水源連:Japan River Keeper Alliance

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説明不足のまま進む、税金538億円を費やす石木ダム建設。長崎県は一度立ち止まり、公開討論会を開いてください。

2017年11月18日
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石木ダム問題について長崎県に対して公開討論会の開催を求める署名活動が下記のとおり、進められています。皆様も是非、よろしくお願いします。

説明不足のまま進む、税金538億円を費やす石木ダム建設。長崎県は一度立ち止まり、公開討論会を開いてください。

1,892 人が賛同しました。もう少しで 2,500 人に到達します!

●長崎県民が負担する538億円が使われる巨大なダム建設
長崎県・川棚川の下流にある小さな支流、石木川にダムを作る建設計画があります。総工費は538億円です。建設には長崎県民の税金が使われます(※1)。

※1 石木ダムの総事業費は建設費と関連事業費を合わせて538億円。
負担先は、長崎県負担185億円、佐世保市民負担353億円。
うち、国庫補助金(=国民の税金)147.5億円。

●住民の強制退去、そして後戻りができない環境破壊
石木ダムの建設予定地には13世帯54人の住民が今なお生活しています。しかし、石木ダムの建設のために、長崎県は住民を強制的に追い出すことができます。実際に、2015年8月には4世帯の農地が強制収用され、突然、所有権が国に移転されました。またダム建設は、自然の生態系を破壊させることになります。建設が予定されている川棚地区に生息している100種類以上の生物をはじめ、毎年夏になると現れる2000匹もの蛍たちの生息も危ぶまれています。一度失われてしまった自然は二度と戻りません。

【長崎県民2500人を対象とした調査から見えてきた実態】

パタゴニアが2017年5月23日〜31日に「石木ダム建設計画」に関する調査を実施した結果、県民の中で「反対」が「賛成」を上回りました。また県民の約8割が建設計画に対して「説明不足」だと回答しました。

この結果を受け、私たちは、一度立ち止まって専門家の意見に耳を傾け、賛成、反対、中立の立場の人たちが、公開の場で話し合うことの必要性を呼びかけます。

●県民の2人に1人が「よくわからない」巨額ダム建設
長崎県民が538億円という大きな負担を負うにもかかわらず、実は、県民の2人に1人が石木ダムの計画について「よく分からない」と調査で答えています(※2)。また、ダム建設に反対する人の割合が賛成する人を上回るなど、客観的に見て、巨額の公共事業の進め方としては、疑問を呈さざるを得ない状態です。

※2 【石木ダムの建設に賛成ですか、反対ですか】
賛成/どちらかというと賛成 21.9%
反対/どちらかというと反対 27.5%
どちらでもない/分からない 50.6%
(楽天リサーチ/インターネット調査/回答 長崎県民2500人)

詳しい調査結果はこちら https://goo.gl/aKsMiB

●足りていない説明と議論の場
石木ダムの建設計画は40年前からあるため、「石木ダム」という名称自体は有名です。しかし、その必要性や県民の負担についてきちんと理解できている県民は少なく、調査でも、県民の約8割が、県が「十分な説明をしていない」と答えています。(※3) またこれまで、ダム建設予定地の地権者や「石木川まもり隊」など、石木ダムの建設に反対する団体が公の場で県の恣意的な水の需要予測や治水に役立つ根拠の無さなど、その必然性に対する疑問を呈してきていますが、それに対する長崎県の直接的な回答はありません。

※3 【長崎県は、石木ダムの必要性などを十分に説明してきたか】
十分に説明したと思う 20.7%
そうは思わない 79.3%
(楽天リサーチ/同上)

●公の場で、推進と反対と中立の立場の議論を!
専門家をまじえて、ダムを造りたい人と、ダムに反対する人とそれぞれの意見が一度に聞ける公開討論会の開催を長崎県に求めます。

<公開討論会の趣旨 / 概要>
◦石木ダム建設の推進派、反対派、専門会らによる議論を通して、県民に十分な説明をする
◦一方的な説明の場ではなく、議論の場とする、県民の質問等も受け付ける
◦人口3万人以上の市町村と建設予定地で公開討論会を開く (長崎市、佐世保市、島原市、諫早市、大村市、平戸市、対馬市、雲仙市、南島原市、長与町、川棚町)
◦会場は100〜200人程度入れる規模とし、だれでも(メディア含む)無料で参加できることとする
◦専門家らは、推進派と反対派が推薦し、協議の上選定する
◦予定されたすべての討論会の開催が終わるまで、建設工事の着工を一時中止する

