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流域治水を全国展開/粘り強い堤防など明記/気候変動踏まえた国土交通省水害対策小委員会

2020年5月30日
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5月26日に国土交通省の社会資本整備審議会河川分科会「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」(第4回)のWEB会議が開催されました。
この委員会の記事を掲載します。
その配布資料が国土交通省のHPに下記の通り、掲載されました。
その中で、【参考資料1】気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会 とりまとめ概要 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kikouhendou_suigai/4/pdf/sankou01_toushin_an_gaiyou.pdf
を見ると、滋賀県の流水治水推進条例に近い考え方が書かれています。そして、
【さらなる堤防強化】 ・越流・越波した場合であっても決壊しにくい「粘り強い堤防」を目指 した堤防の強化を実施・更なる堤防の強化に向け、継続的 な技術開発
という記述もありますので、私たちが求めてきた治水対策(滋賀県の流水治水推進条例、耐越水堤防工法の導入)を国土交通省が取り入れていくように思われます。
まだ抽象的なところがありますが、期待したいと思います。

流域治水を全国展開/粘り強い堤防など明記/気候変動踏まえた水害対策小委
[建設通信新聞 2020-05-27 1面 ]  https://www.kensetsunews.com/archives/455667

国土交通省の社会資本整備審議会河川分科会は26日、「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」(委員長=小池俊雄土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)の第4回会合をウェブ開催し、夏にまとめる答申の骨子案を議論した。今後求められる水災害対策の方向性として、降雨量の増加などを考慮した治水計画への見直しと、流域全体のあらゆる関係者が協働して治水対策に取り組む流域治水の全国展開を盛り込む。
降雨量の増加などを考慮した治水計画への見直しに必要な取り組みには、河川整備基本方針の基本高水、河川整備計画の目標流量、海岸保全基本方針、施設設計基準などの変更を挙げた。
流域治水は、国、都道府県、市町村、企業、住民など流域の関係者が▽氾濫を防ぐための対策(ハザードへの対応)▽被害対象を減少させるための対策(暴露への対応)▽被害の軽減、早期復旧・復興のための対策(脆弱性への対応)--の3要素を多層的に進めるもの。集水域、河川区域、氾濫域を1つの流域と捉え、流域全体の関係者が一体となって取り組むべきとの考えを示した。
流域治水の具体策には、粘り強い堤防を目指した堤防強化、利水ダムを含む既存ダムの洪水調節機能強化、地域と連携した土地利用の誘導・規制、土地の水災害リスク情報の充実、住まい方の工夫などを列挙。
事前防災対策の加速化も求め、2019年の台風19号で被災した7水系の緊急治水対策プロジェクトを参考に、全国の1級水系で緊急に実施すべき流域治水の取り組みをまとめ、早期に実行すべきと指摘。流域治水の実施に向けては、行政、企業、国民一人ひとりが意識、行動、仕組みに防災・減災を考慮することが当たり前の社会を構築する必要があるとしている。
速やかに実施すべき施策には、計画・設計基準の見直し、事前防災対策の加速、堤防の強化、さまざまな関係者の参画、土地リスク情報の充実、まちづくり・住まい方の工夫、避難態勢の強
化、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の強化を挙げている。


国土交通省 社会資本整備審議会河川分科会 「気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会」(第4回)をWEB会議で開催

日 時:令和2年5月26日(火)15:00~17:00
第4回 気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会 配付資料 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kikouhendou_suigai/4/index.html
• 議事次第(PDF形式:72KB)
• 委員名簿(PDF形式:95KB)
• 資料目次(PDF形式:79KB)
• 【資料1】前回までの小委員会における主なご意見(PDF形式:257KB)
• 【資料2】議論の全体像と今後の方向性(PDF形式:1,339KB)
• 【資料3】被害軽減・回復力向上を中心としたソフト対策について(PDF形式:11,034KB)
• 【資料4】新技術の開発・導入の枠組みについて(PDF形式:2,194KB)
• 【資料5】鈴木委員提出資料(PDF形式:1,614KB)
• 【資料6】気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会答申骨子(案)(PDF形式:589KB)
• 【参考資料1】気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会 とりまとめ概要(PDF形式:1,341KB)
• 【参考資料2】令和2年出水期に向けた大規氾濫減災対策協議会の取組について(PDF形式:883KB)

