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事務局からのお知らせ

「水道事業における官民連携に関する手引き」のパブコメへの意見

2019年8月19日
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昨年12月に成立した改正水道法が今年10月に施行される予定です。それに備えて、厚生労働省が水道民営化の制度をつくる準備を進めています。
その一環として7月末のメールでお知らせしたように、厚生労働省が「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」と「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」について下記の通り、パブリックコメントを行っています。
前者は水道事業者が運営化権の譲渡を進める場合の手引き、後者は厚生労働省が水道事業者の運営権譲渡に許可を出す場合のガイドラインです。
今回、私も前者の手引きに対して、下記の通り、3点に絞った意見を提出しましたので、参考までにお知らせします。
パブリックコメントは意見を言ってもきちんと反映されることはほとんどありませんが、国民の関心を示すために皆様も意見の提出をご検討いただければと思います。パブコメの期限は8月20日です。

「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」」に関する御意見の募集について

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190137&Mode=0

案件番号 495190137
定めようとする命令等の題名 水道事業における官民連携に関する手引き
根拠法令項 -
行政手続法に基づく手続であるか否か 任意の意見募集
問合せ先
(所管府省・部局名等) 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課
電話:03-5253-1111(内線4030)
案の公示日 2019年07月22日 意見・情報受付開始日 2019年07月22日 意見・情報受付締切日 2019年08月20日

「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190136&Mode=0

案件番号 495190136
定めようとする命令等の題名 水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン
根拠法令項 改正水道法第24条の6、第31条
行政手続法に基づく手続であるか否か 行政手続法に基づく手続
問合せ先
(所管府省・部局名等) 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課
電話:03-5253-1111(内線4030)
案の公示日 2019年07月22日 意見・情報受付開始日 2019年07月22日 意見・情報受付締切日 2019年08月20日

水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)への意見(嶋津暉之)  2019年8月17日

1 民間事業者の選定が公正に行われず、市民の関与が排除されている。
(2.2.1. 地方公共団体事業型における導入・実施手順 p65~)
水道施設運営権を譲渡する民間事業者の選定は水道事業者の判断だけで行われることになっている。公正な第三者機関による審査を受け、さらに選定の是非について市民の意見を聴いてその結果を反映する仕組みが何も考慮されていない。形だけの公募型プロポーザル方式で入札が行われて、当初から予定されていた業者が落札する可能性が高い仕組みになっており、民間事業者の選定が公正に行われず、市民の関与が排除されている。
第三者機関の委員は、公正性、中立性を確保できる者を選任し、さらに民間事業者の選定の是非について市民の意見を広く聴いてその結果を反映する仕組みを導入して、民間事業者の選定を公明正大に行う必要がある。

2 水道施設運営等事業の継続が困難となった場合の措置が実際に可能なのか?
(2.1.2. 地方公共団体事業型における検討事項 6)p37~)
水道施設運営権者による事業の継続が困難となった場合は、水道事業者等が自ら直営で業務を実施する又は他の事業者への第三者委託等により事業を継続すると書かれているが、実際にそのようなことが可能なのであろうか。
水道事業者はすでに運営権の譲渡で、当該水道事業を実施する職員体制をなくしているのであるから、対応が困難である。あるとすれば、別の業者への運営権の譲渡であるが、そのような能力を有する業者を直ちに得られる保証はない。そのような業者がいなければ、水道施設の運営は宙に浮いてしまうことになる。そのような事態になる危険性があるのが水道施設の運営権譲渡であるから、実際に運営権の譲渡が行われるのは極めてまれなケースであり、政府が進めようとする水道の民営化はほとんど机上の話に終わる可能性が高い。