石木ダムの建設は、今にも始まろうとしています。つまり、今ならまだ間に合います。長崎のみなさん、一度立ち止まって考えてみませんか。

中村法道 長崎県知事と県議会議員45名に声を届けよう。

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※署名を公開しない方法
赤い「賛同!」ボタンの上下にある「署名およびコメントをキャンペーンページ上で公開」「Facebookの友達とシェア」のチェックボックス「✔」を外すと署名は公開されません。
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賛同者の署名は以下の宛先へ届けられます

  • 長崎県知事
    中村法道 様
  • 宮内雪夫 様(自由民主党)
  • 八江利春 様(自由民主党) 

霞ケ浦導水事業の控訴審が大詰めに 那珂川の漁業被害が焦点

2017年11月15日
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茨城・栃木両県の那珂川関係の8漁業協同組合が霞ケ浦導水事業の差止めを求めた裁判の控訴審が大詰めを迎えています。来年1月には最終弁論が予定されています。
霞ケ浦導水事業とは、利根川と霞ヶ浦を結ぶ利根導水路、霞ヶ浦と那珂川を結ぶ那珂導水路を建設して、利根川、霞ヶ浦、那珂川の間で水を行き来きさせるようにする事業で、現段階の総事業費は約1900億円です。
利根導水路は1994年に完成し、那珂導水路は工事中で、那珂川の漁協が2008年にその工事の差し止めを求めて、水戸地方裁判所に提訴しました。
2015年7月の水戸地裁の判決は原告敗訴でしたので、漁協側は東京高等裁判所に控訴し、去る9月19日には証人尋問が行われました。
霞ケ浦導水事業の問題点と、裁判で訴えたことを簡単に紹介します。
なお、那珂川はアユの漁獲高で日本一になることが多い天然アユのメッカであり、最下流で合流する涸沼川はシジミの三大産地の一つです。

1  霞ケ浦導水事業について

霞ケ浦導水事業の目的は次の三つです。
① 茨城県・千葉県・東京都・埼玉県の都市用水を開発する。
② 渇水時に利根川、那珂川へ補給する。
③ 利根川、那珂川からの導水で霞ケ浦等の水質を改善する。
しかし、都市用水の需要が減少の一途を辿り、水あまりが一層顕著になっていく時代において、①、②の必要性は失われています。
③の霞ケ浦の水質改善も国交省の机上の計算によるものに過ぎず、導水で霞ケ浦の水質が改善されることはなく、導水事業の目的はいずれも虚構です。
 

2  霞ケ浦導水事業による那珂川の漁業被害
導水事業による那珂川の漁業被害は那珂川から霞ヶ浦への導水、霞ヶ浦から那珂川への送水の両方で引き起こされます。

① 那珂川から霞ヶ浦への導水による漁業被害
最大で毎秒15㎥という大量の水が那珂川から取水され、時には那珂川の流量が取水地点より下流は急に2/3に落ち込みますので、那珂川を遊泳している魚類の生息に大きな影響が与えます。特に影響が大きいのは秋から冬にかけて降河するアユの仔魚 (しぎょ) 、仔アユです。
仔魚とは、卵から孵化したばかりの稚魚の前段階の幼生のことです。 仔アユは自力では遊泳することができないので、流れに乗って、餌の豊富な河口城に到達し、そこでようやく餌を食べます。
仔アユが河口域に到達するまでの間は、腹部に蓄えている卵黄を消費しながら生存するのですが、卵黄は4日分しかないので、その期間内に河口域に到達しないと、仔魚は餓死することになります。
したがって、導水事業による那珂川からの毎秒15㎥の取水により、自力では遊泳できない仔アユが取水口から吸い込まれたり、取水口付近で滞留して餓死することが予想されます。

