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鳩山由紀夫氏 旧民主が一時凍結「八ッ場ダム」が利根川守ったに反論「氾濫考えられない」

2019年10月20日
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鳩山由紀夫氏 旧民主が一時凍結「八ッ場ダム」が利根川守ったに反論「氾濫考えられない
(デイル2019.10.18)https://www.daily.co.jp/gossip/2019/10/18/0012801066.shtml

鳩山由紀夫元首相がツイッター投稿で、旧民主党政権が一時建設中止にしようとした群馬県の「八ッ場ダム」が台風19号襲来時に利根川氾濫を防ぐ役割を果たしたの評価があることに、「事実ではない」と反論している。
鳩山氏は「ダム推進派は八ッ場ダムのお蔭で利根川を守ったと強調しているようだ。でもそれは事実ではない」と主張した。
「八ッ場ダムがなかった場合水位は17センチ上昇したに過ぎず、氾濫は考えられないのだ」と自身の分析を記した。
「むしろ今回八ッ場ダムは試験的貯水だったため貯水量は最低水位より低かった。本格運用していたら緊急放流もあり得たのだ」ともツイートした。

 


ネットで賞賛の八ッ場ダム 「利根川流域を守った」は本当か

(NEWSポストセブン 2019年10月18日 07:00)https://blogos.com/article/411405/

(写真)台風19号が去り、ほぼ満水状態となった八ッ場ダム(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
台風19号は日本の各地に大きな爪痕を残した。全国55河川の79か所で決壊が起き、NHKの集計(10月17日9時)によると、77人が死亡、10人が行方不明、346人が怪我をしたとされている。
東京では多摩川が世田谷区二子玉川付近で氾濫。荒川は氾濫しなかったが、荒川上流に流れ込む入間川や都幾川などが埼玉県内で氾濫を起こした。荒川も何か所かで危険水位に達していたので、これらの河川が溢れていなければ、荒川もどこかで決壊していたかもしれない。
関東を流れるもう一つの大河川、利根川も一時、氾濫危険水位を超えたが、なんとかもちこたえた。これについてSNS上では、「八ッ場ダムのおかげで氾濫が起きなかった」という噂が飛び交っている。
すでに忘れてしまった人もいるかもしれないが、八ッ場ダムは民主党政権時代に事業仕分けで建設中止が検討されたダムだが、実は完成していたのだ。
10月1日から八ッ場ダムでは試験湛水(しけんたんすい。ダム完成後に貯水して問題がないかをチェックする)に入っていたが、そこへ台風19号が襲った。11日午前2時に標高518.8メートルだった水位はみるみる上昇し、13日午後2時半には約59メートル上昇して577.5メートルになり満水位に達した。
八ッ場ダムは利根川水系の吾妻川の中流部(群馬県吾妻郡長野原町)に建設された多目的ダムで、有効貯水量は約9000万トン。ここで水と土砂をせき止めたから利根川は氾濫しなかったという説だ。
建設事業再開を決めたのは民主党野田政権だが、ツイッターでは「民主党政権のままだったら下流は今頃大洪水か」「民主党に止められなくて良かった」と、旧民主党叩きの材料にされている。
八ッ場ダム礼賛の声を受けて、ダム建設反対派の人々からは、「八ッ場ダムの貯水量など誤差の範囲」といった反論が出ている。
八ッ場ダムの建設反対運動をしてきた「八ッ場あしたの会」は、公式サイト上で「台風19号、利根川における八ッ場ダムの洪水調節効果」と題したリリースを掲載。同会運営委員で元東京都環境科学研究所研究員の嶋津暉之氏による試算を紹介している。
嶋津氏が国土交通省による八ッ場ダムの治水効果の計算結果を用いて試算したところ、もし八ッ場ダムがなかったとしたら、利根川中流部の栗橋地点(埼玉県久喜市)の水位は17センチ高くなったはずだという。同地点の実際の水位はピーク時でも堤防まで2メートルほど余裕があったことから、八ッ場ダムがなかったとしても利根川が氾濫することはなかったと主張している。
同会の主張通り、八ッ場ダムが利根川の氾濫を防いだという説は事実ではないのか。公益財団法人リバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏はこう語る。
「そういう試算(注:水位を17センチ下げただけ)が出ているのは知りませんでした。シミュレーションなので、現実にそうだったかはわかりませんが、仮に17センチが本当だったとしても17センチを舐めてはいけません。
千曲川が決壊した映像を見ると背筋が凍る思いがします。5センチ、10センチでも水が越流すると、堤防外側の土を削り取って一気に川は決壊します。今回の台風19号では八ッ場ダムが氾濫を防いだわけではなかったとしても、次の台風、その次の台風ではこの17センチの差が多くの命を救う可能性はあります」
今回の台風19号は100年に1度といわれているが、地球規模の気候変動と無関係ではないように見える。来年また、これを上回る規模の台風が襲うとも限らない。
昨年の西日本豪雨も大きな被害を生み出したが、ダム一つで洪水を防げるわけはなく、ダム頼みの水害防止には限界があるのも事実だ。河川の流れを維持するための河床(川底)の掘削や堤防の補修などを含め、どうすれば水の災害を防げるかを改めて考え直すときが来ているように思える。
●取材・文/清水典之(フリーライター)

