水源連:Japan River Keeper Alliance

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国土審議会の「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」の答申

2017年5月12日
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5月12日、国土交通省の国土審議会が国土交通大臣宛に、「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」の答申を出しました。

http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000087.html をご覧ください。
「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」(答申)
~需要主導型の水資源開発からリスク管理型の水の安定供給へ~
この答申は八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、設楽ダム、川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発などといった、現在進められているダム等事業を利水面で位置づけることを企図したものです。
水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において利根川、豊川、木曽川、淀川、筑後川水系等の水需給計画である水資源開発基本計画(フルプラン)はその役割が終わっているのですから、
国土交通省は根拠法である水資源開発促進法とともに、フルプランを廃止し、
新規のダム等事業は利水面の必要性がなくなったことを明言すべきです。
しかし、国土交通省は上記のダム等事業を何としても進めるべく、(水需要の面では必要性を言えなくなったので)「リスク管理型の水の安定供給」が必要だという屁理屈をつけて、上記のダム等事業を位置づけるフルプランを策定するため、今回の答申をつくりました。
この答申に沿ってこれからフルプランの変更が行われることになっています。
この答申の関係資料が
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000074.html に掲載されています。
この答申案に対して2月22日から3月7日までパブリックコメントが行われました。
提出された意見がhttp://www.mlit.go.jp/common/001184469.pdf に掲載されています。
答申案に対して厳しい意見が多く出されていますので、ご覧ください。

石木ダム事業認定執行停止申立、却下!?

2017年4月9日
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3月30日、長崎地方裁判所が県側の主張を認め、申立を却下

この申立は、「事業認定の効力は,基本事件の本案判決が確定するまでこれを停止する。」の決定を求める申立でした。

事業認定執行停止申立は、事業認定がなされればそれに地権者が従わない限り行政代執行に至ることが確実であることを踏まえ、これに続く収用委員会による収用裁決・明渡裁決にストップをかけ、住居取壊し等の行政代執行を未然に食止めるための申立でした。
事業認定取消し訴訟係争中に無駄な石木ダム事業によって13世帯の皆さんが個々の生活と地域社会が破壊されることを未然に防ぐことを目的に据えた法的手段です。

この申立を裁判所は2017年3月30日に、「却下」しました。
極めて不当なことです。

この申立において長崎県がこんな反論(下に引用)をしていると決定書に記載されています。さらに裁判所は、石木ダムの必要性に何ら言及することなく、長崎県のこの反論を全面的に採用して却下を決定しています。

「損害の重大性について」
申立人らは,川原地区の地元住民が,川原地区で,人と人とのつながりの中で,土地の自然と恵みを享受しながら生活をし,その生活を続ける権利ないし価値を損害として主張する。しかし,土地収用法により土地を収用され,そこでの生活を営むことができなくなる不利益を直ちに人格権の侵害による損害であるというのは,土地収用法自体を否定するに等しく,上記の不利益は私有財産である土地を失うという財産的損害と評価されるにとどまる。そして,そのような損害は同法の規定に従い填補されることとなり,社会通念上,金銭賠償によって填補され得る性質のものである。」

この申立で、わたしは、
①これが長崎県の基本的姿勢であること、②まったく不要な石木ダム事業遂行のために土地収用法を適用していること自体が13世帯皆さんの人格権侵害であること、③それを回避するには土地収用法適用を取止めるしかないこと。
が明らかにされたと思います。

それ故、
「まったく不要な石木ダム事業遂行のために土地収用法を適用していること自体が13世帯皆さんの人格権侵害である。長崎県と佐世保市は土地収用法適用を撤回して人格権侵害を直ちに止めよ!」というキャンペーンにつなげることができれば、と思います。

執行停止申立事件決定書( 申立人目録削除)

マスコミ報道

長崎新聞

米カリフォルニア州のダム決壊危機、洪水対策に約500億円拠出要請

2017年3月10日
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今年2月12日に米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に穴が開き、決壊の危険があるとして、付近住民20万人近くが緊急避難する事態になりました。

この「オロヴィル・ダム」の問題についてその後の記事を掲載します。当時の記事も掲載します。

ダム放水路 宇宙からもわかる崩壊の凄まじさ「復旧の見通し立たず」米国

(ハザードラボ2017年03月06日)http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19315.html