② 霞ヶ浦から那珂川への送水による漁業被害
霞ヶ浦の水はアオコなど、植物プランクトンの異常増殖で水質がひどく悪化しています。そのような汚濁水が清流の那珂川に最大で毎秒11㎥も送られるのですから、那珂川の水生生物、魚介類、漁業に対して大きな影響を与えることは必至です。
最も懸念されるのはカビ臭物質です。那珂川ではほとんどないカビ臭物質が霞ケ浦では植物プランクトンによって高濃度で生産されており、それが那珂川に持ち込まれて、那珂川の魚類、涸沼シジミをカビ臭くさせ、それらが出荷停止の事態になることが予想されます。
霞ケ浦からの送水は那珂川の渇水時に行われることになっていますので、那珂川でのカビ臭物質の濃度もかなり高くなり、魚介類への影響が避けられません。
さらに、霞ヶ浦の有機汚濁物質(BOD)は那珂川のそれの7~8倍にもなりますので、送水による那珂川の汚濁進行で、那珂川の魚類がダメージを受けることも予想されます。

3  9月19日の証人尋問
9月19日の第7回口頭弁論では、原告側証人の尋問が行われました。
証人は嶋津、濱田篤信さん(元・茨城県内水面水産試験場長)、石嶋久男さん(元・栃木県水産試験場指導環境部長)の3人でした。
私(嶋津)は、霞ケ浦から那珂川への送水によって那珂川の水質がどのように変化するのか、それによってどのような漁業被害が起きると予想されるのかを中心にして証言を行いました。
この証言に使ったスライドの主要なものを解説付きでに掲載しました。お読みいただければと思います。
霞ヶ浦導水裁判の証言スライド(嶋津)抜粋
裁判の結果は予断を許しませんが、裁判長は導水事業の漁業被害について耳を傾けているようであり、一審判決のような一方的な判決にはならないことを期待しています、
この差し止め訴訟を闘ってこられた那珂川漁協の君島恭一組合長が9月26日にご逝去されました。享年84歳でした。
この控訴審は君島さんの弔い合戦になりました。
裁判の結果が那珂川の漁協にとってよいものになることを祈るばかりです。

 

 

長崎県、佐世保市、人格権侵害認めず  (石木ダム)   

2017年11月14日
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11月13日、工事差止訴訟第3回口頭弁論報告

長崎地方裁判所佐世保支部401号法廷で14時から石木ダム関連の工事差止訴訟第3回口頭弁論が開かれました。

第3回口頭弁論は事前に被告側が提出していた以下の書類の確認から始まりました。
それらは、前回法廷で原告側が提出した第1準備書面(利水上不要)第2準備書面(治水上不要)、第3準備書面(手続き=覚書違反)、第4準備書面(侵害される権利=人格権)に対する反論です。

以下、簡単に(勝手な)要約を記します。

県準備書面(1)は治水面の必要性を述べています。

 石木ダム治水目的が依拠しているとしている川棚川水系河川整備基本方針と河川整備計画は河川管理者の広範な裁量権にゆだねられているとしています。
計画規模を1/100とした根拠の最大の争点は昭和50年代の川棚川の想定氾濫区域をもとにしていることにありますが、相変わらずそれでいいのだ、と言っています。当時の川棚川は全く手入れがされてなく、川底に土砂がうずたかく堆積していました。そのような手抜き河川の想定氾濫区域は広いのが当たり前です。整備基本方針や整備計画策定時のH17年ごろは一定程度手入れがされた状態になっていました。そのような状況の下でその後の治水計画の基本を策定するのですから、当時最新の想定氾濫区域を対象にするのが当然のことです。
そのほか、従前の主張の繰り返しです。

県準備書面(2)は、覚書についての長崎県の見解です。

「本件覚書本文を見る限り,郷の住民全員ないし郷の住民の多数の同意を得ることが石木ダム建設の条件とされているとは文言上どこにも読み取れない。移転対象世帯67世帯中54世帯は,既に石木ダム建設に同意して既にその所有していた土地・建物を被告長崎県に譲渡していることから,敢えて郷としての同意に言及するとすれば,総体としての同意は得られていると解される。」という趣旨になっています。

県準備書面(3)は、工事を差し止めなければならない理由がない、という趣旨の長崎県の見解です。

13世帯には財産権に対して正当な補償が保証されているから問題ない。現在居住する環境において,現在の生活をそのまま営んでいくという権利であり,これは良好な環境の中で生活を営む権利といういわゆる環境権にあたるものであると解される。そして,環境権については,そのような権利又は利誌が認められていると解すべき実定法上の明確な根拠はなく,また,少なくともその権利が認められるための要件も明らかではない。「無駄なことに税金が使われる」と言っているがそれは工事差止の根拠にはならない。などが趣旨になっています。さらに説明責任については、説明を尽くした、としています。