社説:浸水度マップ 滋賀モデルの発信もっと

2020年5月26日
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滋賀県が「地先の安全度マップ」を5年ぶりに更新しました。このことを取り上げた京都新聞の社説を掲載します。
(滋賀県「地先の安全度マップ」の更新について 2020年3月31日 https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/310801.html)
通常のハザードマップとの大きな違いは、河川ごとではなく、関係河川の氾濫が網羅され、内水はん濫も考慮されていることです。
この「地先の安全度マップ」に基づいて滋賀県が流域治水の推進に関する条例 https://www.pref.shiga.lg.jp/site/jourei/reiki_int/reiki_honbun/k001RG00000883.html
により、浸水警戒区域に指定したところは立地規制、建築規制が行われています。この条例は嘉田由紀子・前知事が策定したもので、治水に関して画期的な条例です。
氾濫の危険があるところに住まない、住むならばそれなりの手当てをすることを基本とする条例です。
住宅を嵩上げするための補助制度も設けられています。(流域治水に係る支援概要 説明資料 https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1020723.pdf)
ただし、浸水警戒区域に指定されたのはまだ2地域だけです。(浸水警戒区域 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/kasenkoan/19549.html
流域治水政策室の職員は頑張っているのでしょうが、知事が嘉田氏から三日月氏になって、県の体制としての取り組みが不十分ではないかということを危惧します。


社説:浸水度マップ 滋賀モデルの発信もっと

(京都新聞2020/5/25(月) 16:00配信 https://news.yahoo.co.jp/articles/8cb589564e79ff5a2c137112135b9385e0fe9fe2

大雨時に浸水の可能性がある地域を示した滋賀県の「地先の安全度マップ」が、5年ぶりに更新された。2014年の作製後初の見直しで、近年の河川改修や宅地造成の状況を反映させた。
「地先」とは自宅の周りを指す。県ホームページ掲載のマップは住宅一軒一軒が分かるまで拡大表示でき、三つの想定(10年、100年、200年に1度の大雨)ごとの浸水リスクを確認できる。現実の被害は大きな河川のそばだけでなく、中小河川や水路の周辺、低い土地で起こることが少なくないが、それも計算に入れたマップを公表しているのが滋賀県の特色だ。
関東、東北など広範囲が被災した昨年の台風19号では、想定外の中小河川の氾濫が相次いだ。事前のリスク周知が不足していたために、想定どおりに浸水した地域で多くの命が失われたケースもあった。
今年も梅雨が近づく。自分のまちのハザードマップをいま一度確認しておきたい。自宅だけでなく、職場や学校、避難所までのルートの浸水可能性もチェックしたい。
気候変動の影響で雨の降り方が極端化していると、たびたび指摘される。15年の水防法改正で浸水想定のもとになる降雨量の基準が変更されたが、それをハザードマップに反映した全国の市区町村は19年3月末時点で約3割にとどまる。
浸水想定区域内では、意外にも人口が増加している。1995年からの20年間で、滋賀県で12・3%、京都府で1・4%、全国では4・4%増加した。調査した山梨大の秦康範准教授によれば、地価が手ごろで中心市街地より開発しやすいため、人口減少時代に入った今も宅地化が進んでいるという。
リスクに応じた地盤のかさ上げや、建物の工夫がきちんとなされている所もある。問題は、そうした対策も情報もないまま転入する人を、現状では防げないことだ。
宅地建物取引業法は、業者に住宅購入者への水害リスク情報の提供を義務づけていない。治水対策として建築・立地規制をする仕組みもほとんどない。
滋賀県は条例で、ハザードマップなどの内容を説明する努力義務を業者に課している数少ない自治体だ。浸水警戒が特に必要な区域については住民合意の上で建築規制をかけ、近くに避難場所がなく、土地のかさ上げもない場合は住宅の新改築を原則許可しないと定めている。
県には、こうした滋賀モデルともいえる取り組みをもっと内外に発信し、人々の防災減災の関心や議論を喚起してもらいたい。命を守ることに着実につながるからだ。
計画凍結中の大戸川ダム(大津市)の建設促進に転じるなどハード事業への回帰がみられる滋賀県だが、仮に着工が決まったところで、時間も費用もかかる工事が完了するまで自然災害は待ってくれない。より安く早くできる治水施設の調査研究や高リスク地区外への人口誘導、家屋耐水化の助成拡充など、居住地の安全性を高める取り組みが欠かせない。