堤防決壊は71河川130か所 耐越水堤防の導入・普及を!

2019年10月20日
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NHKの最新情報によれば、台風19号の豪雨による堤防決壊は下記の通り、71河川130か所にもなっています。
情報が新しくなると、決壊河川の数と決壊箇所が増えています。
各河川の堤防決壊を防ぐ対策として私たちはやはり、耐越水堤防の導入・普及を求めていかなければなりません。
下記の耐越水堤防の工法は、旧建設省土木研究所が「耐越水堤防」の工法を1975年から1984年にかけて研究開発し、旧建設省が9河川で1980年代の後半から耐越水堤防工法を実施したものです。
旧建設省は耐越水堤防の普及を図るため、2000年3月に「河川堤防設計指針(第3稿)」を発行し、関係機関に通知しました。
ところが、国土交通省は2002年7月にこの「河川堤防設計指針(第3稿)」を廃止し、耐越水堤防の普及を中止しました。耐越水堤防工法は国が認めない工法となり、お蔵入りとなりました。
2001年12月から始まった熊本県の川辺川ダム住民討論集会で、耐越水堤防を整備すればダムが不要になると指摘され、耐越水堤防の存在がダム推進の妨げになると考えたからに違いありません。
お金も時間もかかるダムやスーパー堤防に比べ、耐越水堤防は1㍍あたり50~100万円と、比較的安価であるので、短い期間で、全国の河川の安全度を大きく高めることができます。
耐越水堤防の導入・普及を求める運動をあらためて展開していきたいと思います。


台風19号 豪雨災害

(NHK10月20日 5時14分)https://www3.nhk.or.jp/news/special/disaster/typhoon19/

堤防決壊は71河川130か所

国土交通省によりますと、台風19号による豪雨で川の堤防が壊れる「決壊」が発生したのは、19日午前11時の時点で、7つの県の合わせて71河川、130か所にのぼっています。
国が管理する河川で堤防の決壊が確認されたのは、7つの河川の12か所です。県が管理する河川で堤防の決壊が確認されたのは、67の河川の118か所です。
このうち新たに堤防の決壊が確認されたのは、内川の、いずれも宮城県丸森町の羽入前と大目でそれぞれ1か所です。
このほか、川の水が堤防を越える「越水」などで氾濫が発生した河川も、16都県の、延べ266河川にのぼっています。

台風19号 全国で6基のダムで緊急放流 城山ダム緊急放流では事前対策入念も当日ドタバタ

2019年10月20日
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台風19号の豪雨では全国で6基のダムで緊急放流が行われました。緊急放流が行われたダムは次の通りです。、
▽茨城県北茨城市にある大北川の水沼ダム(茨城県)

▽茨城県常陸太田市にある久慈川の竜神ダム(茨城県)

▽栃木県那須塩原市にある那珂川の塩原ダム(栃木県)