佐世保市準備書面1は、上記と同様、原告が言う差止には根拠がない、と主張しています。石木ダムの必要性は従前の繰り返し。

さらに、大阪空港事件の上告審判決における『差止請求のばあいの受忍限度は,損害賠償請求のばあいのそれよりも一段と厳格なものであるべきである。」との環裁判官反対意見まで引用しています。そして、事業認定がなされている事実自体,端的に原告らが主張するような違法な人格権侵害など生じていない(受忍限度を超えた違法な侵害など存在しない)ことを強く推認させる、などと言っています。
原告らの主張は畢寛,「居住継続利益が存在する以上,事業の差止が認められる」との理屈に他ならないと思われ,かかる主張は,土地収用法という法体系自体の否定と言わざるを得ない、「仮に収用となった場合においても,正当な補償が行われる」とまで居直っています。
石木ダムへの水源開発については、従前の繰り返しです。

これらの被告側準備書面については、コチラをクリックしてください。

原告側からの必要性以外の反論は1月22日 16時から、必要性に関する反論は事業認定取り消し訴訟の証人尋問を踏まえて行うこととし、2月19日 11時から、と決めました。

報告集会では被告側が提出した準備書面についての説明を意見が交わされました。その最後に、石木ダム建設絶対反対同盟の方が、「工事現場での県職員とのやり取りで「公共事業の在り方」なんかも話し合っている。私たちの本との気持ちが理解されるようになってきていると感じられる。」「石木ダムを中止するには知事の判断しかない」「知事との話し合いができるようになるといい。」「皆さんからのご支援を願いします」と話されました。

長崎県と佐世保市への抗議を!

人格権を全く顧みないあまりにひどい準備書面なので次回・次々回を待つまでもなく、長崎県と佐世保市への抗議をお願いします。。

抗議先は、

長崎県庁

知事 中村法道
〒850-8570 長崎市江戸町2-13
電話 095-824-1111(代表)

長崎県知事へ意見を!→ 
知事への提案

佐世保市

市長 朝長則男
〒857-8585 長崎県佐世保市八幡町1番10号
電話 0956-24-1111 (代表)

佐世保市長へ意見を!→ 市長への手紙

マスコミへの投書

長崎新聞
報道本部「声」係
13字38行以内

                              。

 

淀川水系の天ヶ瀬ダム再開発事業の虚構

2017年11月14日
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淀川水系流域委員会が2005年に淀川水系5ダムの中止を求めました。その後の国交省近畿地方整備局の反動化により、5ダムのうち、余野川ダム(2008年)、丹生ダム(2016年)は中止になったものの、天ヶ瀬ダム再開発、川上ダム、大戸川ダムは推進になりました。
ただし、大戸川ダムは事業を具体化するためには淀川水系河川整備計画の変更が必要です。
川上ダムと天ヶ瀬ダム再開発は工事が進められていますが、川上ダムは既報のとおり、三重県伊賀市で反対運動が続けられています。
また、天ヶ瀬ダム再開発についても反対の活動が行われています。京都府民が京都府を被告として公金支出の差止めを求めて京都地方裁判所に2015年に提訴し、現在、京都地裁で裁判が進行中です。
この訴訟の原告弁護団から今年春に嶋津に技術的な支援の要請がありましたので、10月に意見書を提出しました。
その意見書を掲載しました。
天ヶ瀬ダム再開発問題に関する意見書(嶋津暉之)
意見書の図表(嶋津)

天ヶ瀬ダム再開発の問題点を皆様にも知っていただくため、そのポイントを下記の通り、まとめてみました。

1 天ヶ瀬ダム再開発について

1964年に淀川支流の宇治川に建設された天ヶ瀬ダム(総貯水容量2628万㎥)にトンネル式放流設備を新設して、放流能力を840㎥/秒から1500㎥/秒に増強する事業です。次の三つを目的としています。、
① 治水:宇治川および淀川において洪水を安全に流下させ、琵琶湖に貯留された洪水の速やかな放流(琵琶湖の後期放流)を実現する。
② 水道:京都府水道の水利権を0.3㎥/秒から0.9㎥/秒に増強する。
③ 発電:関西電力(株)の喜撰発電所の発電能力を110,000kW増強する。
この事業も事業費増額と工期延長の計画変更が繰り返されてきており、今年4月の基本計画変更により、完成予定の工期が当初計画の2001年度が2021年度末に延長され、総事業費が当初計画の330億円が約590億円に増額されました。
今回の計画変更の主な理由は想定外の地質(破砕帯が広く出現)に遭遇したことでした。
 