【サクラエビショック、その後】アユもいなくなった中流域、濁る「母なる川」 異変はなぜ

2020年5月24日
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国内で唯一、静岡県で専門の漁が行われている「駿河湾産サクラエビ」が2018年、未曾有の不漁に直面しました。静岡新聞がその原因を追う記事を書き続けてきました。
その経過をまとめた同紙の記事を掲載します。

【サクラエビショック、その後】アユもいなくなった中流域、濁る「母なる川」 異変はなぜ
(静岡新聞2020/5/24(日) 10:04配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200524-00010000-at_s-l22&p=1

2018年春、かつてない不漁に陥った「駿河湾産サクラエビ」。国内では駿河湾でしか専門の漁が行われていない静岡県の名物だが、近年は台湾産の台頭にも悩まされ、廃業を選ばざるを得なかった地元加工業者もいる。不漁との関係がささやかれるのが、主な産卵場の湾奥に注ぎ込む陸域からの強い濁水だ。自然由来もある一方、企業活動由来の濁りも問題視される。流域では市民運動など住民がサクラエビ不漁をきっかけに海と川、森、人間の関係を問い直す動きにも広がっている。

■もともと濁りやすい川
「あはんとは思ひわたれど富士川の終(つい)に澄まずは影も見えじを」―
三十六歌仙の一人として知られる凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)は、平安時代に駿河の国の歌枕とされた富士川の濁りに掛け、「会おうと思っているのだけれど、富士川が澄まないので影も見えない」と嘆いてみせた。当時からすでに「澄むことはない川」とのイメージは定着していたようだ。
サクラエビ研究の元祖とされる生物学者中沢毅一(1883~1940年)も「駿河湾産櫻蝦(さくらえび)の研究」の中ですでに「富士川の水が特殊の濁りをなす」と述べ、サクラエビの成長にとって富士川が「母なる川」であることを力説している。
富士川流域には、本州を横断する大断層「糸魚川-静岡構造線」があるため従来地質はもろいとされ、濁りの原因の一つになっているとされる。

(写真)ほとんどが土砂で埋まる日軽金雨畑ダム=山梨県早川町

■2011年から続く“異変”
ただ、近年の陸域からの濁りはかつてと異なる、との指摘がサクラエビやシラス漁師から出ている。注目が集まるのは、大手アルミメ-カ-日本軽金属蒲原製造所(静岡市清水区)の工場放水路から主産卵場の湾奥に注ぐ濁水。アルミ製錬(14年3月に撤退)のため国策企業として誕生した同社は、ほとんどが土砂で埋まる雨畑ダム(山梨県早川町)も管理する。
水の濁度調査グラフ
ダム上流の水害を受け、国から行政指導を受けた同社は4月下旬、国に5年間で700万立方メートル(東京ドーム5杯分)を搬出する計画を提出した。
このダム下流から延びる導水管は途中複数の同社自家用水力発電所を経て放水路につながる。静岡県によれば、11年度から急激に濁りが強くなり、その後回復が遅れているという。

(写真)近年濁りが強いまま駿河湾に注ぐ日軽金蒲原製造所放水路の発電用水
同県桜えび漁業組合幹部は「台風で川から茶色に濁った水が駿河湾に注がれると、エビが取れると言われてきた。現在の灰色の濁りは海洋環境にとって良い影響はないのでは」と話す。
(写真)富士川水系で長年続いていた凝集剤入り汚泥の大量不法投棄の瞬間

