水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース

ニュース

水源連の最新ニュース

設楽ダム、完成が8年遅れて2034年度へ、事業費が約800億円も増額

2022年5月22日
カテゴリー:

国交省が愛知県の豊川で建設工事を進めている「設楽ダム」が「完成が8年遅れて2034年度になり、事業費が約800億円も増える」ことが発表されました。

この工期延長・事業費増額について各紙と地元紙の記事が掲載します。

今回の国交省の資料(中部地方整備局ダム事業費等監理委員会及び部会(設楽ダム))https://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/damu_kanri/data/220517_bukai_01.pdf を見ると、

工期延長と事業費増額の理由として、「地質調査や詳細設計の結果より、十分な強度を有する基礎岩盤が当初想定より深くなったため、本体掘削量や本体打設量を変更する必要が生じた」などが書かれていますが、

そのような問題が今頃になって出てくることに首を傾げてしまいます。

必要性が希薄で問題積みの設楽ダムは中止すべきダムです。設楽ダムの問題点は「設楽ダムの建設中止を求める会」のHPhttp://www.nodam.org/ に詳しく書かれています。

この設楽ダムの貯水容量の内訳を見ると、下記の通り、洪水調節容量1900万㎥、新規利水容量1300万㎥、流水の正常な機能の維持6000万㎥となっています。

洪水調節や新規利水も必要性が疑わしいものですが、流水の正常な機能の維持は特段の必要性・緊急性がなく、ダムの規模を大きくするための増量剤のようなものです。この容量が6000万㎥もあって、全体の約2/3も占めるのが設楽ダムです。巨額の事業費を投じること自体を目的にした、必要性が希薄な設楽ダムの建設が進められているのです。

 

設楽ダム工期延長で関係者困惑

(東愛知新聞 2022/5/19 0:02) http://www.higashiaichi.co.jp/news/detail/9709

水源地再建や治水への影響危ぐ

設楽町で進めている「設楽ダム」の建設について、国土交通省中部地方整備局が工期延長と事業費の増加方針を示した。豊川(とよがわ)流域で受益者となる東三河の自治体では、水源地の生活再建などに配慮するとともに、早期実現を図る治水対策への影響にも心配を募らせる。一方、建設反対派は膨らむ事業費に警鐘を鳴らす。

中部地整局「ダム事業費等監理委員会」の17日の報告では、工期の8年延長と事業費800億円増の総額3200億円とする方針を示した。地すベリ対策に伴う掘削量の増大のほか、現場の働き方改革や物価高などが背景にある。

報告を受けて設楽町の土屋浩町長は同日夜にコメントを発表

「現場の地理的要因のほか、働き方改革や物価高など社会要因も分かる」と理解を示す一方、「計画申し入れから約50年。移転を決めた水没地域の住民らの苦しみを思うと耐え難い」と胸の内を語った。さらに工期延長で、付替道路や生活道路整備の進み具合、まちづくりや水源地域整備事業などの計画と社会情勢に見合わなくなる点などに不安を募らせる。

豊橋市の浅井由崇市長も国交省の報告内容には理解を示しつつ、水源地の再建や流域の治水事業については、計画通りの実施を望んだ。

その中で「豊川水系流域治水プロジェクトで洪水時の被害軽誠に努めている。特に霞堤(かすみてい)地区は安全対策へいち早く事業を進めてほしい」と求めた。

隣接する新城市の下江洋行市長も報告には理解を示しつつ「引き続き総事業費の圧縮や工期短縮に取り組んでほしい。水源地域の皆さんの生活再建対策は重要」などと配慮した。

東三河広域連合では完成を見通して昨年、ダムサイトの一角に「山村都市交流拠点施設」の整備構想を打ち出した。2 0 2 7年完成へ今年度は基本計画作成を予定し、外部委託事業者の募集を始めたばかり。

連合では「委託契約前なので違約金などは発生しなかった。8年後まで社会情勢の変化を踏まえることも必要」と動向に注視する構えだ。

 