(写真)米国最大のオロヴィル・ダム。緊急排水路に残る放水の爪痕(DWR)

米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に穴が開き、決壊の危険があるとして、付近住民が緊急避難する事態に発展したニュースは、当ハザードラボでも先月お知らせしたばかり。

カリフォルニア州の水資源局(DWR)は今月4日(現地時間)、緊急排水路の現状を公開し、復旧作業には相当の時間がかかることを明らかにした。ダムの異変は、400キロ上空の国際宇宙ステーションからもハッキリ確認できるという。

カリフォルニア州北部にある「オロヴィル・ダム」では、今年1月から降り続いた雪や雨の影響で、ダム湖に流れ込む三本の川の水量が急激に増え、決壊寸前の危険水位に達した。そこで、水資源局は先月11日、緊急排水路からの放水を決断。

ところがダムが完成した1968年から半世紀近くの間、一度も使われることがなかった排水路に巨大な穴が開いていることが判明したことから事態は一転、排水路そのものが崩壊する危険性が高まった。

州政府は一時期、ダム周辺に暮らす住民20万人近くに避難勧告を発令したが、結果として排水路は決壊の危険を回避。

しかし水圧による爪痕は凄まじく、放水路の下半分のコンクリートがえぐられて、土砂やがれきを押し流し、周辺の景色を一変させた。現地ではすでに1週間近く撤去作業が続いているが、復旧の見通しは全く立っていない。

(写真)放水路の下半分のコンクリートがえぐられ、あふれ出した水流の勢いで周辺の土砂ががれきとともに押し流されている(DWR)

(写真)地上400キロ上空を周回している国際宇宙ステーションから見た「オロヴィル・ダム」(NASA Earth Observatory)

米カリフォルニア州のダム決壊危機、洪水対策に約500億円拠出要請
ダム洪水対策に約500億円要請 米
(AFPBB News 2017年2月25日 13時59分 )http://news.livedoor.com/article/detail/12721240/

(写真)米カリフォルニア州のオロビルダムから放出された水があふれた放水路(2017年2月14日撮影)。

【AFP=時事】米カリフォルニア(California)州にある米国一高いダムの一部が崩れかけ、大規模な避難命令が出されたことを受け、同州のジェリー・ブラウン(Jerry Brown)知事は24日、洪水対策と緊急事態対応に4億3700万ドル(約490億円)を拠出する計画を明らかにした。

カリフォルニア州北部にあるオロビルダム(Oroville Dam)では今月、水かさが増し氾濫したため当局が緊急放水路を開放したところ、放水路があっという間に壊れ始め、下流地域の住民が大惨事に巻き込まれる恐れが生じ、20万人近い人々が自宅からの避難を余儀なくされた。

ブラウン知事は州議会に対し、水インフラ用の財源から3億8700万ドル(約440億円)、さらに州の一般財源から5000万ドル(約56億円)を拠出する予算措置の承認を要請。「老朽化したインフラが限界にきている。何らかの緊急措置を講じることはできるし、そうする予定だが、計画を進めるには巨額の費用を投じなければならない」と述べた。

避難命令は発令から2日後に解除されたが、当局は、何年も干ばつが続いた後で豪雨に見舞われた地域の住民に対して、再び避難する必要が生じるかもしれないと注意を促している。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領はブラウン知事の要請を受け、ダムに連邦政府の補助金を拠出することを承認した。
【翻訳編集】AFPBB News

ダム放水路が決壊の危機!約20万人に避難勧告 カリフォルニア

(ハザードラボ2017年02月14日 11時22分)http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19053.html

(写真)米国最大のダムの放水路に決壊の危機(撮影:Florence Low / California Department of Water Resources)

カリフォルニア州北部にある米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に巨大な穴が開いているのが見つかり、このままでは決壊するおそれがあるとして、今月12日、周辺住民20万人近くに避難勧告が出された。

カリフォルニア州の水資源局(DWR)によると、穴が見つかったのは今月7日。穴の浸食は次第に進み、最終的に水路の横幅いっぱいまで広がった。

しかし、1月から降り続いた雪や雨で、ダム湖に流れ込む三本の川の水量が急激に増え、ダムの水位が危険水位に達したことから、水資源局は2月11日、ダムが完成した1968年以来初めて、緊急排水路の使用を決断。

