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八ッ場ダム運用開始 利水も治水も必要性なくなった危険な水がめ

2020年5月13日
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ジャーナリストの岡田幹治さん(元・朝日新聞論説委員)が週刊金曜日4月10日号に書かれた八ツ場ダム問題の論考がネットで配信されましので、掲載します。

八ッ場ダム運用開始 利水も治水も必要性なくなった危険な水がめ
岡田幹治
(週刊金曜日オンライン2020年5月12日7:49PM)http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2020/05/12/antena-709/

(写真)貯水が進む八ッ場ダム。撮影した4月4日は貯水率35%だった。(提供/八ッ場あしたの会)
民主党政権時代に「中止」か「計画通り建設」か、で揉めた八ッ場ダム(群馬県長野原町)が完成し、4月1日に運用を始めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で完成式典などは延期され、ひっそりとした船出だった。
利根川水系の吾妻川に建設されたこのダムの主な目的は、首都圏への水道用水の供給(利水)と洪水防止(治水)の二つだ。だが「いずれも必要性は失われている」と嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表は言う。
利水について国土交通省関東地方整備局は3月10日「八ッ場ダム始動!?東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、水資源確保のため、貯留を開始!」と発表。夏の渇水期にはこのダムの水が必要であるかのように装った。
だが東京都の水需要(一日最大配水量)は節水機器の普及などにより1992年度の617万立方メートルからほぼ一貫して減少。昨年度は460万立方メートルだった。一方で都は694万立方メートルの水源を持ち(実績を踏まえた評価量)、200万立方メートル以上余裕がある。八ッ場ダムがなくとも十分まかなえるのだ。
今後、人口減少で水需要はさらに減り、水余りがもっと顕著になると予想される。
もう一つの治水について赤羽一嘉国土交通相は昨年10月の台風19号豪雨後、現地を視察し「八ッ場ダムが利根川の大変危機的な状態を救ってくれた」と語ったが、これは事態を正確に伝えていない。
関東地方整備局は昨年11月公表の「台風19号における利根川の上流ダムの治水効果(速報)」で、利根川の上流と中流の境目にある観測地点(群馬県伊勢崎市八斗島)で、八ッ場ダムを含む7基のダム群はダム群がない場合に比べ水位を約1メートル下げたと推定されると発表した。
しかし同局は7ダム個別の治水効果は検証していないとしており、八ッ場ダムの効果は不明だ。
発表は中下流域での治水効果には触れていないが、利根川中流の観測地点(埼玉県久喜市栗橋)における当時の流量をみると、最高水位が9・67メートルに達し(基準面からの高さ)、一時は氾濫危険水位の8・9メートルを超えたことがわかる。
ただ、堤防はこの地点では氾濫危険水位より約3メートル高く造られており、八ッ場ダムがなくても氾濫の危険性はなかった。
洪水防止に有効なのは、ダム建設ではなく、堤防の強化や河床の浚渫といった河道整備なのだ。

【緊急放流、地滑りの危険性も】
台風19号豪雨は八ッ場ダムの危険性も明らかにした。
八ッ場ダムはこのとき7500万立方メートルを貯水したが、これは本来の貯水能力を1000万立方メートルも上回る貯水量だった。同ダムの利用可能な容量は利水用が2500万立方メートル、治水用が6500万立方メートルだが、当時は試験貯水中で、利水用に大量の空きがあり、治水用容量を大きく超える貯水ができ、流入する雨水とほぼ同量の水をダムから放流する「緊急放流」を避けることができた。
だが、本格運用が始まり利水用の貯水が満杯に近い状態の時、台風19号級の大雨が降れば、緊急放流を実施せざるを得なくなる可能性が強い。ダムのすぐ下流は急に増水し、大変なことになるだろう。
運用開始後に危惧されるのは、緊急放流の危険性だけではない。たとえば、吾妻川が運んでくる土砂がダム湖の上流端に貯まって河床が上昇し、付近の長野原町中心部で氾濫がおきる可能性がある。また、ダム湖の水位は季節によって変動を繰り返すが、それが周辺の地層に影響を与えて地滑りを発生させる危険性も指摘されている。周辺には地質が脆弱なところが少なくないだけに心配だ。
構想浮上から68年、約6500億円という日本のダムでは最大の事業費をつぎ込み、地元住民の生活の犠牲という代償を払って八ッ場ダムは完成した。そびえ立つ巨大なコンクリートの塊は、ダム優先の河川行政のシンボルのように見える。
(岡田幹治・ジャーナリスト、2020年4月10日号)