事業費増に警鐘も

一方、「設楽ダムの建設中止を求める会」の前代表で元愛知大学教授の市野和夫さんは「当初事業費2 0 7 0億円から1・5倍超に膨らむ。別の方法で治水対策をした方が安い」と指摘した。

また「現場は地質が悪く不適切な立地。地すベリ対策は、上流部にある深層崩壊の危険箇所に施すもので、膨大な工事になる。うまくいくかも不明。すでに一部工事は始まったことを現地視察で確認した」と述べた。

この時期の発表は「物価高騰でごまかしきれなくなったからでは」と推測。ダムエ事の今後について「渇水対策は十分で治水は下流の堤防工事で済む。今からでもダムはやめるべきだ」と主張した。

 

衆院議員の根本氏コメント

元国土交通政務官で自民党の根本幸典衆院議員(愛知15区)は18日、東愛知新聞の電話取材に応じ、国が示した工期延長や総事業費増額の方針について考えを述べた。

根本氏は「地すぺり対策など技術的要因に、現場での働き方改革や物価高など社会的要因も重なった。これは受け入れざるを得ない」との認識を示した。

地元への生活再建や治水への影響は「生活道路の付け替えなど新たな負担増を下流域の受益者全体で支えるべきだ」とした。7流域の治水については霞堤(かすみてい)のある地区での安全対策を急ぐよう、国への働き掛けを強めたい」との考えを示した。

働き方改革が工期延長に与える影響について「社会や時代の要請で、建設業界の人材確保にも不で欠だ」と理解を求めた。将来的には「事業の長期化傾向となれば、機材リースなどの負担や総事業費の増加につながる。国土強靭化への新たな課題になり得る」と指摘した。

【取材班】

工期延長に伴い基本構想作成も中断される「山村都市交流拠点施設」の建設予定地=設奈町で

 

山村都市交流拠点施設に影響 国交省の設楽ダム工期延長発表/「先を読みにくい」戸惑う関係者/遠のく従来目標 事業スケジュールも見直し

(東日新聞2022/05/20)https://www.tonichi.net/news/index.php?id=94852

設楽町で建設が進む「設楽ダム」の完成に合わせ、東三河広域連合が整備を予定する「山村都市交流拠点施設」は、ダムの工期が2034年度まで8年延長されることになった影響で事業スケジュールの見直しを余儀なくされている。
国土交通省中部地方整備局は17日、豊橋市内で開いた有識者による委員会で、設楽ダム建設現場で掘削量が増えたことへの対応や新たな地すべり対策の必要性、働き方改革に伴う作業時間の減少などを理由に工期延長を明らかにした。当初は26年度の完成を目標に掲げていた。
ダム予定地のすぐ近くでは、同連合が交流拠点施設の整備を計画している。同連合は今年度、施設の規模や具体的な機能、民間活力の導入可能性について検討する基本計画の策定を目指し、プロポーザル方式で業者を募集。すでに選考作業に入っていて来週にもプレゼンテーションを開く予定だった。工期の延長方針を受けて策定業務を中止し、業者におわびしたという。
同連合では、今後の具体的なスケジュールを改めて調整する。これまで通りダムの完成と同時期に施設利用を開始する方向性に変わりはないとしている。
交流拠点施設の整備は、東三河を流れる豊川(とよがわ)の上下流の交流を基本としつつ、域外からの観光誘客につなげる狙いもある。ただ、同連合の担当者は、設楽ダムの完成までに予想される社会情勢の変化も踏まえ「8年は長い。先を読みにくい」と従来目標が遠のいたことへの戸惑いも口にした。

  

設楽ダム工期8年延長 建設費800億円増/国交省が監理委部会で方針説明

(東日新聞2022/05/18)  https://www.tonichi.net/news/index.php?id=94829

(写真)ダム建設現場を視察する委員ら(設楽町で)

(写真)地滑り対策などが行われているダムの上流部(同)

(写真)設楽ダム建設事業部会であいさつする松尾直規委員長(中央)と委員会のメンバー(豊橋商工会議所で)