▽神奈川県相模原市にある相模川の城山ダム(神奈川県)

▽福島県いわき市にある鮫川の高柴ダム(福島県)

▽長野県伊那市にある天竜川の美和ダム(国交省)

ダムの緊急放流はダム下流の住民にとって脅威です。
ダム下流で、ダムに比較的近いところはダムの洪水調節を前提とした河道になっているので、ダムが調節機能を失って緊急放流を行えば、氾濫の危険性が高まります。。
今回、緊急放流を実施した神奈川県の城山ダムの下流では緊急避難がドタバタの対応になりました。その記事をお送りします。

なお、緊急放流を行うとしていたか、緊急放流を行う可能性があるとしていたダムで、緊急放流を中止したダムは次の通りです(NHKニュースによる)。

栃木県   大谷川の中禅寺ダム  栃木県日光市
栃木県   那珂川の西荒川ダム  栃木県塩谷町
水資源機構 神流川の下久保ダム  栃木県藤岡市
国交省   鬼怒川の川俣ダム   栃木県日光市
国交省   鬼怒川の川治ダム   栃木県日光市
国交省   荒川の二瀬ダム    埼玉県秩父市

台風19号 城山ダム緊急放流 事前対策入念も当日ドタバタ

(東京新聞2019年10月20日)https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201910/CK2019102002000123.html

(写真)相模原市南区(右側)と厚木市の間を流れる相模川。城山ダムの緊急放流で決壊が心配された=17日、相模原市南区で(本社ヘリ「あさづる」から)

台風19号の上陸から十九日で一週間。県内も西部を中心に記録的大雨に見舞われ、城山ダム(相模原市緑区)は一九六五年の運用開始以来、初めて流入する水をためずに流す緊急放流をした。県は事前に慎重に準備を整えてきたが、最後になって実施時間を前倒しして、流域自治体への連絡も放流とほぼ同時刻となるなど、課題を残した。 (志村彰太)
城山ダムは、洪水を防ぐ「治水」と、農業や工業用水をためる「利水」の機能を持つ多目的ダム。大雨の前にあらかじめ放水し、水位を最高水位(標高一二五・五メートル)から一二・五メートル下げる「予備放流」が操作規則で許されている。県は台風の接近前、水位計の誤差を考慮し水位をさらに一メートル低い標高一一二メートルに下げていた。
それでも県は「緊急放流もあり得る」とし、十、十一日、相模原市など流域の自治体に緊急放流の可能性を通知。十二日午後二時半には午後五時の実施を公表した。その後、雨量が想定を下回ったため「放流開始の一時間前に通知する」として延期し、午後八時五十分に「午後十時に実施」を通知した。ところが、流入量が急増して同九時半に前倒し。市町への通知は放流開始とほぼ同時になった。
県河川課の藤崎伸二郎課長は「初めてのことで、水位上昇の想定を当てるのは難しかった」と釈明する。しかし、二転三転した県の姿勢に流域の市町は翻弄(ほんろう)された。最初の告知を受け、防災行政無線や防災メール、消防の巡回などで住民に避難を促していたが、最終的に放流開始と同時に報せが来たため、避難所に誘導せず自宅二階に行くよう促した自治体もあった。
(写真)城山ダムを視察した黒岩知事=相模原市緑区で(県提供)

県と自治体の連携を巡る問題は、もう一つあった。
県は「緊急放流すれば沿岸の洪水は避けられない」との考えから、市町に通知した時点で「考え得る最悪の浸水被害」を示したハザードマップを基に避難指示を出すべきだという立場だった。延期も住民の避難時間を稼ぐためで、「いつ放流してもおかしくない」と考えていた、とする。
しかし、県ホームページにあるダムの水位計や河川の流量計のデータなどを見て避難方針を決めていた座間市や寒川町は、避難勧告にとどめていた。そのデータも機器の故障により、緊急放流が始まった頃、ダムへの流入量が異常に跳ね上がった数値を示したままデータの更新が滞っていた。
緊急放流は開始から約四時間後の十三日午前一時十五分に終了。護岸の一部破損があったものの、浸水被害は出なかった。
しかし、県と流域市町の間で“認識の差”が生じたことは、十六日の県議会常任委員会でも問題視された。
「放流時刻を直前に早め、市町の対応が混乱した」「午後五時から延期したことで『まだ安全』と認識した住民がいた」などの厳しい声が委員から出た。県には市町からも苦情が来ているという。上前行男・県土整備局長は「情報が混乱した点、市町との連携の点は反省として受け止めている。改善に向けて速やかに検討する」と答弁した。