■いまも原因は不明
11年は台風15号が同県などに大きな被害をもたらした年だ。濁水について「ダム上流の山体崩壊も原因では」との指摘がある。
ただ、昨年、日軽金が一部出資する採石業者ニッケイ工業が雨畑ダムすぐ下流の雨畑川で、産業廃棄物の汚泥(ヘドロ)を長年大量に不法投棄していたことが発覚。同社は中部横断道工事で使われたコンクリくずも違法に受け入れ、8割に当たる約4700トンが下流に流出、回収不能となっていることが判明した。山梨県は一時刑事告発も検討した。

(写真)静岡・山梨両県が行った富士川水系濁り合同調査結果の会見(2020年2月、静岡県庁
昨年5~7月の静岡・山梨両県合同による濁りの実態調査を受け、ことし2月に両県が行った会見では、最近の濁りの発生源は雨畑ダムのある早川水系(山梨県早川町)にあることで一致したものの、特定には至らなかった。
日軽金の杉山和義常務は昨年暮れ「(サクラエビ不漁との関係は)正直分からない」とし、由比港漁協(静岡市清水区)が濁りが海の生態系に及ぼす影響を調べるよう求めたことに「必要があれば協力する」と述べるにとどめた。

■マイクロプラと同じ
「放水路の濁りは明らかに『水産用水基準』を上回っている」との指摘がある。基準は日本水産資源保護協会が定める水産資源保護のため維持が望ましい水質基準で、法的基準ではないが、浮遊物質量(SS)の場合「人為的に加えられる懸濁物質は1リットル当たり2ミリグラム以下」とする。
静岡県が19年1~2月に実施した調査では、放水路内のSSは1リットル当たり11・7~427ミリグラム。
濁りの研究で16年日仏海洋学会賞を受賞した東京海洋大の荒川久幸教授(57)=海洋光環境学=によれば、粘土鉱物粒子を使ったアサリの受精卵の実験で1リットル当たり約200ミリグラムの粒子が混ざるとふ化率は20%以下に低下した。幼生の成長阻害も引き起こした。
荒川教授は「受精卵はガス交換を阻害され、幼生は餌と一緒に粒子を取り込みエネルギーにできなかったのでは。濁りの問題は海洋マイクロプラスチック問題と通底する」と指摘する。荒川教授ら研究者10人は手弁当でサクラエビの不漁問題のための研究会を静岡市で結成している。

富士川水系の濁り問題を巡る現状イメージ

■立ち上がる市民
一般住民も立ち上がる動きが出ている。
かつて「尺アユの川」とされた富士川中流ではアユがほとんど見られなくなった。静岡・山梨両県の住民約50人は今春市民団体「富士川ネット」を発足させ、環境を知る指標生物ともなる底生生物(水生昆虫類)の種類や量の調査に着手したが雨畑川では少ない印象という。

富士川ネットは、ニッケイ工業が本来産廃の汚泥に3種類の凝集剤を混ぜ河川内に投棄していたことを特に問題視。ダンプで運搬しやすくするためだったとみられ、すぐ上流の雨畑ダムの出水のたびに下流に流されていたことが明らかになっていることから、「石と石の隙間に汚泥由来の粘着性の微粒子が固着し、出水の度に濁りの原因になっている」と指摘する。
代表幹事の青木茂さん(65)=山梨県富士川町=は「サクラエビが訴えた富士川水系の濁り問題はこの流域全体で考えていかなくてはならない問題。山梨と静岡の両県民が手を携えたい」と述べた。

◆連載「サクラエビショック、その後」
この記事は静岡新聞とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。国内で唯一、静岡県で専門の漁が行われている「駿河湾産サクラエビ」が2018年、未曾有の不漁に直面しました。消滅の危機にあえぐ地場の名産品がわたしたちに問いかけるものとは。不漁が表面化してから2年が過ぎた今を、地元から伝えます。