設楽町の豊川上流部で建設中の設楽ダムについて、国土交通省は17日、想定以上の工事が必要になったとして、工期を2034年度まで8年延長する方針を明らかにした。建設費用も800億円増え、約3200億円に膨らむ見通し。豊橋市内で同日、中部地方整備局ダム事業費等監理委員会の部会を開き、委員らに説明した。
設楽ダムは堤高129メートルの重力式コンクリートダムとなる予定。16年に告示された現行の建設基本計画では、工期は「26年度まで」、建設費用は「約2400億円」とされていた。
国交省が今回示した資料によると、地質調査などの結果、ダム本体を支えられる強い岩盤までは従前の設計より深く掘る必要があることが判明。これにより本体のコンクリート打設量も、約104万立方メートルから約130万立方メートルに増加する。
また、地滑りの恐れにより工事用道路の構造見直しなどが必要となった。本体打設の開始は26年度、水を実際にためる試験湛水の開始は32年度にずれ込むことになる。
建設費用に関しては、これらの事情に加え▽資機材価格や労務費の上昇(約286億円増)▽ダム湖に沈む道路の付け替え工事における設計・施工方法見直し(約288億円増)▽設備賃借・施設維持などの期間延長(約136億円増)―といった増額要因が見込まれる。
設楽ダムの建設目的は、豊川下流の洪水被害軽減、渇水時の流量確保や農業用水などの補給。現在は、本体の基礎となる岩盤を掘り出す工事や道路付け替え工事が行われている。
工期をめぐっては08年に告示された当初の基本計画では「20年度まで」とされていた。しかし、用地買収や道路工事が始まった09年、民主党への政権交代があり、事業はいったん「凍結」。5年後に自公政権が「継続」を決め、現在の基本計画に変更された経緯がある。

 事業効果のできるだけ早い発現図ること大切/設楽ダム建設事業部会で松尾委員長

17日、設楽ダム建設現場の現地視察をした後、中部地整ダム事業費等監理委員会のメンバーらは豊橋市内に移動し、設楽ダム建設事業部会に出席。工期延長と事業費の増額について国交省側から報告を受けた。
報道陣に公開された会議の冒頭、松尾直規委員長(中部大名誉教授)は「ダムは100年先までを見据えた、地域の安全安心と豊かな暮らしを実現するための施設だ」と指摘。その上で「ダム建設事業をいかに進めていくのが適切かを考えることが肝要だ。同時に事業効果のできるだけ早い発現を図ることも大切だ」と述べた。

 

設楽ダム、工期8年延長 事業費も800億円増へ 働き方改革も影響

(朝日新聞2022年5月17日 22時00分) https://digital.asahi.com/articles/ASQ5K6X2SQ5KOBJB005.html?iref=pc_ss_date_article

 

設楽ダム 工期8年延長 完成34年度方針 見直しで800億円増か

(読売新聞2022/05/18 05:00) https://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20220517-OYTNT50223/

設楽町で建設が進められている「設楽ダム」について、国土交通省中部地方整備局は17日、工事の見直しが必要になったとして、工期を8年延長し、完成を2034年度とする方針を明らかにした。これに伴って建設費も従来の2400億円から800億円増の3200億円に膨らむ見通しだ。同局は、費用の一部を負担している県に意見を求めるなど必要な手続きを進め、8月頃には方針を正式決定したいとしている。

設楽ダムは17年に本格的な工事が始まり、26年度の完成を目指して建設が進められていた。

しかし、この日、豊橋市内で開かれた有識者らによる同局の「ダム事業費等監理委員会」で示した計画によると、従来の設計段階では想定できなかった軟弱な地質が確認されるなどし、地すべり対策の見直しが必要となった。また、建設資材の高騰のほか、働き方改革関連法の影響で時間外労働や休日作業の見直しも必要となり、建設スケジュールや建設費を変更した。