◆コロコロ時間変更 周辺住民振り回され
(写真)城山ダムの緊急放流の情報などを受けて避難所を訪れた人たち=相模原市中央区で

城山ダムが緊急放流するという初の事態に、下流で暮らす多くの住民が避難したが、たび重なる開始時間の変更に振り回された。
平塚市の相模川沿いに住む主婦(40)はスマートフォンで避難指示の緊急メールを見て、十二日午後五時ごろ、家族四人で避難所へ向かった。「緊急放流すると聞いて驚いた。心配だった」と振り返った。
放流が延期になり、家に戻った。「でも、またやるかもしれないというし、どうなるかなと」。再び避難指示が出て、避難所へ。「読み切れないのは仕方ないとも思うけど」と話した。
同じく近くに住む自動車内装業の星野武士さん(40)は午後五時ごろ、市内の兄の家に家族で一緒に移動した。「何せ初めての緊急放流なので、これはやばいなと」
ずっと定点カメラがとらえる相模川の様子をスマホで見ていた。「夜間の放流は怖いので、やるなら明るいうちにと思った」。母の寿子(ひさこ)さんは「かつて床上浸水も経験したことがあるけど、今回はほんとに怖かった」ともらした。 (吉岡潤)

八ツ場ダムは本格運用されていれば、今回の豪雨で緊急放流を行う事態になっていた

2019年10月15日
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関東地方整備局の発表によれば、今回の豪雨で、八ッ場ダムに貯留した洪水は7500万㎥です。
(関東地方整備局「令和元年台風19号における八ッ場ダムの試験湛水状況について」http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_s_00000334.html )
八ッ場ダムの洪水調節容量は6500万㎥ですから、1000万㎥も上回っていました。
試験湛水の初期段階であったので、1000万㎥オーバーの貯留が可能でした。
八ツ場ダムの貯水池容量の配分は下図の通りで、下の方から計画堆砂容量1750万㎥、洪水期利水容量2500万㎥、洪水調節容量6500万㎥で、総貯水容量は10750万㎥です。貯水池の運用で使う有効貯水容量は、堆砂容量より上の部分で、9000万㎥です。
今回の豪雨では関東地方整備局の発表によれば、貯水位が54m上昇し、573.2mになったということです。
豪雨前の貯水位573.2mー54m=約519mは下記の貯水池容量配分図をみると、計画堆砂容量の上端(最低水位)536.3mより17mも低いレベルです。
すなわち、今回の豪雨では、本格運用では使用しない計画堆砂容量のかなりの部分を使い、さらに、利水のために貯水しておかなければならない洪水期利水容量2500万㎥も使ったから、7500万㎥の洪水貯留が可能であったのです。

本格運用で使える洪水貯水容量の上限は6500万㎥ですから、今回の豪雨で八ツ場ダムが本格運用されていれば、満杯になり、緊急放流(流入水をそののまま放流)をしなければならない事態になっていました。

そして、利根川の場合は7月1日~10月5日が洪水期で、八ッ場ダムは10月6日から水位を上げて、洪水調節容量の空きを減らしていく時期ですから、10月中旬の台風時には洪水を調節できる容量が6500万㎥よりもっと小さくなっています。
雨の降り方によりますが、10月に入って雨が降り続いて、貯水位がかなり上昇した後に今回のような台風がくれば、八ッ場ダムが緊急放流を行う時間はかなり早まることになります。
国交省による八ツ場ダムの貯水池運用の計算例(2004年)を示します。この例では10月中頃には貯水量が5500万㎥になっており、満水の9000万㎥までの空き容量は3500万㎥に減っています。
このような状態で今回のような豪雨が来れば、八ツ場ダムは短時間で緊急放流する事態になり、ダムの治水機能はゼロになっていました。