3 宮城県が進める水道事業等の民営化の費用削減効果は具体的な根拠がない。
ほとんどの水道事業体は民営化について消極的であるが、その中で突出して民営化を推進しようとしているのが宮城県である。村井嘉浩知事の主導によるもので、宮城県が民営化を計画しているのは二つの水道用水供給事業、三つの工業用水道事業、四つの流域下水道事業である。これらの事業における民営化の対象は管路を除く処理場等の部分で、資産の割合としては3割にとどまる。民営化することにより、20年間で水道・工業用水道・下水道で335~546億円の費用を削減できることになっている。
しかし、その費用削減の具体的な根拠はないに等しい。その根拠として宮城県への情報公開請求で開示されたのは「みやぎ型管理運営方式導入可能性等調査業務報告書」(2018年3月)である。それを見ると、「民間事業者に対するマーケットサウンディングを通じて,標準的に達成可能と見込まれる経費等削減率についてヒアリングを行い,その結果をもとに設定した」と書かれている。マーケットサウンディングとは、事前に広く意見や提案を求める対話型の市場調査のことであるが、要するに、民営化を受注する可能性がある会社にどれくらい費用を削減できるかを聞いただけだということである。そのような会社は当然、費用をかなり削減できると答えるに決まっている。
このように上記の費用削減額は民営化で削減できる個々の費用を積み上げて求めたものではなく、民営化による費用削減率を単純に10~45%に設定して求めたものであった。
この程度のデータで宮城県において水道等の民営化が進められていくのであるから、宮城県の水道等民営化の先行きは極めて暗く、いずれ暗礁に乗り上げることが予想される。

昨年7月の西日本豪雨の小田川氾濫の真因と責任

2019年8月13日
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昨年7月の西日本豪雨では高梁川支流・小田川の大氾濫により、岡山県倉敷市真備町では51人の命が奪われました。
水位が高まった高梁川が支流の小田川の流れをせき止める「バックウォーター現象」が起き、小田川の水位が上昇して小田川で決壊・溢水が起きました。
高梁川の支川である小田川は勾配が緩く、氾濫が起きやすいことから、小田川の合流点を高梁川の下流側に付け替える計画が半世紀前からありましたが、ダム事業(貯水池建設事業)と一体の計画(高梁川総合開発事業)であったため、難航し、2002年に中止が決定しました。その後、小田川合流点の付け替えのみを進める事業の計画が2010年に策定され、ようやく動き出そうとしていた矢先での西日本豪雨でした。
小田川と高梁川の合流点付近は1世紀近く前に大改修工事が行われて、現在の河道になりました。改修前は高梁川が西高梁川と東高梁川に分かれていて、その分岐点に小田川が合流していて、西高梁川につながっていたので、小田川は現状より勾配があったと推測されます。1925年に完成した改修で西高梁川と東高梁川は一つの河川になりました。旧・西高梁川上流部の河道は柳井原貯水池になり、それにより、小田川は旧・東高梁川を回って流れるように付け替えられました。これにより、小田川の緩い河床勾配のベースがつくられました。柳井原貯水池をつくるための小田川の付け替えでしたが、貯水池は水漏れがひどく、当時は漏水を防止する技術が乏しく、貯水池として使われることはありませんでした。


小田川と高梁川との合流地点を付け替える事業(2019年6月16日着工)

小田川と高梁川との合流点を高梁川の下流側に付け替える事業が今年6月からようやく始まりした。この付け替えが早く行われていれば、合流点の水位が4.2mも下がるので、昨年の豪雨で、小田川が氾濫しなかった可能性が高いと考えられます。
問題はそれだけではありません。
今回、小田川について昭和46年の資料「高梁川柳井原堰建設事業計画書」を入手しました。
この計画書を見ると、小田川の付け替えが早期に行われるものとして付け替えを前提として、小田川の計画堤防高を低くする改修計画がつくられていました。下記の通りです。
下記の図-7には「現状計画堤防高」のほかに、それよりかなり低い「切替計画堤防高」が記入されています。この「切替計画堤防高」が当時の新しい計画堤防高です。
このことが大変重要な問題です。
計画堤防高を達成できるように堤防高を嵩上げする築堤工事が行われていくものですが、小田川では達成すべき計画堤防高を低くしてしまったため、築堤工事がきちんと行われないことになり、そのように堤防高不足の状態がずっと続いてきました。
小田川の付け替えを前提とするならば、早期に実現しなければならないにもかかわらず、付け替えを長年あいまいな状態に放置してきたために、小田川の改修がきちんと行われず、その結果として昨年7月、小田川で決壊・溢水が起き、大水害になりました。
小田川の付け替えを前提とした改修計画をつくっておきながら、小田川の付け替え工事を半世紀近くも先送りしてきた国土交通省の責任が厳しく問われるべきだと思います。