雨畑ダム堆砂対策基本計画書を提出/日本軽金属

2020年5月22日
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静岡新聞が駿河湾産サクラエビの不漁の原因の一つとして、産卵場に注ぐ富士川水系の日本軽金属・雨畑ダムの堆砂問題を追及してきました。
この日本軽金属が雨畑ダム堆砂対策基本計画書を国に提出したという記事を掲載します。
なお、計画書の提出は5月7日で、日本軽金属㈱のホームページに下記の通り、計画書が掲載されています。
国土交通省の開示資料によれば、雨畑ダムは全貯水容量が1365万㎥で、2017年度末の堆砂量が1244万㎥ですから、今回で計画されている300万-400万m3の撤去は全堆砂量の24~32%でしかありません。

雨畑ダム堆砂対策基本計画書を提出/日本軽金属
[建設通信新聞 2020-05-22 5面 ] https://www.kensetsunews.com/archives/454040

日本軽金属は、雨畑ダム堆砂対策基本計画書を関東地方整備局甲府河川国道事務所長に提出したと発表した。
同社が保有する雨畑ダムの貯水池上流で浸水被害が発生していることから、早期に浸水・土石流被害を解消するとともに、将来的に雨畑ダム貯水池の機能を確実に発揮することを目指す。
基本計画では、短期計画、中期計画、長期計画の3段階に分けて実施すべき内容を位置づけた。
2020-21年度末を期間とする短期計画では浸水・土石流被害の解消(常時満水位以上の堆積土砂の除去)や浸水・土石流被害を及ぼすと考えられる既堆積土砂の移動・搬出(推定300万m3相当)を目標に▽仮設堤防の建設▽河道の確保▽県道保護盛土工、仮設道路工などに湖内一時活用--などの応急対策や、▽ダム下流部への搬出ベルトコンベヤーの能力増強▽土砂の活用▽継続的堆砂対策の検討--など抜本的対策などを実施する。
その後、22-24年度末の中期計画は「過去最大規模の土砂流入へ備えた容量確保として堆積土砂300万-400万m3を撤去」、25年度以降の長期計画は「安全な堆砂状態の維持」を目標とする。

2020年5月7日 日本軽金属株式会社
雨畑ダム堆砂対策基本計画書 提出について  https://www.nikkeikinholdings.co.jp/news/news/p2020050702.html

日本軽金属株式会社(本社:東京都港区、社長:岡本 一郎)は4月30日に雨畑ダム堆砂対策基本計画書を国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所長に提出しましたので、お知らせします。
弊社が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)について、2019年8月9日付で国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所より、雨畑ダムの定期検査結果に関する行政指導を受けました。また、2019 年8月の台風10 号・同年10月の台風19 号などによる豪雨の影響を受け雨畑ダム上流の雨畑川の水位が上昇したことにより周辺地域で浸水被害が発生しました。
弊社は2019年9月に国土交通省、山梨県、早川町とともに雨畑地区土砂対策検討会(以下、検討会)を設立し、周辺地域における浸水被害発生に対する応急対策、及び堆積土砂の抜本対策について検討を重ねてまいりました結果、雨畑地区の堆砂対策の内容について、国土交通省、山梨県、早川町に同意をいただきました。これを踏まえ、取り纏めました雨畑ダム堆砂対策基本計画書を提出いたしました。
弊社は、地域の安全確保を最優先とし、雨畑ダム堆砂対策基本計画書に基づき、関係する皆様のご協力もいただきながら、計画を着実に実行してまいります。

添付資料 雨畑ダム堆砂対策基本計画書 (PDF) https://www.nikkeikinholdings.co.jp/news/news/common/pdf/p202005070202.pdf

八ッ場ダム運用開始 利水も治水も必要性なくなった危険な水がめ

2020年5月13日
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ジャーナリストの岡田幹治さん(元・朝日新聞論説委員)が週刊金曜日4月10日号に書かれた八ツ場ダム問題の論考がネットで配信されましので、掲載します。

八ッ場ダム運用開始 利水も治水も必要性なくなった危険な水がめ
岡田幹治
(週刊金曜日オンライン2020年5月12日7:49PM)http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2020/05/12/antena-709/