以上のように、今回の豪雨は、八ツ場ダムが治水面で役立たないことを示す例になりました。

 

八ツ場ダム

利根川における八ッ場ダムの治水効果について 現時点のコメント(2019年10月14日 13時)

2019年10月14日
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今回の台風19号により、試験湛水中の八ッ場ダムの貯水量が一挙に増えました。八ッ場ダムの貯水量が急増したことに関して、
「台風19号では利根川中流の堤防が決壊寸前になった。決壊による大惨事を防いだのは八ッ場ダムの洪水調節効果があったからだ。八ッ場ダムの反対運動を進めてきたことを反省せよ」という趣旨のメールが送られてきました。
利根川中流部の水位は確かにかなり上昇したけれども、決壊寸前という危機的な状況ではありませんでした。
このことに関して現時点でわかることを下記の通り、整理しましたので、その結果を掲載します。

現時点のコメント(2019年10月14日 13時)

現時点では、公表されている洪水のデータが限られていますので、言えることは限られていますが、国交省の水文水質データベースのデータを使って検討してみました。
下記の図1は利根川の群馬県伊勢崎市八斗島(やったじま)地点、図2は埼玉県久喜市栗橋地点における今回の洪水の水位変化です。八斗島地点は利根川の中流部の最上流側、栗橋地点は中流部の最下流に近い場所です。
今回の洪水で利根川の水位が計画高水位に近づきましたが、利根川本川は堤防の余裕高が2mあって、計画堤防高にはまだ十分な余裕がありました。
したがって、今回の台風では、八ッ場ダムの洪水貯留がなく、水位が多少上がったとしても、利根川が氾濫することは考えられませんでした。
また、国交省による八ッ場ダムの治水効果の計算結果は図3のとおりです。この図が示すように、八ッ場ダムの治水効果は下流に行くほど減衰していきますので、今回の八ッ場ダムの洪水貯留がなくても、利根川の中流下流の水位がそれほど上昇しなかったと考えられます。

このことを数字で検討しました。
図2の栗橋地点のグラフでは、今回の洪水の最高水位は9.67mで、計画高水位9.9mに近い値になっています。栗橋地点の最近8年間の水位流量データから水位流量関係式をつくり(下記の図4参照)、それを使って今回の最高水位から今回の最大流量を推測すると、約11,700㎥/秒となります。
利根川河川整備計画では計画高水位9.9mに対応する河道目標流量は14,000㎥/秒です。すなわち、今回の洪水は、水位は計画高水位に近いが、流量は河道目標流量より約2,300㎥/秒も小さいのです。このことは河床掘削作業が十分に行われず、そのために利根川中流部の河床が上昇して、流下能力が低下してきていることを意味します。
下記の栗橋地点における水位と流量の関係図(図4)を見ると、河川整備計画に沿って河道の維持がされていれば、今回の洪水ピーク水位は70㎝程度下がっていたと推測されます。

一方、八ッ場ダムの治水効果は図3の国交省の計算結果を使うと、栗橋地点に近い江戸川上流端のピーク流量削減率は1/50~1/100洪水では3%前後です。
今回の最大流量の推測値、約11,700㎥/秒を97%で割ると、12,060㎥/秒で、八ッ場ダムの効果がなければ、この程度のピーク流量になっていたことになります。
12,060㎥/秒に対応する栗橋地点の水位を、水位と流量の関係図(図4)から求めると、9.84mになり、実績の9.67mより17㎝高くなりますが、大きな数字ではありません。
八ッ場ダムがなければ、大変なことになったというけれども、国交省の数字を使うと、八ッ場ダムの効果はこの程度のものなのです。

河川整備計画に沿って河道の維持に努めていれば、上記の通り、栗橋地点の水位は70cm程度低下していたのであっで、八ッ場ダムの小さな治水効果を期待するよりもそのことの方がはるかに重要です。

 

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