【補論】 ダム放流の影響について

 

高梁川水系のダムで、西日本豪雨との関係を検討すべきダムは右図に示す4基のダムです。

各ダムの諸データを次ページの表に示します。

(IWJ 2018年7月23日)

このうち、河本ダムは岡山県の多目的ダム、新成羽川ダム、田原ダム、黒鳥ダムは中国電力のダムです。新成羽川ダムはダム式発電と揚水式発電を兼ねた混合揚水式で、田原ダムを下池として揚水式発電も行っていますが、田原ダムの容量は新成羽川ダムに比べてはるかに小さいので、揚水式発電は一部だけです。

黒鳥ダムは発電ダムの下流に設置される逆調整池ダムです。発電ダムの放流は時間変化が大きいので、それを一定量の放流にするためのもので、その放流で同時に発電も行います。逆調整池ダムは貯水容量が大きくありません。

新成羽川ダムは総貯水容量が12750万㎥もあり、その放流の影響を検討する必要がありますが、中国電力という私企業のダムであるため、その放流量等のデータの入手が容易ではなく、現在、データの入手に努めている段階にあります。

河本ダムについてはデータを入手できましたので、流入量と放流量の変化をグラフ化しました。下図のとおりです。河本ダムは本豪雨で満水になり、洪水調節機能を失いました。その放流が小田川の氾濫に影響したかどうかについては今後検討を進めたいと思います。

地球温暖化 増える豪雨に備え 過去データより将来予測重視 国交省検討会、「温暖化前提の治水」提言

2019年8月2日
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7月31日に国土交通省で「第5回 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」が開かれました。この会議でまとめられた提言の内容を毎日新聞が詳しく報じています。

この技術検討会の資料は国土交通省のHPに掲載されています。、
「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会(令和元年7月31日)配布資料」http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai05kai/index.html

この提言は治水計画のあり方を根本から変えていこうというものです。
すなわち、「気候変動の予測精度等の不確実性が存在するが、現在の科学的知見を最大限活用したできる限り定量的な影響の評価を用いて、治水計画の立案にあたり、実績の降雨を活用した手法から、気候変動により予測される将来の降雨を活用する方法に転換する」というものです。
しかし、気候変動による将来の降雨変化を予測することが本当にどこまでできるのでしょうか。所詮は予測モデルによる計算でしかなく、そのモデルの作り方で予測値は大きく変わってきます。
そして、CO2の増加で地球温暖化が進み、気候変動が進行しているという考え方そのものにも異論が出されています。
参考のため、冨永靖德氏(お茶の水大学名誉教授)の見解を紹介しておきます。


冨永靖德氏(お茶の水大学名誉教授)の温暖化論争のまとめ
   IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)
◆IPCCの温暖化論:
・化石燃料を消費することに伴って、大気中のCO2が増える
・CO2の増加は地球温暖化をもたらす
・地球温暖化はさまざまな害悪をもたらす
◆良心的な科学者の考え方:
・気候変動の原因はCO2だけでなく、太陽活勣が重要である。これは、自然現象であるから制御できない。(商売にはならない)
・CO2による温暖化と太陽活動の変化による寒冷化は打ち消し合い、
今後の気温は50~IOO年にわたってほぼ横ぱいか寒冷化する可能性が大きい
*太陽活勣の低下⇒宇宙線の増加⇒雲の増加⇒寒冷化
・大気中のCO2増加そのものはなんらの害ももたらさない。(自然の恵み)
◆今後の政策の望ましい変更
・大気中のCO2濃度を問題にするのではなく、炭素資源の浪費を防ぐエネルギー政策を追求すべきである。
・温暖化防止一辺倒の政策は改めるべきである。
*排出権取引による、年間数兆円の支払いは無駄!