毎秒10万立方メートルの水が猛烈な勢いで排出されることで排水路そのものが決壊するおそれがあるとして、カリフォルニア州知事は、ユバ郡、サッター郡など周辺住民19万人余りに避難勧告を発令。

13日の発表では、今もなお毎秒10万立方メートルの放水が続いているが、ダム湖の水位はかなり下がっていて、水資源局では、浸食した穴を塞ぐ準備を進めているという。

米国防総省は13日、「ダムの水位は下がっているとはいえ、今週末に再び雨が降る予報が出ている。米軍は24時間体制で住民の避難支援にあたる準備を進めている」と発表した。

(写真)1968年に完成したオロヴィル・ダムの緊急放水路に浸食した穴(California Department of Water Resources)

(写真)周辺の3つの郡に住む13万人に避難勧告が出された(California Department of Water Resources)

国土交通省の「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」 答申(案)に対する意見〈2017年3月7日)

2017年3月7日
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国土交通省が全国7水系の水資源開発基本計画(フルプラン)のあり方に関する答申案に対して意見募集を行っています。

 意見を提出しましたので、参考までに掲載します。
国土交通省の意見募集は http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000083.html をご覧ください。
リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について 答申(案)に対する意見(嶋津暉之)

1 答申案は、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿ってきていて、将来はますます縮小していく事実を無視している。

下図のとおり、全国の水道用水および工業用水の需要は減少の一途を辿っている。全国の水道の一日最大給水量は1994年度から2014年度までの20年間に一日当たり約1,100万㎥も減っている。一人一日最大給水量を400リットル/日と仮定すると、20年間で約2,700万人分の水道給水量が減ったことになる。今後は人口減少時代になることにより、水道用水の規模縮小に拍車がかかることは必至である。工業用水も減り方が凄まじい。1975年と比べると、2014年の使用量は2/3の規模になっている。下図で示した水道・工業用水の減少傾向は、利根川・荒川水系などの各指定水系でも同様である。

2 水道用水および工業用水の規模縮小で水余りがますます顕著になっていく時代において新たな水資源開発事業は不要であるから、答申案は現在計画中および建設中の水資源開発事業の中止を求めるべきである。

上述のとおり、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿り、将来はますます縮小していくのであるから、新たな水資源開発事業が不要であることは明白である。それにもかかわらず、各水系で不要な水資源開発事業が推進されている。利根川・荒川水系では八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、豊川水系では設楽ダム、木曽川水系では木曽川水系連絡導水路、淀川水系では川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発、筑後川水系では小石原川ダムなどの事業である。いずれも水需要縮小の時代において無用の事業であるから、答申案はこれらの新規水資源開発事業の中止を求めるべきである。

 

3 水需要が減少の一途を辿り、水余りが一層進行していく時代においてフルプラン(水資源開発基本計画)の役割は終わっているのであるから、根拠法である水資源開発促進法とともに、各指定水系のフルプランを廃止すべきである。

各指定水系のフルプランは水資源開発促進法の目的に書かれているように、「産業の開発又は発展及び都市人口の増加に伴い用水を必要とする地域に対する水の供給を確保するため」に策定されるものであり、水道用水・工業用水の需要が減少傾向に転じた時点で、その役割を終わっている。答申案は、フルプランの延命策を講じるのではなく、役割が終わった各指定水系のフルプランとその根拠法である水資源開発促進法の廃止を求めるべきである。

 

4 「リスク管理型の水の安定供給に向けた」という言葉で、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策をはかってはならない。

今回の答申案は「地震等の大規模災害、水インフラの老朽化に伴う大規模な事故、危機的な渇水等の危機時において最低限必要な水を確保するためには、・・・効果的な施策の展開を検討するよう留意する必要がある」と述べているが、これは、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策に他ならない。