利賀ダム工期9年延長 31年度まで総事業費は490億円増

2020年5月12日
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国土交通省が富山県南砺市利賀村に建設を計画している利賀ダムは、工期が2022年度から2031年度に延長され、総事業費が1050億円から1640億円へ増額されることになりました。その記事を掲載します。
利賀ダムは総貯水容量が3110万㎥/で、その内訳は治水容量1970万㎥。工業用水の容量48万㎥、流水の正常な機能の維持の容量622万㎥、堆砂容量470万㎥です。
今更新しいダムをつくる時代ではないのですが、利賀ダムは必要性がとりわけ希薄であるため、工期が9年も延長されました。


利賀ダム工期9年延長 31年度まで総事業費は490億円増

(中日新聞2020年5月12日)https://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20200512/CK2020051202000021.html

利賀ダム(南砺市利賀村)の建設計画で、国土交通省・利賀ダム工事事務所(砺波市)は、二〇二二年度までとしていた工期を九年延ばして三一年度までに、千百五十億円としていた総事業費を四百九十億円増やして千六百四十億円に見直す。学識経験者らからなる利賀ダム建設事業監理委員会に変更案を示し、妥当との意見を受けた。
総事業費の増加は、ダム湖周辺の地質調査から地滑り対策地区を見直したほか、物価上昇が主な要因。地滑り対策で二百五十億円、物価上昇や消費税率アップ、労務単価の上昇などで二百四十億円の増加を見込む。
工期は、工事用道路の着工から十三年を見込み、一九年度に着工したためめどがたった。ダム本体の着工は二四年度の予定。
利賀ダムは庄川の支流、利賀川に、洪水対策や工業用水を目的に、一九九三年に着工した。
当初計画では総事業費は九百億円、工期は二〇〇八年度までだったが、〇九年に現計画に変更。直後に民主党政権が誕生し、七年間の凍結、検証を経て、一六年に継続が決まった。
事業費ベースでの進捗(しんちょく)率は一九年度末で46%。国の直轄事業で、県が事業費の三割を負担する。今後、工業用水を使う県から意見を聞くなどしたうえ計画を変更する。 (松村裕子)

 

基本計画の変更案/総事業費など妥当/整備局利賀ダム
( 建設通信新聞 2020-05-12 5面)https://www.kensetsunews.com/archives/450556

北陸地方整備局利賀ダム工事事務所は8日、第7回利賀ダム建設事業監理委員会(委員長・玉井信行東大名誉教授)をウェブ会議で開いた。事業の基本計画について、総事業費や工期を見直した変更案が示され、妥当との結論に至った。
総事業費はダム軸の確定により堤体断面の縮減が可能となり、地山掘削範囲の縮小や本体コンクリート量が縮減したことに加え、地すべりなどの詳細調査の実施などにより、現計画の1150億円から1640億円としている。
工期は2019年度に転流工進入路の河床進入トンネル工事に現地着手したことで事業工期を確定できたため、現計画の22年度までから31年度までに変更した。
19年度の第6回会合で事業工期について「必要な見直しを行う時期に来ている」という指摘が挙がったことを踏まえ、変更案がまとめられた。
同事業では1994年度に基本計画を策定し、08年度に総事業費や工期などを見直した第1回変更(現計画)を実施している。16年度には、ダム事業の検証に関する対応方針を「継続」と決めている。
同事業は多目的ダムとして庄川の河口から約40㎞、庄川合流点から約8㎞の位置に計画する。洪水調節、流水の正常な機能の維持、工業用水の供給を目的とする。
ダム本体の形式は重力式コンクリートダムで、堤高112m、堤頂長232m、総貯水容量約3110万m3、有効貯水容量約2640万m3を想定している。
進捗率は19年度末で約46%(事業費ベース)となっている。

なぜダム造られる? 滋賀・大戸川ダム方針転換から1年

2020年5月6日
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国が建設を凍結した淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、滋賀県の三日月大造知事が、建設推進に舵を切ってから1年になります。この問題をとらえた記事をお送りします。
三日月氏は嘉田由紀子・前知事の後継者でしたが、知事に再選されるために、自民党等の求めに応じて方針を転換しました。三日月氏はダム検証が始まった時は国土交通政務官(のちに副大臣)でしたが、ダム推進の道具となったダム検証を河川官僚と一緒に進めました。元々そのような人物です。
大戸川ダムの凍結解除に対して、京都府と大阪府が難色を示しています。
今更、新たなダムをつくる時代ではないと思うのですが。