地球温暖化

増える豪雨に備え 過去データより将来予測重視 国交省検討会、「温暖化前提の治水」提言
(毎日新聞2019年8月1日 東京朝刊)https://mainichi.jp/articles/20190801/ddm/012/040/054000c

 地球温暖化で深刻化が懸念される豪雨災害に備えるため、国土交通省の有識者検討会は31日、治水計画に降雨量の将来予測を反映すべきだとの提言をまとめた。過去の豪雨に基づく対策から、温暖化の影響予測を活用する対策へと治水の大転換になる。昨年の西日本豪雨など想定を上回る水害の頻発を受けたものだが、コスト増が見込まれ、課題も多い。【大場あい、斎藤有香】
国や都道府県などの現在の治水計画は、戦後に河川の各流域で発生した最大の豪雨が再び起こっても被害を防げるよう考えられている。提言は「今後、豪雨の更なる頻発化、激甚化はほぼ確実視されている」として、温暖化による降雨量増加予測を反映させたものに改めるよう求めた。
これまでは温暖化で想定を上回る豪雨が発生した場合、避難などソフト面の対策強化で対応する方針だった。しかし、近年の豪雨災害頻発により、堤防などハード面でも影響を考慮せざるを得なくなった。温暖化に伴う影響の予測技術が向上したこともあり、有識者検討会は昨年4月から議論を進めてきた。
提言は、治水計画に活用する降雨量の将来予測について、来年始まる温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が世界の平均気温の上昇を産業革命前から2度未満に抑える目標を掲げていることを踏まえ、世界の平均気温が2度上昇した場合を基本にするとした。
その上で、降り方の違いから全国を15地域に分けて降雨量の変化を予測し、北海道と九州北西部の降雨量は現在の想定の1・15倍、他の地域は1・1倍になるとして、これに基づく治水計画を策定すべきだとした。降雨量が1・1倍になると、洪水の発生頻度は約2倍になるという。倍率は暫定値で、今後必要に応じて見直す。
具体的な計画策定では、河川管理者が定める河川整備基本方針で対策の基本となる河川流量を設定する際、この予測降雨量を活用することになる。治水計画改定は全河川が対象になるが、提言は、基本方針策定後に想定を上回る大規模な洪水が起きた河川から優先的に見直すよう求めた。
また、実際には2度目標を上回るペースで気温上昇が進んでいるため、提言は4度上昇した場合の予測も参考にするよう明記した。耐用年数の長い施設整備などに関しては、4度上昇に備え、低コストで改造できるような設計上の工夫をすべきことも盛り込んだ。
治水計画の見直しには堤防の設計やダム計画、排水設備などの変更が必要になり、コスト増も見込まれる。国交省河川計画課は「実現に必要な(河川管理などの基本となる)河川砂防技術基準の見直しなどを今後検討していく」としている。
有識者検討会座長の小池俊雄・土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長は「温暖化の進展に伴って毎年各地で深刻な被害が起きる中、先手を打ちたいと考えてきた。被害防止・軽減による経済的メリットが対策コストを上回ると期待され、国民の理解も得られるのではないか」と語った。