第5次利根川・荒川水系フルプラン〈2008年策定〉などの現在のフルプランも無理矢理、延命策が講じられたものである。フルプランは当初から水需要の実績と乖離した過大予測によって水資源開発事業の必要性を打ち出すものであったが、1990年代から水道用水・工業用水が減少傾向に転じたため、過大予測を行うにも限度が生じてきた。そこで、国は水資源開発事業を推進するための新たな理由をつくり出した。それはより厳しい渇水年(1/10渇水年)になると、ダム等の供給可能量が大幅に減るので、それに対応するためにも水資源開発が必要だというものである。

現行のダム等の開発水量は、利水安全度1/5で計画されているので、それより厳しい渇水が来ても対応できるように、利水安全度1/10での水需給を考える必要があるというものである。1/10渇水年においてダム等の供給可能量が大幅に減るという国の計算結果は、ダム放流を過剰に行う恣意的な計算によるものであって、1/10渇水年の話も虚構のものなのであるが、このようにしてフルプランの延命策が講じられてきた。

今回の答申案「リスク管理型の水の安定供給に向けた」は、役割が終わった各指定水系のフルプランをさらに延命させることを企図したものであり、答申案の内容を根本から見直すべきである。

 

5 目標年度を過ぎ、期限切れになっている各水系のフルプランを上位計画として国が水資源開発事業を推進している異様な事態を答申案はなぜ問題にしないのか。

利根川及び荒川、豊川、木曽川、淀川、筑後川のフルプランは目標年度が2015年度、吉野川水系は2010年度で、いずれも目標年度を過ぎており、期限切れになっている。この期限切れのフルプランを上位計画として、八ッ場ダム等の新規水源開発事業が推進されているのは異常である。法律に基づいて計画を策定し、その計画に沿って事業を進めるのが行政の責務であるにもかかわらず、計画を期限切れのままにし、計画の裏付けなしで国が八ッ場ダム等の事業を推進しているのは由々しき問題である。国が法律を軽視した行為を公然と行うのは法治国家としてあるまじきことであるので、答申案はそのことを問題視すべきである。

 

6 川の自然を取り戻すため、ダム撤去や河口堰のゲート開放などを視野に入れた答申案にすべきである。

過去のダムや河口堰といった水資源開発事業によって各河川の自然は大きなダメージを受けてきている。アメリカでは川の自然を取り戻すため、ダム撤去が数多く行われてきている。日本も水需要の縮小で、水余りが一層進行していく時代になっているのであるから、既設のダムや河口堰などの水資源開発施設がどこまで必要なのかを徹底検証して、必要性が稀薄な施設は撤去または運用の改善を進めるべきである。答申案はそのように川の自然を取り戻すことも目指すべきである。

常総はいま 鬼怒川決壊1年(連載記事) (東京新聞茨城版 2016年9月13~15日)

2016年9月19日
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昨年9月の台風18号では鬼怒川下流部で堤防が決壊し、常総市を中心に凄まじい被害を受けました。鬼怒川水害は深い傷跡を残しています。被災地の現状をとらえた東京新聞茨城版の連載記事(上)(中)(下)を紹介します。

総はいま 鬼怒川決壊1年(上) 「みなし仮設」適用残り1年

(東京新聞茨城版 2016年9月13日)

(写真)水海道地区の幹線道路沿いに広がる、レストランや住宅が解体されたままの空き地=常総市で

「みんな戻ってきてほしいからね。空き地のままでは寂しい」。鬼怒川の決壊現場で十世帯の住宅が流されたり傾いたりして、広い更地になったままの常総市三坂町の上三坂地区。八月下旬の夕方、雑草が生い茂らないよう、区長の秋森二郎さん(69)が一人で除草剤をまいていた。

 自宅を失い、市内のみなし仮設住宅で暮らす前区長の渡辺操さん(71)が、車で立ち寄った。ねぎらうように秋森さんに缶コーヒーを差し出した後、嘆いた。「とにかく二年じゃあ、どうにもならないよな」

 全壊の十世帯は、いずれも市内や近隣市内で、公営住宅や民間住宅を借り上げた「みなし仮設」で生活する。制度上、適用期間は原則二年で来年秋までだ。

 「先祖代々ここに住み、墓もある。みんな、やっぱり戻りたい。期限までに自宅を完成させるなら、来年五月ごろに着工したいが、みんな、それまでに着工できるかどうか。六十歳を過ぎたらローンも組めない」と渡辺さんは心配する。