なぜダム造られる? 滋賀・大戸川ダム方針転換から1年

(朝日新聞2020年5月6日 7時00分) https://digital.asahi.com/articles/ASN515D0TN51PTIL01F.html
(写真)大戸川ダム建設予定地周辺=2018年7月、大津市、朝日新聞社ヘリから、金居達朗撮影

国が建設を凍結した淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、滋賀県の三日月大造知事が、建設推進に大きく舵(かじ)を切ってから1年。各地で、ダムの緊急放流後に下流の川が氾濫(はんらん)したようなリスクも指摘されている。それでもなぜ、ダムは造られるのか。(山中由睦、真田嶺)
山間地にある大戸川ダムの建設予定地は土砂が高く積まれ、草が生えていた。辺りには55戸の民家があったが移転し、人通りはほとんどない。

2008年、当時の嘉田由紀子知事や下流域にあたる大阪府の橋下徹知事らが国に建設凍結を求め、事業は止まった。
14年、嘉田氏が引退し、衆院議員の三日月大造氏を後継指名した。三日月氏は民主党政権で国土交通省の政務官として、ダム事業の見直しに尽力。知事選では嘉田氏の支援を受け、「ダムだけに頼らない流域治水」を訴えて初当選した。
だが4年後の18年2月、三日月氏は早期着工を求める自民などの求めに応じ、治水効果を検証する県独自の勉強会の立ち上げを表明した。直後、大差で再選を果たすと、建設推進に方針を転換。九州北部豪雨(17年)のように600ミリ超えの大量の雨が降ってもダムが氾濫を遅らせる、という勉強会の結論を踏まえた。
一方、下流域の京都、大阪両府が合意する見通しは立っていない。約1080億円の事業費のうち、3割を両府と滋賀県で負担する。滋賀の負担は2・54%で8億円程度。残りの320億円近くを両府が担う。
ある自民県議は三日月氏に、「選挙応援をした以上、着工までの道筋はつけてもらう」と強気だ。ただ、県議会内も割れている。昨年12月の県議会で、共産県議から緊急放流などのリスクを指摘する意見も出た。三日月氏は答弁で、「ダムの洪水調節によって河川の水位上昇を抑え、被害を軽減した事例は多数ある」と理解を求めた。
大戸川ダム事業が凍結された09年は、「コンクリートから人へ」を掲げた旧民主党政権が全国のダムの見直しを始めた年でもある。
同政権は、本体工事に入っていない全国83ダム事業について、事業主体の地方整備局や都道府県に、ダムの必要性を検証するよう指示した。検証は洪水被害の軽減効果や費用などについて、河川掘削などの方法と比較する形で進めた。国土交通省によると、約7割の54事業が「事業継続」に。4事業は検証が今も続いているが、「中止」は全体の3割の25事業に留まる。
中でも、旧民主党が建設中止を公約に掲げた八ツ場ダム(群馬)、住民の反対運動が起きている石木ダム(長崎)、設楽ダム(愛知)、最上小国川ダム(山形)なども「事業継続」に。国のダム関連予算(19年度)は1418億円で、14年度から35%増えた。
国交省河川計画課によると、検証はコスト面が重視され、「事業継続」となった事業の多くはダムが他の方法より安かったという。だが一昨年の西日本豪雨では、ダムの緊急放流後に、愛媛県の肱(ひじ)川が氾濫した。昨年の台風19号でも関東地方の各地のダムが緊急放流し、下流域の水位が上昇。治水効果の限界が指摘されている。河川計画課の担当者も「最近の想定外の雨はダムの限界を超えている」と認める。
ダム事業に携わってきた元国交省幹部の宮本博司氏は「本気でダムが必要だと思っている国交省の役人はほとんどいないと思うが、簡単には方針を転換できない」と話す。地元の政治家や建設業者、大手ゼネコン、計画を作った国交省OBらからの建設推進の働きかけは今も少なくないという。宮本氏は「ダムにどれだけの治水効果があるのか。なぜ堤防強化ではダメなのか。冷静な検証と議論が足りない」と言う。
ダム行政に詳しい成蹊大の武田真一郎教授(行政法)は「国や自治体がダム整備を優先するのは、結局利権が大きいからだろう。環境面でも財政面でも負担が少ない堤防の強化に転換すべきだ」と指摘する。