2 琵琶湖後期放流1500㎥/秒の非実現性

天ヶ瀬ダム再開発は上記の三つを目的としていますが、主たる目的は①の琵琶湖後期放流であり、そのために天ヶ瀬ダム再開発事業が計画されました。琵琶湖の出口に瀬田川洗堰があって、大雨が降った時は淀川下流部を守るために、洗堰の全閉操作が行われます。淀川の水位が下がり始めたら、洗堰のゲートを開けて琵琶湖の水を放流することになっています。この放流量は現状では最大840㎥/秒ですが、これを1500㎥/秒に引き上げて、琵琶湖の水位を早く下げるようにするというのが、天ヶ瀬ダム再開発の琵琶湖後期放流という目的です。
〔注〕琵琶湖が流れ出た瀬田川が滋賀県から京都府に入ると、宇治川の名称になります。
しかし、琵琶湖の洗堰からの放流量を1500㎥/秒に引き上げるためには瀬田川と宇治川の流下能力も1500㎥/秒以上にしなければなりません。宇治川は流下能力が最も小さいところは1100㎥/秒しかなく、また、瀬田川は全般的に流下能力が宇治川より小さく、1500㎥/秒を下回っている区間の方が多く、流下能力が最も小さいところは730㎥/秒しかありません。したがって、瀬田川と宇治川の全川において1500㎥/秒の流下能力を確保するためには、きわめて大規模な河床掘削等の工事が必要となり、巨額の費用と長い長い年月を要することは確実です。さらに、河床掘削を行う区間には優れた景観を形成している「鹿跳渓谷」が瀬田川にあり、宇治川にも優れた景観が形成されている「塔の島地区」があり、それらの優れた景観を台無しにする河床掘削について市民の同意を得ることが困難です。
したがって、天ヶ瀬ダムだけ、1500㎥/秒の放流能力を確保しても、琵琶湖後期放流1500㎥/秒は実現性がありません。
そして、2002年3月に完了した琵琶湖総合開発事業により、琵琶湖で湖水位が上昇した時の対策工事が行われており、深刻な浸水被害が発生しないようになっていますので、後期放流1500㎥/秒自体の必要性が失われています。

3  京都府水道が天ヶ瀬ダム再開発に参画する必要性は皆無

治水のためのトンネル式放流設備を天ヶ瀬ダムに新設する再開発事業で、なぜか水道用水が開発され、発電量が増強されることになっており、理解しがたいところがあります。真相は、多目的ダム事業にした方が通りやすいことから、この二つの目的も加えたと考えられます。
この問題はさておき、京都府水道が天ヶ瀬ダム再開発に参画する必要性は全くありません。なお、京都府水道は京都府南部の7市3町に水道の卸供給を行う水道用水供給事業です。
① 京都府水道は天ヶ瀬ダム再開発の0.6㎥/秒をすでに暫定豊水水利権として使っています。この水利使用規則(水利権許可書)に書かれている取水条件は実際には守ることができないことが多い非現実的な条件であって、「ただし書き」の適用によって、取水が制限を受けることがない水利権になっており、実態は安定水利権と何ら変わりません。したがって、それを安定化するために、京都府水道が天ヶ瀬ダム再開発に参画する必要はありません。
② 京都府水道には三つの浄水場があり、宇治、木津、乙訓浄水場から各市町の水道に水道水を供給しています。3浄水場全体では、天ヶ瀬ダム再開発の暫定豊水水利権を除く保有水源が17.4万㎥/日もあります。一方、京都府水道全体の2016年度の一日最大給水量は123,580㎥/日ですから、約5万㎥/日の余裕があり、新たな水源は必要でありません。
③ 京都府水道の給水量も減少傾向になっており、今後は京都府の人口の減少に伴って、給水量がさらに縮小していことは必至であり、その面からも新規の水源は不要です。
そのほかにも、京都府水道が参画する必要がない理由があり、どの角度から見ても、天ヶ瀬ダム再開発は京都府にとって無用の事業です。