工期の延長について、県は「新たな計画を精査し、適正に対応したい」とした。

また、地元の設楽町はダム湖を核とした観光活性化策を検討しており、土屋浩町長は読売新聞の取材に、「工期延長で町の検討内容を見直す必要が出てくるのか、今後の動きを注視したい。見直しが必要ではないものは、予定通りに進めてもらうよう要望したい」と話した。

 

愛知・設楽ダムの完成、さらに8年遅れ 事業費800億円増

(毎日新聞 2022/5/18 中部朝刊 ) https://mainichi.jp/articles/20220518/ddq/041/040/002000c

国土交通省中部地方整備局は17日、建設中の多目的ダム「設楽ダム」(愛知県設楽町)の完成時期が現行計画から8年遅れ、2034年度になる見通しを明らかにした。岩盤掘削量の増加や工事用道路の地滑り対策など新たな工事が必要になったことが主な理由。事業費は約800億円増の約3200億円となる。

同県豊橋市で17日に開いた設楽ダムに関する有識者委員会で報告した。設計段階で想定しなかった地滑りなど追加の安全対策のほか、資材や人件費が高騰したと説明。時間外労働や休日作業の見直しも必要になったとした。

 

設楽ダムの工期を8年延長 地滑り対策など見直し

(中日新聞 2022年5月17日 16時00分)https://www.chunichi.co.jp/article/471801

(写真)設楽ダム建設予定地。後方は設楽町中心部=2013年5月、愛知県設楽町で、本社ヘリ「まなづる」から

国土交通省中部地方整備局は、愛知県設楽町で建設を進めている設楽ダムについて、工事の見直しが必要になったため、工期を二〇三四年まで八年延長する方針を固めた。現計画では二六年の完成を目指していた。十七日午後に豊橋市内で開催するダム建設事業部会で関係者に報告する。

設楽ダムは洪水調整やかんがい用水の補給、水道用水の供給などの目的で、東三河地方を流れる豊川の河口から約七十キロ上流に建設される。二〇一七年に基礎掘削などの本体工事が始まり、建設が本格化した。

ただ、設計段階では想定していなかった地滑り対策や、ダム本体を支えるための地盤強化の工程が必要となった上、付け替え道路の見直しをする必要性などが明らかになった。有識者でつくる中部地整ダム事業費等監理委員会で工事のコスト変動や工期見直しを検討した結果、八年の延長が妥当との結論に達した。

総事業費は約二千四百億円だが、工期延長に伴い、事業費の増加が見込まれる。県はおおむね三割を負担しており、県負担分も増える見通し。中部地整は工期の延長方針を部会で説明した上で、延長に必要な手続きを進める。

 

設楽ダム、工期8年延長 国交省が発表、34年度完成へ

(中日新聞 2022年5月18日 05時05分)https://www.chunichi.co.jp/article/472206?rct=national

(写真)完成時期が現計画から8年遅れる、建設中の設楽ダム。上方は設楽町中心部=17日午後、愛知県設楽町で、本社ヘリ「まなづる」から

愛知県設楽町で二〇二六年度の完成を目指していた設楽ダムで、国土交通省中部地方整備局は十七日、完成が予定より八年遅れ、三四年度になることを明らかにした。有識者でつくる建設事業部会で計画変更を示した。工期延長などにより、総事業費は約二千四百億円から約三千二百億円に増加する。

設楽ダムは治水やかんがい、水道用水が目的で、東三河地方を流れる豊川の河口から約七十キロ上流で建設が進んでいた。当初の計画では、二四年度までに本体工事を終え、試験湛水(たんすい)を経て、二六年度の完成を見込んでいた。

だが国交省によると、想定していなかった地滑り対策に絡む土砂運搬路の工法見直しによって、四年三カ月が追加された。さらに働き方改革による作業員の労働時間の短縮が二一年度から始まったことで、工期の延長は避けられなくなった。近年の資材高も総事業費の増加に影響したという。

設楽町の土屋浩町長は「水没となるため移転した皆さんに思いをはせると、八年間延伸されることは誠に耐えがたい。住民の生活に直結する付け替え道路が同様に遅れることも懸念している」、受益者となる同県豊橋市の浅井由崇市長は「国に対しては、今後とも豊川の治水対策の促進について申し入れを行っていく」とそれぞれコメントを出した。