大戸川ダムをめぐる経緯

1968年 国が多目的ダムとして建設を計画
98年 住民の集団移転完了
2005年 国が建設凍結の方針を示す
06年7月 ダム凍結を掲げる滋賀県の嘉田由紀子知事が初当選
07年 国が凍結方針を撤回
08年11月 滋賀、京都、大阪、三重の各知事が共同意見で大戸川ダム計画に「反対」表明
09年3月 国が再び建設を凍結
14年7月 嘉田氏の後継指名を受け、三日月大造知事が初当選
17年12月 自民、公明などが早期着工を求める決議案を県議会で可決
18年2月 ダムの効果などを検証する滋賀県独自の勉強会の設置を三日月知事が県議会で表明
18年6月 自公などの支援を受け、三日月知事が再選
19年4月 勉強会の結果を踏まえ、三日月知事が建設容認に方針転換

自粛で労力不安も… 水不足回避し田植え大丈夫 少雪の懸念一転、4月は多雨

2020年5月5日
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今年は記録的な少雪の影響で水不足が心配されていましたが、4月の雨量が東日本を中心に観測史上最多であったので、田植えは大丈夫なようです。その記事を掲載します。

自粛で労力不安も… 水不足回避し田植え大丈夫 少雪の懸念一転、4月は多雨
(日本農業新聞2020/5/5(火) 7:08配信)  https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200505-00010001-agrinews-soci

北海道を除く各地で、田植えの季節を迎えた。今年は記録的な少雪の影響で水不足への不安が高まったが、4月の雨量が東日本を中心に観測史上最多級だったことなどで、「平年よりも潤沢」な農業用水が確保された。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う人手不足の懸念はあるが、農家や水稲関係者は「水不足とのダブルパンチは避けられた」と、ひとまずは安堵(あんど)している。(栗田慎一)

気象庁の発表によると、4月の雨量は北、東、西日本の多くの地点で平年を大きく上回った。一方で、低気圧の影響を受けなかった鹿児島と沖縄の2地点では過去最少となった。
新潟県は1月、通常は夏に開く渇水対策本部を急きょ開いた。田植え時期に十分な水が確保できなくなる恐れが高いとして、県内26のため池の水抜きを中止するよう各土地改良区に呼び掛けた。

県農産園芸課の担当者は「慣例の水抜きをやめたことで、満水状態が保たれた。さらに、4月の雨で県内4大河川も平年より流量が増え、不安は消えた」と言う。宮城県農村振興課も「河川からポンプで水をくみ上げる計画だったが、4月の雨で県内17の農業用ダムや大小5500のため池もほぼ満水となった」と胸をなで下ろす。

一方、山の雪不足は夏まで影響するとの見方が強い。宮城県の担当者は「梅雨に十分な雨が降らなければ、7月後半から田んぼの水を抜いて地表を乾燥させた後、稲穂が出る頃に再び田に入れる『花水』が不足する恐れがある」と警戒。福島県農地管理課の担当者も「農業用ダムの貯水率は110%だが、少雪で山に水のストックがない分、盆前の花水が心配だ」と話す。
(写真)晴天の下、田植え機に乗って苗を植える船川さん(埼玉県幸手市で)

例年同様に準備
米農家も一様に安堵している。
平年通り田植えが始まった埼玉県幸手市で2日、市内で計95ヘクタールの水田を耕作する船川智弘さん(37)は「春先の雨が多かったので水は十分」と笑顔で話した。一方で、高齢などを理由に離農する人が増えており、今年は新たに6ヘクタールを受け入れた。水田が分散しており作業効率が悪く、規模拡大でのコスト面が課題になっているとし、「一枚の田の面積を広げるなどコスト削減で工夫している」という。

宮城県登米市の専業農家、佐藤瑛彦さん(34)も「河川の取水制限もなく、水の不安はなくなった」とし、例年同様に中旬から田植えを始める考えだ。

低気圧 頻繁に通過相次ぎ「史上最多
気象庁によると、4月の1カ月間雨量が全国最多だった地点は三重・尾鷲の581ミリ(平年比2倍)で、観測史上最多だった3地点は東京296・5ミリ(同2・4倍)、兵庫・豊岡223ミリ(同2・2倍)、山形・新庄181ミリ(同1・9倍)。この他、200ミリを超えたのは、高知・清水321・5ミリ、岩手・大船渡294ミリ、静岡248・5ミリ、横浜244・5ミリ、千葉221ミリ、松江219ミリ、京都・舞鶴203ミリなど計16地点だった。