 市によると、避難生活を続ける市民は九月八日現在、七十八世帯の百九十六人。市幹部も「一年後も住宅のめどが立たない人は多いだろう。数世帯なら市営住宅でいいが、何十世帯も、どこに入居してもらえばいいのか」と懸念する。

 渡辺さんは、みなし仮設の期間延長を行政に求めようと考えている。

     ◇

 市によると、人口は八月末現在、一年前より八百三十四人減った。うち日本人は千六十八人減少した。

 外国人は、逆に二百三十四人増えた。支援団体によると、自宅アパートの浸水で市外へ転出した人も多いが、人材派遣会社から次々と別の外国人が派遣されてくるという。

 浸水被害が大きかった地区には今も、建物を解体したままの更地が点在する。アパートの多い地区は、人口減少が目立つ。

 常総市森下町の自治会加入者は、五百一世帯から三十世帯減った。区長の男性は「加入していないアパート住まいの世帯も多い。市の広報紙を配ると、大量に余る。減ったのは百世帯ぐらいだろう」。

 被災者を支援するNPO法人「コモンズ」の横田能洋(よしひろ)代表(49)は、市外の親族の家に移ったお年寄りの女性をよく覚えている。

 女性はコモンズの活動拠点の近くで一人暮らしをしていて、自宅が床上浸水した。大勢のボランティアが片付けてくれた。しかし、敷地が借地だったこともあり、自宅の修理をあきらめ、住み慣れた土地を去ったという。

 コモンズは現在、空き家を生かし、高齢者ら向けの「見守り付き共同住宅」を計画中。横田さんは「つくば市のアパートに入れたからいいとは思わない。自宅は無理でも、せめて近くに安心して住める環境をつくりたい」と考えている。

 昨年九月の常総水害から一年がたった。被災地の今を探った。 (宮本隆康)

  ■

常総水害 昨年9月の関東・東北水害で、常総市内で鬼怒川の堤防が決壊したり、水が堤防を越えたりしたため、市域の約3分の1に当たる約40平方キロメートルが浸水。約10日間にわたり広範囲で水に漬かったままになった。4000人以上が救助され、市内で2人が死亡、44人が負傷。住宅5023棟が全半壊した。


常総はいま 鬼怒川決壊1年(中) 人口減や買い控え続く 

(東京新聞茨城版 2016年9月14日)

 写真)シャッターを閉めた店舗が目立つ中、「がんばろう常総」ののぼりが掲げられた商店街=常総市で

「当面の間、夜の営業は金、土、日曜のみにします」。常総市森下町のそば店の入り口に、張り紙がある。「店を開けても、平日の夜は全然お客さんが来ないから」と、店主の名取勝洋さん(63)が語る。

 店は一年前、胸の高さまで浸水した。名取さんは「一カ月で営業再開」を目標にした。床や壁などを交換し、知人に片付けを手伝ってもらい、自分で壁の塗装もした。目標通り、十月十日に再開できた。

 「十一月に一週間、試しに夜、営業したが、全然駄目だった」と振り返る。町内はアパートが多く、水害で百世帯が引っ越したとも言われる。日中は県外からも客が来てにぎわうが、地元住民が主になる夜は、以前の客足は戻っていない。

 商工業を担当する市職員は「多くの市民が何百万円もかけ、自宅を直したり車を買い替えたりした。買い控えが広がり、小売店や飲食店は売り上げが落ちている。人口が流出した地区は特に厳しい」と指摘する。「私だって車二台が水没した。妻に『飲みに行っている場合ですか』と言われれば、返す言葉がない」

     ◇

  市商工会によると、二〇一五年度に退会した会員企業は八十七社。このうち約四十社は、水害が原因の廃業とみられる。

 経営指導員は「経営者が高齢で後継者がいなければ、水没した機械などを買い替えても、費用を回収できない。大多数は、家族経営の小規模な零細企業。水害で廃業が十~十五年ほど早まった」と説明する。