思川開発(南摩ダム)と一体の栃木県・県南水道事業計画を中止させよう!(現状レポート)

2022年5月8日
カテゴリー:

関東地方では、必要性を失った思川開発(南摩ダム)と、それと一体の栃木県・県南水道用水事業が進められています。

その中止を求める市民運動が展開されています。

現在の状況をまとめたレポートを掲載します。

 

思川開発(南摩ダム)と一体の栃木県・県南水道事業計画を中止させよう!                                

南摩ダム 本体工事本格化 24年度完成へ定礎式 鹿沼

水資源開発機構が栃木県鹿沼市に建設する思川開発事業の本体「南摩ダム」の定礎式が今年3月12日に行われました。

下野新聞3月13日の記事を引用します。

「思川開発事業(南摩ダム)で12日、定礎式が行われた。ダムの本体工事は2020年12月に開始し、掘削などが終了。今後は本体の建設を本格化させ、24年度末の完成を目指す。同事業は、実施に向けて1969年に計画調査がスタート。調査以降、地元では住民による反対運動が続き、約20年前に水没予定地の住民の集団移転が始まった。その後、旧民主党政権下での事業一時凍結などの曲折を経て、2016年に継続が決まった。・・・・・」

図1 南摩ダムと利根川

図2 思川開発事業(南摩ダムと二つの導水路の建設)


必要性が希薄になった思川開発事業

思川開発とは利根川の支流「思川」の支川「南摩川」に南摩ダムを建設し(図1)、同時に支川「黒川」と「大芦川」から南摩ダムまでの取水・導水施設を建設する事業です(図2)。南摩川は流量が少ないので、黒川と大芦川から導水します。現在の総事業費は約1850億円です。

南摩ダムの貯水容量は5100万㎥もあります。

思川開発の目的は洪水調節、渇水時の補給、水道用水の開発ですが、そのうち、渇水時の補給は緊急性がなく、他のダム事業と同様、ダムの規模を大きくするための増量剤のようなものに過ぎません。

洪水調節の目的に関しては、ダムをつくる南摩川は流域面積が非常に小さく(12.4㎢)、小川のような川ですから(図3)、洪水調節の必要性は希薄です。

水道用水の開発に関しては栃木県、鹿沼市、小山市、古河市、五霞町、埼玉県 北千葉広域水道企業団に2.984㎥/秒の水道用水を供給しようというものですが、利根川流域の水道用水の需要は1990年代から減り続けています。

利根川流域は東京都も含めて水道用水の需要が1990年代から確実な減少傾向になっています。6都県(茨城・東京・千葉・埼玉・群馬・栃木)の上水道の一日最大給水量は、1992年度の1418万㎥/日から2018年度の1188万㎥/日へと、この26年間に230万㎥/日も減りました。この減少量は思川開発の開発水量約26万㎥/日の8倍以上にもなります。

節水型機器の普及、節水意識の浸透、漏水漏水防止対策等により、一人当たりの給水量が年々減少してきたことが主たる要因ですが、今後は首都圏の人口も減少傾向になると予想されるので、水道用水の減少傾向は一層進んでいきます。

そのような水道用水減少時代において思川開発の水源開発は無意味な時代錯誤の事業になっています。

以上のように思川開発の目的はいずれも虚構のものになっており、思川開発は、約1850億円という超巨額の公共事業を進めることだけを目的にした事業となっています。

このように無意味な思川開発事業に対して、「思川開発事業を考える流域の会」がつくられ、長年、反対運動が進められてきました。

思川開発の水源を使う水道計画が存在しない栃木県

栃木県が思川開発で確保する予定の水利権は0.403㎥/秒(3.5万㎥/日)で、県南地域(栃木市、下野市、壬生町)に水道水を供給することになっていますが(図4)、その水道計画が存在しません。