記録的な多雨となったのは、日本列島付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、大荒れの天気が続いたため。一方で、高気圧の通過に伴い日照時間も記録的な長さとなり、千葉、静岡、愛知、高知、鹿児島など東、

ダム事前放流のガイドラインの策定(国土交通省)

2020年4月23日
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利水のための貯水容量を治水に活用するダムの事前放流について、国土交通省がガイドラインを策定しました。国土交通省の発表は下記の通りです。その記事も掲載します。
総理官邸に「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/
が設置され、昨年11月26日、12月12日、昨日(4月22日)会議が開かれ、事前放流ガイドラインが策定されました。
記事にある「(事前放流によって)貯水量が不足した場合の(利水事業者への)補填」は、ガイドラインに次のように書かれています。(11~12ページ)

【損失補填制度】
Ⅰ 損失補填を受けることができる施設等
国土交通省及び水資源機構が管理するダム及び河川法第 26 条の許可を受けて1級水系に設置された利水ダムを対象とする。
Ⅱ 損失補填の内容
損失補填とは、事前放流に使用した利水容量等が回復しないことに起因して、従前の機能が著しく低下し、かつ、気象庁による降雨予測と実績とに著しい相違が生じたことに合理的理由がある場合、機能回復のために要した措置等について、利水事業者の申し出に基づき、地方整備局等と利水事業者(利水ダムの管理者およびダムに権利を有する者。以下同じ。 )が協議の上、必要な費用を堰堤維持費又は水資源開発事業交付金により負担するものである。」

記事に書かれている通り、自治体が管理する河川に設置しているダムは補填の対象外です。

すなわち、補填の対象は一級水系の国の直轄区間にあるダムであって、一級水系の指定区間(都道府県管理区間)および二級水系にあるダムは補填の対象になりません(国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水利係に確認)。

事前放流をするためはダム集水域の雨量を予測することが必要ですが、実際には量的にきちんと予測することが結構難しく、事前放流が空振りになることが少なくありません。
また、事前放流さえすれば、緊急放流を回避できるというものではありません。
2018年7月の西日本豪雨において愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムはそれなりの事前放流をしていましたが、それでも凄まじい緊急放流を行ってダム下流域の大氾濫を引き起こしました。

国土交通省 「事前放流ガイドラインの策定について」
令和2年4月22日 http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo04_hh_000064.html
水害の激甚化等を踏まえ、ダムによる洪水調節機能の早期の強化に向け、関係行政機関の緊密な連携の下、総合的な検討を行うため、令和元年11月、「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」が設置され、令和元年12月に同会議で策定された「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」に基づき、関係省庁が連携して取り組みを進めてきています。
今般、同基本方針に基づき、国土交通省において、ダムの事前放流の実施にあたっての基本的事項を定める事前放流ガイドラインを策定しました。
本ガイドラインは、本日開催された「第3回既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」において確認され、策定したものです。
報道発表資料
1.事前放流ガイドライン 概要  http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341536.pdf
2.事前放流ガイドライン 本文 http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341537.pdf
(ダム事前放流ガイドライン 国交省 2020年4月22日)
(参考)関連資料
○既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/
○既存ダムの洪水調節機能強化に向けた基本方針
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisondam_kouzuichousetsu/pdf/kihon_hoshin.pdf

ダム事前放流は3日前開始 国指針、水不足の補填も
(日本経済新聞2020/4/22 18:56)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58361400S0A420C2CR8000/

国土交通省は22日、大雨に備え、ダムにためている発電や水道用の水を事前放流する際のガイドラインを定めた。どれほどの雨が降れば下流で洪水が起こるかをあらかじめ算出しておき、気象庁の予報雨量がその基準を上回る場合、3日前から放流を始めることを基本とした。
予報より雨が少なく利用できる水が足りなくなった場合、火力発電を増やしたり、給水車を出動させたりするための費用を国が補填することも明記した。
多くのダムの空き容量を増やしておけば洪水予防に役立つため、政府は昨年の台風被害を踏まえ、国や自治体、電力会社などが管理するダムで事前放流を促進する方針を決めていた。
大雨シーズンに備え、今後、ダムごとに最低限残しておく水量などを決める。国管理の河川では先行して利水関係者との協議が進んでおり、5月末までに全国で事前放流に関する協定を水系ごとに整える。
貯水量が不足した場合の補填は、ダム管理者が事前放流をためらうことがないようにするのが目的。ただ自治体が自ら管理する河川に設置しているダムは対象外になる。〔共同〕