短時間、滝のように

 温暖化の進展で、短時間に降る強い雨など災害をもたらす可能性の高い雨は増えている。気象庁によると、日本の年平均気温は100年当たり1・21度のペースで上昇し、1時間に50ミリ以上の「滝のように降る雨」の発生回数は統計を取り始めた1976年以降、10年ごとに27・5回ずつ増加している。
更に近年、これまでの経験に基づく対策では対応できないような豪雨や台風の被害が発生している。2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市の3分の1に当たる約40平方キロが浸水した。昨年7月の西日本豪雨では270人以上(災害関連死含む)が亡くなった。西日本豪雨について気象庁は個別の豪雨災害で初めて、温暖化が一因との見解を示した。
世界の温室効果ガス排出量は増加し続けており、人間の活動が原因の温暖化によって、短時間強雨などは更なる増加が予測される。
気象庁によると、世界全体で効果的な対策を取らず、今世紀末に世界の平均気温が産業革命前より約4度上昇した場合、1日の降雨量が200ミリ以上の大雨や「滝のように降る雨」の年間発生回数は日本全国平均で現在の2倍以上になる。気象庁気象研究所の分析によると、日本の南海上で猛烈な台風が増加し、現在の10年に3回程度から5回程度に増えるとされる。
温暖化の被害軽減策に詳しい三村信男・茨城大学長(地球環境工学)は「多くの人が気候変動を実感するようになり、治水に関して本格的な適応策の導入が提案された意義は非常に大きい」と提言を評価した。一方で「影響予測技術は政策に活用できるように向上してきているが想定を超える豪雨災害は十分起こり得る。ハード面の対策を急ぐと同時に、住民への迅速な情報提供など、ソフト面も含めた何重もの備えが重要だ」と話している。

東京都江戸川区のスーパー堤防の差し止めを求める控訴審の判決文と弁護団声明

2019年8月2日
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東京都江戸川区のスーパー堤防の差し止めを求める控訴審で7月16日に東京高裁の判決がありました。
まことに残念ながら、住民側の敗訴でした。
都築政則裁判長は判決言い渡しを瞬時に終わらせるのではなく、判決文の要旨を述べる姿勢を示しましたが、敗訴には変わりはありませんでした。
判決文は22ページの短いものです。住民側が主張した項目は一通り取り上げているものの、国と区に勝たせるための結論が先にある論理性がない判決文でした。
都築裁判長は国に対して地耐力関係の全データの文書提出命令が出すなど、訴訟指揮はよかったのですが、判決は行政に忖度するものでした。

判決文はスーパー堤防差止東京高裁判決 20190716

判決要旨はスーパー堤防差止東京高裁判決の要旨20190716

をお読みください。

弁護団は7月26日にスーパー堤防差止訴訟東京高裁判決に対する弁護団声明 2019年7月26日

を出しました。そして、同日、最高裁判所に上告兼上告受理申立を行いました。

大江弁護士が「裁判支援の会たより」に書かれた文章を引用します。

 

2019年7月27日

弁護団事務局長 弁護士 大江 京子

1 はじめに
2019年7月16日、東京高等裁判所民事第19部(裁判長都築政則)は、江戸川区スーパー堤防事業差止め等請求訴訟について、控訴棄却の不当判決を言い渡しました。判決の問題点について詳しくは別紙の弁護団声明をご参照ください。

