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報道

ゼロメートル地帯はなぜ台風19号で被害を免れたのか <備えよ!首都水害>

2020年4月10日
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昨年10月の台風19号における利根川と荒川の状況を取り上げた記事を掲載します。
上流ダムや洪水調節池の洪水調節効果が大きかったというニュアンスで書かれていますが、上流ダムの洪水調節効果は中下流に来ると、減衰してしまうので、その役割は限られています。
一方、中流部にある渡良瀬遊水地のような洪水調節池はその洪水調節効果が中下流に対して直接機能しますので、重要な役割を果たしたと思います。

ゼロメートル地帯はなぜ台風19号で被害を免れたのか <備えよ!首都水害>
(東京新聞2020年4月10日)https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041002100058.html

荒川と江戸川という大きな川が流れ込む東京東部の海抜ゼロメートル地帯。二つの川の同時氾濫と高潮で最大二百五十万人の浸水被害が想定されている。各地で記録的な雨が降った昨年の台風19号で、ゼロメートル地帯はなぜ大規模水害を免れたのか。流域や上流では何が起きていたのか。台風19号から半年を機に振り返る。 (大沢令)
台風が通過した昨年十月十三日朝。荒川から約五百メートルの団地に住む松坂敏彦さん(80)=足立区=が堤防から見渡すと、濁流が河川敷の遊歩道にまで押し寄せていた。「荒れる川」の光景に恐怖を感じた。
松坂さんが住む宮城地区は荒川と隅田川に囲まれている。前夜は避難所になった学校で不安な夜を過ごした。「大型台風にいつまた襲われるかもしれない」と危機感が募り、荒川氾濫を想定したタイムライン(事前防災行動計画)の勉強会を開くなど地域での取り組みに本腰を入れ始めた。
(写真)昨年10月の台風19号で、足立区の西新井第二小に避難した人たち(区提供)

◆水門を閉鎖 調節池に水引き込む
時間をさかのぼろう。十二日朝、荒川と隅田川を区切る北区志茂の岩淵水門近くの荒川下流河川事務所は、気象庁から「岩淵地点上流で三日間平均雨量がカスリーン台風(※解説参照)を超える」との予測を受けた。千人以上の死者を出した、あの雨台風を上回るというのだ。
夜には荒川の水位が四メートルに到達し、午後九時十七分、水が隅田川に流れ込まないよう水門を閉鎖した。十三日午前九時五十分に、荒川は氾濫危険水位(※)の七・七〇メートルに迫る戦後三番目の七・一七メートルを記録。これは隅田川の堤防を二七センチ上回る数値。もし水門を閉めなければ隅田川が氾濫していた恐れがあった。
上流に目を向けると、荒川第一調節池(さいたま市など)が十二年ぶりに水を引き込み、過去最大の約三千五百万トンをためて増水を抑えた。さらに荒川上流ダム群(二瀬、滝沢、浦山=いずれも埼玉県秩父市)も治水容量の57・8%となる約四千五百万トンを貯留。水資源機構荒川ダム総合管理所によると、滝沢ダムは東京ドーム約十七杯分の約二千百八万トンをため、ダム下流の中津川太平橋(秩父市)地点の水位を約二・五メートル低下させたという。
荒川下流河川事務所の出水速報をもとに作成

◆カスリーン台風の再来か 最悪シナリオ想定
江戸川に流れ込む利根川の上流も一時は深刻な事態に陥っていた。利根川の流量予測の目安となる八斗島(群馬県伊勢崎市)上流の三日間平均流域雨量がカスリーン台風の三〇八・六ミリを超える三一〇・三ミリを記録したのだ。
十三日に日付が変わるころ、栗橋水位観測所(埼玉県久喜市)の水位が堤防の高さを超えるとの予測が出て、利根川上流河川事務所に緊張が走った。
カスリーン台風では、栗橋の少し上流の現在の加須市で堤防が決壊、濁流が葛飾区や江戸川区にも到達した。その再来となるのか。「東京が危ない」。三橋さゆり所長はゼロメートル地帯が浸水する最悪のシナリオを覚悟した。

◆洪水調節うまく行ったが…ソフト対策も急務
栗橋の水位は、堤防が耐えられる最大値「計画高水位(※)」の九・九〇メートルに迫る九・六一メートルまで上昇したが、これをピークに落ち始めた。雨の降り方の違いに救われた。カスリーン台風の雨は八斗島上流域の全域で降ったが、台風19号は西部に集中していた。三橋所長は「上流でもっと降っていたら大変なことになった」と振り返る。
関東地方整備局の出水速報などをもとに作成

利根川上流の七つのダム(試験中の八ッ場ダム含む)は治水容量の80・6%となる約一億四千五百万トンを貯留。国土交通省関東地方整備局によると、これは八斗島地点の水位を約一メートル下げた計算になるという。渡良瀬遊水地などの調節池も計約二億五千万トンをためて利根川の洪水を食い止めた。
「荒川と利根川上流のダム群や調節池の洪水調節効果が高かった」。二瓶泰雄東京理科大教授(河川工学)はゼロメートル地帯が被害を免れた理由を、こう分析する。今回はハードの力に助けられたが「住民が危機感を高めることや、避難行動を支える情報提供の仕組みを整えるなどソフト対策も急務だ」とも指摘する。

◇どう備えるか 松尾一郎東大大学院客員教授に聞く


―大きな被害をもたらす台風が相次いでいる。
地球温暖化で海面水温が高まると局所的な豪雨が頻発し、台風も大型化しやすくなる。関東地方にも雨風の強い台風がやってくる。二〇二〇年も水温は高い。
―台風19号について。
荒川などは大変な事態になる一歩手前だった。第一調節池や岩淵水門などハードが活躍したから持ちこたえただけだ。あの時、東京湾が干潮ではなく、満潮だったら荒川は下流でもあふれていたはずだ。結果オーライだったにすぎない。
―水害への向き合い方は。
大きな水害の経験がないから今後も起きないと過信するのは危険だ。行政は河川の氾濫によってどんな被害が起きるか、避難方法も含めて情報を事前にきちんと伝えておくことが重要だ。その上で、住民は、危機感をもち、災害を想像し、より安全な親戚宅への早めの縁故避難なども視野に入れておくべきだ。
―教訓をどう生かすか。
二〇一二年に米国にハリケーン・サンディが上陸し、ニューヨークは大規模な高潮被害を受けた。州政府は、検証報告で「wake up call」(ウエイク・アップ・コール)、みんな目を覚ませと警告した。台風19号は自然の警告で、見過ごしてはいけない。次の台風シーズンまで残された猶予はあまりない。家族や大事な人の命をいかに守るかを真剣に考えていきませんか。
<まつお・いちろう>タイムライン防災(事前防災行動計画)の第一人者。足立区総合防災行政アドバイザーも務めている。専門は防災行動学。

◇用語解説

<カスリーン台風> 1947年9月に発生した典型的な「雨台風」で、関東南部では利根川や荒川の堤防が決壊し、東京東部の葛飾や江戸川、足立区で家屋が浸水した。群馬、栃木を中心に 全国で死者・行方不明者が1900人以上に上った。
<氾濫危険水位> いつ氾濫してもおかしくない水位。以下、危険度順に避難判断水位、氾濫注意水位、水防団待機水位。
<計画高水位> 堤防の高さよりは低いが、氾濫危険水位よりは高い。その堤防が耐えられる最高の水位。

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