思川から取水して各市町上水道の配水池まで配水するためには取水施設、導水施設、浄水施設、送水施設を新たに建設しなければならず、巨額の費用がかかります。

この県南地域水道用水事業に関して2018年度に栃木県が委託した調査の報告書「水道施設広域化調査検討業務委託報告書(㈱日水コン)によれば、3案あって、約258~307億円という巨額の投資が必要となっています。

その一部は国庫補助金が出るとしても、大半はこの水道用水事業の利用者、すなわち、県南地域三市町の住民が負担することになります。

栃木県の県南地域水道用水事業の虚構

栃木県が県南地域水道用水事業を推進する表向きの理由は次のようなものです。

栃木県の「県南地域・水道用地下水の削減方針」 (2013年3月19日)

① 県南地域における地下水依存率は高く、栃木市等の市町は全量を地下水のみに依存しており、地下水の代替水源としての表流水を全く有していない。

② 県南地域においては、地盤沈下や地下水汚染が危惧されており、水道水源を地下水に依存し続けることは望ましくない。

③ 異常気象による渇水リスクが高まる中、県南地域には水道水源として利用できる水資源開発施設がない。

しかし、上記の①、②、③はいずれも根拠が稀薄です。

① 県南三市町水道の水源が地下水100%で何が問題なのか。

熊本市水道は地下水100%を誇りにしています。栃木県内でも真岡市や足利市などは地下水100%です。

② 県南地域は地盤沈下がすでに沈静化しており、地下水汚染は杞憂。

県南地域の地盤沈下は20年前から沈静化しています。県南地域では地下水汚染が進行していません。

③ 異常気象による渇水リスクは地下水こそ少ない。

渇水の影響を受けにくいのがむしろ地下水です。

栃木県は思川開発によって割り当てられた水源を無理矢理使うため、上記のように無意味な理由を作り上げて栃木市、下野市、壬生町にその水源を押し付けようとしています。

県の計画では2030年度には三市町の水道水源の35%を思川開発の水源に変えることになっています(図5)。

このような広域水道は経営を成り立たせるため、通常は責任水量制が導入されます。各市町ごとに広域水道に対する引取り責任水量を決め、その責任水量分の料金は使っても使わなくても市町が支払うという仕組みです。県南水道にこの制度が導入されると、各市町は、県南水道についてはその使用の多寡にかかわらず、一定の料金が徴取されるため、その使用を優先し、自己水源を減らしていく可能性が高いと考えられます。したがって、県の計画通りに進めば、三市町の水道水源の地下水割合は次第に小さくなっていくと予想されます。

三市町の住民にとって大変重要な問題です。県の計画通りに進めば、思川開発の水源の押し付けで、今まで地下水100%の美味しい水道水を享受していたのに、河川水の混入によって不味くなり、さらに県南水道の費用負担で水道料金がかなり高くなることが避けられなくなります。

地下水100%の水道水を守る運動

この計画に対して、三市町では地下水100%の水道水を守る運動が展開されています。「栃木県南地域の地下水をいかす市民ネットワーク」がつくられ、さらに各市町ごとにも「思川開発事業と栃木市の水道水を考える会」、「下野市の水道水を考える市民ネットワーク」、「壬生町の水と環境を守る会」がつくられて、地下水100%の水道水を守るための集会を開き、行政との交渉を続けています。

この「地下水100%の水道水を守る運動」がそれなりの効果を上げ、現段階では県南水道に対する各市町の姿勢に歯止めがかかり、県南水道事業計画は栃木県の思惑通りには進んでいません。

しかし、先行きはまだわかりません。「ダムの水を使わせる」ことが国の方針ですので、三市町への栃木県の働きかけが今後強まっていくことが予想されます。

栃木で進められている「地下水100%の水道水を守る運動」に対して支援の声を届けていただければと思います。

球磨川水系河川整備計画原案への意見書(2020年球磨川洪水に対応できない川辺川ダム、川の環境を壊す川辺川ダムの計画中止を!)2022年5月2日

2022年5月2日
カテゴリー:

