るばかりです。

この台風20号の接近に対して、国土交通省関東地方整備局が10月20日に

「台風第20号に備えダムの洪水調節容量の確保を進めています」を発表しました。http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_s_00000412.html

その本文資料には利根川上流ダム群、鬼怒川上流ダム群などについて10月20日10:00時点の洪水調節可能容量が下図の通り、示されています。

ダムの数字を見ると、本来の洪水調節容量を大幅に下回っていることに驚かされます。

本来の洪水調節容量と10月20日時点の洪水調節可能容量を比較した表を下記に示します。

利根川上流ダム群は回復率26%、鬼怒川上流ダム群は50%、宮ケ瀬ダムは20%です。(荒川上流ダム群は50% 【補遺】を参照)

10月12~13日の台風19号が来てから、1週間程度ですが、水位を十分に下げることができない状態になっています。

洪水期がすでに終わっているので、すみやかに水位を下げられないということがあるのでしょうか。

とにかく、台風が次々を押し寄せてきているのですから、ダムの水位を極力下げて次の洪水の到来に備えなければならないはずなのに、現実のダムはそのようになっていません。

続けて来る洪水には対応能力が大きく低下するのがダムであって、ダムに依存する治水行政の危うさを物語っています。

【補遺】ダムと比べて、対応能力の回復が早いのが、河川の中下流に設置された洪水調節池です。

渡良瀬川最下流の渡良瀬遊水地、利根川中下流の田中・菅生・稲戸井調節池は本来の洪水調節容量を上回る容量の調節が可能となっています。(回復率が100%を超える理由は今後調べます。)

洪水調節池は洪水のピークが過ぎれば、速やかに放流するので、回復が早いのです。

なお、荒川の数字は荒川上流3ダムと荒川第一調節池を合わせた数字で、回復率が82%になっていますが、荒川第一調節池の回復率を100%とすると、荒川上流3ダムの回復率は50%になります。

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