以上のように、京都府水道が天ヶ瀬ダム再開発事業に参画して0.6㎥/秒の新規水利権を得る必要性はなく、現状のままで今後とも必要な給水を充たすことが十分に可能です。

また、放流能力を増強する天ヶ瀬ダム再開発の治水目的は机上の話に過ぎず、琵琶湖後期放流1500㎥/秒は実現性もなければ、必要性も疑わしいものです。
今回提出の意見書では、このような天ヶ瀬ダム再開発事業に対して京都府が利水分で約51.9億円、治水分で約63.5億円、合わせて115.4億円という巨額の費用を負担することを根本から見直すことを求めました。

大阪府の安威川ダムは無意味で愚かなダム事業 

2017年11月12日
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去る11月4 日(土)に大阪府茨木市で安威川ダムに焦点を当てたシンポジウム「川は誰のものか。河川法改正20 年。河川行政はかわったか」が開催されました。
安威川ダムは大阪府が茨木市に建設しようとしている治水を主目的とするダムです。
安威川ダムへの公金支出差し止めを求める裁判が2014年から進行しています。
裁判の争点は、①ダムサイトの岩盤がぜい弱でダムの安全性が保証できないのではないか、②治水上の必要性が本当にあるのか、ダムが役に立つのかです。
後者の治水問題に関しては嶋津が原告弁護団への技術的な支援を担ってきており、今回のシンポジウムでもその報告を行いました。

この報告に使ったスライドを

安威川ダムは役に立つのか に掲載しましたので、ご覧いただければと思います。
安威川ダムは大阪の市街地に建設される特異なダムで、総貯水容量が1800万㎥もあり、補助ダムとしてはかなり大きいダムです。
他のダムと同様に、工期の延長と事業費の増額が繰り返されてきていて、工期は当初の2008年度完成が2023年度まで延期され、事業費は当初の836億円から1536億円へと、約2倍になりました。
安威川ダムの治水問題で最も重要な問題は、100年に1回の降雨による洪水への対応で安威川ダムが必要とされているものの、実際には1/100の降雨があると、安威川ダムがあっても、安威川・神崎川流域の大半のところが氾濫してしまうことです。
(安威川は下流の神崎川につながっていて、一連の川ですので、安威川・神崎川と呼ぶことにします。)
安威川ダム下流の安威川・神崎川流域の大半は低地部であって、内水氾濫域です。
内水氾濫域は降った雨がはけ切れずに溢れる地域で、川からの越水による氾濫ではないので、安威川ダムで川の水位を下げても氾濫を防ぐことができません。そのことは裁判で被告の大阪府も認めました。
内水氾濫域については河川整備計画では1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっていますので、1/100の雨が降れば、安威川ダムがあっても確実に氾濫します。
また、安威川・神崎川の支川の多くは、1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっており、整備が完了しても1/100の雨が降れば、やはり氾濫します。
したがって、安威川ダムが完成しても、1/100の雨が降れば、安威川・神崎川流域の大半のところで氾濫することになります。
1/100の雨に対応するために、安威川ダムが必要とされていながら、実際には安威川ダムができても、下図のとおり、流域の大半で氾濫することになります。
1536億円という巨額の公費を使ってダムを建設しても、目的とする1/100の降雨への対応ができないのですから、何のためにダムをつくるのか、わかりません。

さらに、治水に関しては次のような問題もあります。

〇 ダム推進のために、来る可能性がほとんどない、極めて過大な 洪水目標流量1,850㎥/秒(相川基準点)が机上の計算で設定されており、実際の1/100流量は河道整備で対応できる1,250㎥/秒を下回る可能性が高い。
〇 耐越水堤防工法を導入すれば、安威川・神崎川の流下能力が飛躍的に大きくなり、大洪水への対応が可能となるだけでなく、仮にそれを超える洪水が来ても、壊滅的な被害を防ぐことができるようになる。しかし、有効な治水対策である耐越水堤防工法がダム事業の推進のために表舞台から消されている。
〇 安威川・神崎川流域の実際の水害被害額(水害統計)の166倍という被害額の架空計算から安威川ダムの費用便益比が求められ、それが安威川ダム推進の根拠となっている。
〇 大阪府は治水効果が乏しい安威川ダムの建設ばかりに力を入れ、流域住民の安全を守るために必要な河川管理を疎かにし、河床堆積土砂の撤去に取り組んでいない。
このように無意味で愚かなダム事業は中止されなければなりません。安威川ダムの建設を中止させ、流域住民の安全を真に守ることができる治水対策の実施と河川管理を大阪府に求めていくことが必要です。
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