2 控訴審の成果について
判決の結論は不当であり、とりわけ行政追随型司法(行政に対して違法と言えない裁判所)の姿勢に対して、強く抗議したいと思います。
しかし、本件控訴審の審理は大きな成果を生みました。成果の第1は、何といっても国に対して地盤調査結果のデータ等の文書提出命令を出した画期的な決定です(平成30年3月27日)。本決定が、「土地に関する情報は、国民の生命、身体及び財産に関わるものとして公共性を有する」としたことは、個人情報を盾に地盤の情報開示を拒否してきたこれまでの行政の在り方に大きな影響を及ぼすものと期待します。
成果の第2点目は、控訴人らが要求した証人のすべてを採用して十分な証拠調べが行われた点です。スーパー堤防の必要性については、嶋津暉之証人、国の青野正志証人の尋問が行われ、その結果、治水事業としてのスーパー堤防事業が完全に破綻していること、国もその必要性については、結局のところ高台事業としか言えなかったことなどが誰の目にも明らかになったといえます。また、盛り土の安全性についても、国側の青野・金沢裕勝証人に対する反対尋問により、重要な事実が次々と明らかになりました。これらの立証の結果、控訴人らが、国らを圧倒していたと思います。国や行政を相手にする訴訟は、はじめから証拠の偏在があり、原告としては不公平な戦いを余儀なくされるのが通常です。本件の都築裁判長の訴訟指揮は、他の裁判体とは異なり、高く評価されるものです。
また、成果といえるかは疑問ですが、判決言い渡しの法廷で、裁判長自ら判決理由を口頭で述べたことも、今の裁判所の実情から見れば異例のことでした。
都築裁判長は、本件スーパー堤防訴訟の控訴人らの主張に真摯に耳を傾けて、公正な訴訟指揮を行ったと思います。

3 今後に向けて(最高裁)
それだけに、判決の内容は非常に残念です。国を勝たせる結論ありきの判決という点では、1審判決と同様でした。違うのは木で鼻を括るような1審判決と違い、控訴人らの主張に対して、一応ひとつひとつ答えようとしている点でしょうか。しかし、法的権限論のところはいかにも自信なさそうに書いていたり、スーパー堤防の必要性のところでは、裁判所自体が証拠の矛盾や不合理を分かっていながら理由を書いたとしか思えない箇所が散見されました。
控訴人ら4名は、本東京高裁判決を容認せず最高裁に上告いたしました。今後、弁護団としては、最高裁に提出する上告理由書等で徹底的に判決の矛盾を追及していくつもりです。
2011年11月に第1次訴訟を提起して以来これまで本当に多くの方に応援をいただきました。改めて深く感謝を申し上げます。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い致します。

石木ダム工事差し止め訴訟の証言内容(長崎地裁佐世保支部)

7月17日は石木ダム工事差し止め訴訟の証人尋問が長崎地方裁判所佐世保支部で行われました。

原告7人の証人尋問で、午前の2時間は私(嶋津暉之)、午後の3時間はダム予定地「川原(こうばる)」の岩本宏之さん、石丸勇さん、岩下すみ子さん、松本好央さん、石丸穂澄さん、佐世保市民の松本美智恵さんの尋問が行われました。

私は、1/100洪水(100年に1回の最大洪水)のために石木ダムが必要だという川棚川の治水計画は虚構でつくられており、科学的に検証すれば、石木ダムは治水面で不要であることを証言しました。

具体的には次の5点について証言しました。

1 石木ダムができても川棚川流域において1/100洪水で溢れない範囲はほんの一部である。

2 川棚川治水計画では石木川合流点下流は1/100で計画されているが、この1/100は恣意的に設定されたものであり、川棚川の計画規模を科学的に求めれば、1/50が正しく、石木ダムは不要となる。

3 川棚川の計画規模1/100を前提としても、治水目標流量(基本高水流量)の計算の誤りを修正すれば、長崎県の数字よりかなり小さくなり、石木ダムは不要になる。

4 長崎県が示す1/100治水目標流量(基本高水流量)が石木ダムのない状態で流下した場合も余裕高(堤防高-水位)が半分になるだけであり、決して氾濫するような状態にはならない。

5 石木ダムは費用便益比計算の恣意的な設定を改めれば、費用便益比が1を大きく下回り、見直しすべき事業になる。

この証言の要旨は

石木ダムの治水面の虚構

石木ダムの費用便益比」計算の問題点 

のとおりです。 

証言はスライドを使って行いました。このスライドは 

のとおりです。

各スライドについて述べたことは、

のとおりです。

合わせてお読みいただければと思います。

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