事前放流で指針策定/利水ダム洪水調節活用/国交省

(建設通信新聞 2020/4/23 ) https://www.kensetsunews.com/archives/445887

国土交通省は、利水ダムを含む既存ダムを洪水調節に活用する政府の方針に基づき、事前放流ガイドラインを策定した。国交省所管ダムと河川法第26条の許可を得て設置された利水ダムを対象に、事前放流を開始する基準や貯水位低下量、最大放流量、中止基準の設定方法など、事前放流の実施に当たって基本的な事項を定めた。事前放流後に水位が回復しなかった場合の対応も盛り込んでいる。
22日に開かれた政府の「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」で決定した。
洪水調節容量が設定されていない利水ダムは、発電や都市用水などの補給で貯水位を高く維持しなければならず、事前放流後に利水容量が回復しない場合に利水者が損失を被ることが、事前放流を拡大する上で課題だった。
ガイドラインは、水位が回復しないでダムからの補給による水利用が困難になる恐れが生じた場合、河川管理者がダムの貯留制限緩和の可能性や取水時期変更の可能性など必要な情報を利水者に提供し、関係者間の水利用の調整が円滑に実施されるよう努めると明記。国交省が20年度に創設した損失補填制度の詳細も記し、必要な水量を確保できず、利水者に特別の負担が生じた場合に制度を活用できるとの見解を示している。
政府の検討会議は、既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針を2019年12月に決定。19年の台風19号を踏まえ、緊急時に既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、国交省を中心に関係省庁が密接に連携して速やかに必要な措置を講じることを決めた。事前放流ガイドラインは取り組みの1つと位置付けている。

質問なるほドリ ダムの洪水対策が進むの? 「利水」用でも事前放流 国がガイドライン作成=回答・山本佳孝
(毎日新聞東京朝刊2020年5月9日) https://mainichi.jp/articles/20200509/ddm/003/070/112000c

(写真)放流するダム=相模原市緑区で2019年10月、本社ヘリから宮本明登撮影
なるほドリ そろそろ雨の季節だね。2019年にはたくさんの川で洪水(こうずい)が起きたから、ダムの機能が強化されるって聞いたよ。
記者 日本には1500基(き)近くのダムがありますが、洪水を防ぐ「治水(ちすい)」機能を持つのは全体の4割にとどまります。6割は上水道や発電、農業用といった「利水(りすい)」目的のみで水をためているダムです。そこで国はこの夏から、利水ダムにも治水の役割(やくわり)を担(にな)ってもらおうとしています。

Q どういうことをするの?
A 利水ダムに「事前放流(じぜんほうりゅう)」をしてもらうのです。事前放流とは、大雨が降る前に利水用の水をダムの外に流すことです。ダムの空き容量(ようりょう)を増やして水をためられるようにし、下流の川で洪水が起きるのを防ぎます。これまで、事前放流に応じる利水ダムは限られてきました。そこで国土交通省(こくどこうつうしょう)は4月、多くの利水ダムに協力してもらおうと、事前放流に関するガイドラインを初めて作ったのです。

Q どういう内容なの?
A まずは各ダムで、どれくらいの雨が降れば下流の川で洪水が起きるのかという基準降雨量(きじゅんこううりょう)を設定しておきます。気象庁(きしょうちょう)の予報雨量がそれを上回った時、早ければ3日前から放流の判断を始めましょうという内容です。国は5月末までに、特に重要な川である「1級水系」のダムを管理する電力会社や土地改良区(とちかいりょうく)、自治体と治水協定を結ぶ予定です。

Q でも予報通りに雨が降らないと、利水用の水がなくなって困るんじゃないかな。
A ガイドラインでは貯水量(ちょすいりょう)が不足した場合の補塡(ほてん)策も示しています。水力発電の代わりに火力発電を増やしたり、取水制限(しゅすいせいげん)で給水車を出動(しゅつどう)させたりした時の費用について、国が補います。既存(きぞん)のダムをフル活用し、洪水対策にあたる構えです。(社会部)

 

 

 

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