球磨川水系河川整備計画原案への意見書を2022年5月2日に提出しました(嶋津暉之)。

意見書は2020年球磨川洪水に対応できない川辺川ダム、川の環境を壊す川辺川ダムの計画中止を!2022年5月2日

のとおりです。

川辺川ダム問題だけでなく、遊水池の整備の問題、市房ダムの問題もありますので、それらについても少しふれました。

長文ですので、目次を下記に示しておきます。

 

            目次

 1 球磨川流域の死者50人の9割は球磨村と人吉市の住民で、支流の氾濫によるものであったから、川辺川ダムがあっても救うことができなかった____2

1-1 球磨村渡地区の水没は小川の氾濫が引き起こした_________2

1-2 人吉の犠牲「原因は支流氾濫」市民団体が調査結果公表______3

 

2 2020年7月洪水は小川や人吉付近の支川流域の時間雨量が非常に大きく、川辺川ダムが必要という治水計画は基本的な誤りがある__________3

 

3 2020年7月豪雨による球磨川大氾濫の最大の要因は球磨川本川と支川の河床掘削があまり実施されてこなかったことにある_____________5

3-1 球磨川は河床高が計画河床高よりかなり高い状態が放置されてきた_5

3-2 川辺川ダム推進のために、球磨川の高い河床高が据え置かれてきた_7

 

4 ダム依存度が異常に高い治水計画(球磨川河川整備計画原案)の危険性_7

 

5 自然に優しくない流水型ダム____________________9

5-1 既設の流水型ダムで明らかになってきた川の自然への多大な影響___9

①生物にとっての連続性の遮断_____________________9

➁ダム貯水域は流入土砂、土石が堆積した荒れ放題の野原へ________9

③ダム下流河川の河床の泥質化、瀬や淵の構造の衰退___________10

➃河川水の濁りが長期化________________________10

 

5-2 とてつもなく巨大なゲート付き流水型ダム「川辺川ダム」の運用は全くの未知数、川辺川・球磨川の自然が大きなダメージを受けるのではないか。_____10

 

5-3 かけがえのない美しい川辺川を失ってよいのか_________12

 

補論1 先祖代々の土地、現在の生活、コミュニティを喪失させる遊水地の整備は安易に進めるべきではない____________________12

 

補論2 市房ダムは再開発ではなく、環境問題と緊急放流問題から考えて撤去を検討すべきである_________________________13

 

 

最上小国川ダムによって濁りが増え、河川環境に変化が!(現地の配布チラシ)

「最上小国川ダムによって濁りが増え、河川環境に変化が!」というチラシを「最上小国川の清流を守る会」の川辺孝幸先生(元山形大学)から送っていただきましたので、掲載します。

チラシ 最上小国川ダムによって濁りが増え、河川環境に変化が!

最上小国川ダムは山形県が建設したダムで、2020年4月から運用を開始しました。

このチラシを読むと、穴あきダムが環境にやさしいというのは全くの嘘で、行政が作り上げた虚構に過ぎないことがよくわかります。

この問題については昨年8月に川辺先生が発表された報告「濁水を増加させる穴あきダムは、環境にやさしくない(最上小国川ダム)」

が水源連HPhttp://suigenren.jp/news/2021/08/26/14932/

に掲載していますので、その報告も合わせてお読みください。

最上小国川ダムについてはhttp://suigenren.jp/damlist/dammap/mogamiogunigawadam/の通り、反対運動の長い経過があります。

2018年1月には『ダムに抗う』という集会が開かれ、ジャーナリストの相川俊英さんが「日本有数の清流で持ち上がったダム建設計画」というタイトルで最上小国川ダム問題についての講演をされています。

その講演要旨(https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2018/01/918cb79ea35273983c39ca412db54ba4.pdf

各都市で進行する水道用水の減少、佐世保市が架空予測を続ける真の理由

2022年4月23日
カテゴリー:

最近、某所で石木ダムが利水治水の両面で必要性が失われているという報告をする機会がありました。(嶋津暉之)