(写真)貯水が進む八ッ場ダム。撮影した4月4日は貯水率35%だった。(提供/八ッ場あしたの会)
民主党政権時代に「中止」か「計画通り建設」か、で揉めた八ッ場ダム(群馬県長野原町)が完成し、4月1日に運用を始めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で完成式典などは延期され、ひっそりとした船出だった。
利根川水系の吾妻川に建設されたこのダムの主な目的は、首都圏への水道用水の供給(利水)と洪水防止(治水)の二つだ。だが「いずれも必要性は失われている」と嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表は言う。
利水について国土交通省関東地方整備局は3月10日「八ッ場ダム始動!?東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、水資源確保のため、貯留を開始!」と発表。夏の渇水期にはこのダムの水が必要であるかのように装った。
だが東京都の水需要(一日最大配水量)は節水機器の普及などにより1992年度の617万立方メートルからほぼ一貫して減少。昨年度は460万立方メートルだった。一方で都は694万立方メートルの水源を持ち(実績を踏まえた評価量)、200万立方メートル以上余裕がある。八ッ場ダムがなくとも十分まかなえるのだ。
今後、人口減少で水需要はさらに減り、水余りがもっと顕著になると予想される。
もう一つの治水について赤羽一嘉国土交通相は昨年10月の台風19号豪雨後、現地を視察し「八ッ場ダムが利根川の大変危機的な状態を救ってくれた」と語ったが、これは事態を正確に伝えていない。
関東地方整備局は昨年11月公表の「台風19号における利根川の上流ダムの治水効果(速報)」で、利根川の上流と中流の境目にある観測地点(群馬県伊勢崎市八斗島)で、八ッ場ダムを含む7基のダム群はダム群がない場合に比べ水位を約1メートル下げたと推定されると発表した。
しかし同局は7ダム個別の治水効果は検証していないとしており、八ッ場ダムの効果は不明だ。
発表は中下流域での治水効果には触れていないが、利根川中流の観測地点(埼玉県久喜市栗橋)における当時の流量をみると、最高水位が9・67メートルに達し(基準面からの高さ)、一時は氾濫危険水位の8・9メートルを超えたことがわかる。
ただ、堤防はこの地点では氾濫危険水位より約3メートル高く造られており、八ッ場ダムがなくても氾濫の危険性はなかった。
洪水防止に有効なのは、ダム建設ではなく、堤防の強化や河床の浚渫といった河道整備なのだ。

【緊急放流、地滑りの危険性も】
台風19号豪雨は八ッ場ダムの危険性も明らかにした。
八ッ場ダムはこのとき7500万立方メートルを貯水したが、これは本来の貯水能力を1000万立方メートルも上回る貯水量だった。同ダムの利用可能な容量は利水用が2500万立方メートル、治水用が6500万立方メートルだが、当時は試験貯水中で、利水用に大量の空きがあり、治水用容量を大きく超える貯水ができ、流入する雨水とほぼ同量の水をダムから放流する「緊急放流」を避けることができた。
だが、本格運用が始まり利水用の貯水が満杯に近い状態の時、台風19号級の大雨が降れば、緊急放流を実施せざるを得なくなる可能性が強い。ダムのすぐ下流は急に増水し、大変なことになるだろう。
運用開始後に危惧されるのは、緊急放流の危険性だけではない。たとえば、吾妻川が運んでくる土砂がダム湖の上流端に貯まって河床が上昇し、付近の長野原町中心部で氾濫がおきる可能性がある。また、ダム湖の水位は季節によって変動を繰り返すが、それが周辺の地層に影響を与えて地滑りを発生させる危険性も指摘されている。周辺には地質が脆弱なところが少なくないだけに心配だ。
構想浮上から68年、約6500億円という日本のダムでは最大の事業費をつぎ込み、地元住民の生活の犠牲という代償を払って八ッ場ダムは完成した。そびえ立つ巨大なコンクリートの塊は、ダム優先の河川行政のシンボルのように見える。
(岡田幹治・ジャーナリスト、2020年4月10日号)

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