 水害から一年たったが、今になって「やっぱり廃業する」と断念する企業もあるという。再開した企業も、市内の得意先も苦しかったりして、売り上げが戻らない場合が多い。

 「一時期よりは落ち着いたが、まだまだ企業は苦しんでいる」という。

     ◇

  常総市本石下にある老舗酒造会社「野村醸造」の酒蔵の居住部分は、今も床を外したままだ。直せないのではなく、古民家レストランとして改修を計画中。「創造的復興を目指している」と野村一夫社長(62)は話す。

  酒蔵は水害で浸水し、酒造りに欠かせない「こうじ室(むろ)」にも水が入った。県内の酒造会社の従業員やボランティアら延べ約五百人が、泥かきをして片付けを手伝った。昨年十一月に新酒を仕込み、年末の出荷にこぎ着けた。

 「三十年以上、この仕事を続けているが、去年、しぼりたての新酒ができた瞬間は格別だった」

  築九十三年の酒蔵を壊すことも考えたが、居住部分を飲食スペースに変えることを思い立った。地場産の野菜や肉を使った料理を出す店として、来年春の開店を目指す。

 「ライバルだったはずの蔵元や、大勢のボランティアに助けてもらった。取引先のスーパーも出荷再開を待ってくれた。恩返しと感謝の気持ちを込めて、復興する」。野村さんはこう言い切った。
(宮本隆康)

常総はいま 鬼怒川決壊1年(下) 離農相次ぎ、進む農地集約

(東京新聞茨城版 2016年9月15日)

 (写真)水害から1年後も変わらず稲刈りをする農家=常総市で

 黄金色に染まった水田地帯で、稲穂が揺れ、コンバインが進む。一年前、がれきや土砂が流れ込んだ常総市の水田に、例年と変わらぬ光景が戻ってきた。常総市川崎町の農業生産法人「ひかりファーム常総」の事務所は、今まで以上に忙しい稲刈りシーズンを迎えている。

  ひかりファームは、JA常総ひかりの子会社。高齢化した農家などから耕作を請け負っていて、水害以降は依頼が急増した。

  「水没した農業機械を買い替えられず、高齢化で後継者もいない農家が目立つ」と担当者。十五戸から計十三ヘクタールの依頼があり、耕作面積は約四十五ヘクタールから一気に約六十ヘクタールに増えた。

 市によると、「農地中間管理機構(農地バンク)」を通じて耕作を依頼した農家は今年二月以降、二十五戸。前年の十一戸から倍以上増えた。面積も前年の計十二ヘクタールから、計二十五ヘクタールと二倍になった。

 農家が離農する場合、農地バンクやJAよりも、知人の農家に直接、耕作を頼むケースが多いという。水害で離農した農家は、もっと多いとみられている。

     ◇

 県のまとめや市の推計では、鬼怒川東側で約千五百ヘクタールの農地が水害で浸水した。農機具の被害額は、四百六戸で計約二十八億円に上った。

 当初から小規模な兼業農家の離農は予想された。さらに大規模な専業農家も被害が大きければ、離農者の農地の受け入れ先がなくなる。耕作放棄地の大量発生が懸念されていた。

 農地百十二ヘクタールで復旧工事が実施され、田植えシーズンに何とか整備が間に合った。農業機械の買い替えや修理にかかった費用の六割は補助された。本年度の鬼怒川東側の米の作付面積は、千七百三十ヘクタールになり、例年並みを維持できた。

 市の担当者は「農地の耕作依頼が進んだし、離農も予想より出なかった。赤字だけど農業機械を買い替えた、という年金暮らしの兼業農家さえいた」と胸をなで下ろした。

     ◇

 「『もうダメかな』と最初は思った」。常総市三坂新田町の専業農家、瀧本進さん(70)は水害直後を振り返る。

 瀧本さんによると、水没して使えなくなったコンバインだけで、被害額は約千六百万円。さらにトラクター二台、田植え機、もみすり機、乾燥機三台、トラックも水没。被害総額は五千万円以上だった。

 公的補助のほか、保険金も受け取れると分かり、農業を続けることを決めた。「かなり借金もしたが、ある程度、返せる見通しが立った」という。

 所有する農地のほか、周囲の農家からも耕作を依頼され、約三十ヘクタールを耕作している。「請け負った以上、やらなきゃいけないし、自分がやめれば相手も困る。まだやめられない。自分の農地は守る」と笑った。 (宮本隆康)

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