利水の面では下記の佐世保市のグラフを示し、水需要(一日最大給水量)の実績が減少の一途をたどるようになってきているのに、佐世保市が実績とかけ離れた架空予測を行って石木ダムの水源が必要だとしているおかしな実態について報告しました。

この報告について二つの質問がありました。

(1) 水道用水の需要が減ってきているのはなぜか。佐世保市のみに見られる現象なのか。

(2) 佐世保市が水需要の実績とかけ離れた架空の水需要予測をなぜ続けるのか。

それぞれについて下記の通り、説明しました。

 

(1)について(水道用水の近年の給水量の減少傾向は、日本の各地で見られる現象であって一極集中が進む東京都の水道も例外ではない。)

水道用水の需要の減少傾向は近年、日本の各都市で見られる現象です。漏水防止対策の推進、節水機器の普及、節水意識の浸透などによって水道用水の需要が明確な減少傾向を示すようになりました。

日本で一極集中が進む東京都の水道用水も例外ではありません。東京都は今年はコロナ禍により、人口が少し減りましたが、昨年までは人口が増加の一途を辿ってきました。

その東京都について下記の東京都のグラフを示し、近年は確実に水需要が減ってきています。1992年度には600万㎥/日を超えていましたが、その後はどんどん減って2020年度は461万㎥/日まで下がりました。この間の減少率は25%にもなっています。

なお、この東京都は下記のグラフの通り、利根川・荒川水系のダム等の水源開発事業に貪欲に参画してきたため、大量の余剰水源を抱えています。2020年度の八ツ場ダムの完成で東京都は現在、270万㎥/日以上という極めて大きな余剰水源を保有しています。使いもしない大量の余剰水源は何の意味もないのですが、関東地方でもこのように全く無駄な水源開発事業が続けられてきています。

このように水道用水の需要の減少傾向は日本の各地で見られる確実な現象になってきているのですから、その事実を踏まえて予測を行うのが当たり前のことであるにもかかわらず、佐世保市は、実績を無視した架空予測を続けているのです。

 

 

(2)について(ダムができれば、架空予測は用無し(札幌市と神奈川県営水道の例))

佐世保市が水需要の実績を無視した架空予測を続ける理由は、石木ダム事業にあります。

このことに関して二つの実例を示します。

札幌市の例

当別ダム(貯水容量745万㎥)は北海道が建設したダムで、2012年度に完成しました。

札幌市水道がこの当別ダム事業に参画しました。当別ダムが完成するまでは札幌市水道は給水量がどんどん増えるので、下記のグラフの通り、当別ダムの水源が必要だとしていました。

ところが、同グラフの通り、当別ダム完成後の札幌市水道の予測は大きく変わりました。新予測は給水量が漸減していくというもので、2035年度の一日最大給水量は従前の87万㎥/日から62万㎥/日へと、25万㎥/日もの大幅な方修正を行いました。

札幌市水道は当別ダムの完成により、架空予測を続ける理由がなくなったので、臆面もなく、実績重視の予測に切り替えたのです。

神奈川県営水道の例

神奈川県営水道は国土交通省の宮ケ瀬ダム事業に参画しました。宮ケ瀬ダム(貯水容量19300万㎥)は2000年度に完成しました。

宮ケ瀬ダムが完成するまでは神奈川県営水道は下記のグラフの通り、水需要がどんどん伸びるから、宮ケ瀬ダムの水源が必要だとしていました。ところが、宮ケ瀬ダムが完成すると、がらりと変わりました。水需要は今後は減っていく予測になったのです。

宮ケ瀬ダムの水源が必要ということを言う必要性がなくなったので、神奈川県営水道の水需要予測は、同グラフの通り、実績重視の予測に変ったのです。

 

この二つの例を見れば、佐世保市が水需要の実績を無視した架空予測を続ける理由は、石木ダム事業にあることは明白です。

石木ダムの水源が佐世保市に必要であるとするために架空予測を続けているのです。石木ダム事業がなければ、佐世保市もまともな予測に変わるに違いありません。

 

↑ このページの先頭へ戻る