東彼杵郡川棚町での石木ダムの建設をめぐり、反対する地権者などが工事の差し止めを求めた裁判の第1回口頭弁論が10日開かれました。この裁判は川棚町の石木ダム建設予定地の地権者など原告608人が、県と佐世保市を相手にダムと関連する道路の建設工事を差し止めるよう求めているものです。原告側は石木ダムは治水と利水の両面で必要性はなく、住民の人格権を奪うなどと主張しています。長崎地裁佐世保支部での第1回口頭弁論で、被告の県と佐世保市側は全面的に争う姿勢を示しました。意見陳述した住民の石丸キム子さんは、「私たちはダムに翻弄されない普通の生活をしたい」「工事を止めることだけが住民を救う唯一の方法」と訴えました。地権者側は、これまで長崎地裁佐世保支部に工事差し止めの仮処分を申請していましたが、去年12月に却下されていました。次回の裁判は今年9月に開かれます。
各地ダムの情報
7月28日未明、長崎県がまたもや予告なしに重機車両を工事現場に搬入
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石木ダム工事事務所長、知事との話合い等を約束
7月28日未明、長崎県がまたもや予告なしに重機車両を工事現場に搬入、住民側は徹底的に抗議して重機車両を搬出を求めましたが、長崎県は拒否しました。長時間にわたる交渉の結果、石木ダム工事事務所所長との間で下記約束を取り交わしたとの報告です。下の記事は、7月29日の長崎新聞です。
石木ダム工事事務所所長との間で結んだ約束
- お盆過ぎまで(8月17日)工事を中断する
- 知事と話し合いの場を持つ
- 話合いの日程調整の為、8月1日ダム事務所で話合いを行う。
(8月1日の話合いでは、「知事との話合いが終了するまで工事中止」を要請しましたが「今すぐには回答できない。8月7日に回答する」ということになっています。)
こうばる地権者、佐世保市民共有地権者 意見陳述 (石木ダム工事差止訴訟)
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7月10日、石木ダム建設工事差止訴訟第1回口頭弁論開催
「無駄な石木ダム建設事業によってこんない不利益を被るから工事中止の判決を求めます」と2017年3月6日に608人の原告が長崎地方裁判所佐世保支部に提訴していました。その第1回口頭弁論が7月10日午後4時から開かれました。
こうばる住民である石丸キム子さんがこうばるの池に嫁がれてから42年、毎日毎日が石木ダム絡みの生活であること、その中で石木ダムが不要であること、自分たちの生活の場が素晴らしく無駄な石木ダムのために明け渡すことはできないという信念が益々強くなり、確信に達していることを訴えました。
「このままでは『行政代執行』へと繋がります。私達だって長崎県民なのです。長崎県に日本中いや世界中に悪名をとどろかす代執行という愚行をさせたくはありません。」
「長崎県をこんな愚かな県にさせたくない」、この訴えに長崎県はしっかりと向かい合ってください。
石木ダムの利水面での受益者とされている佐世保市民である松本美智恵さんは、「平成6年~7年にかけて西日本各地を襲った大渇水、あれ以来22年間、佐世保では一度も水不足による断水はおきていません。昨年の猛暑の時期も佐世保の貯水率は89%でした。」と佐世保市民は水不足と認識していないこと、全国的人口減少に伴う給水量低下現象が続く中で佐世保市だけが急上昇する理由がないこと、水道料金値上げなど無駄な負担を強いられること、そしてこうばるの皆さんの人権侵害に与することはできないことを熱く述べました。
板井弁護士は治水、利水両面でダム依存にすることの弊害を具体的に明らかしながら、ダムによって失われるものの大きな価値を指摘しました。究極的に河川改修をしてもそれ以上の大雨が降れば自らの命を守るために逃げる計画を作り上げ、日ごろから訓練を行うことが大事であると強調しました。
「大型公共事業は、行政やゼネコンが決定するのではなく、住民が決定するものではないでしょうか。」と問題提起をして裁判所に行政のチェックを求めました。
鍋島弁護士は、「この石木ダム建設のための工事は、こうばるの土地をダムの底に沈め、こうばるに住んでいる人々が営んでいる生活を奪う工事です。」と先ず釘を刺し、「そこで奪われる権利・利益は、単に田畑や建造物としての居宅といった経済的利益ではなく、人が人として生きていく権利、まさに人格権の侵害です。そして、こと石木ダム工事は、13世帯53名もの人々の生活とそこで築かれている一つの地域社会を消滅させるという、現代の日本社会でも最も特異な工事です」と指摘しました。「手続きとして適法に行われていても、その実質すなわち工事の必要性が全くの虚構であれば、そのような建設工事は許されるはずがありません。」と工事差止を求めました。
魚住弁護士は、1972年(昭和47年)7月29日に、地元住民代表との間で締結した,「建設の必要性が生じたときは,改めて甲(地元住民)と協議の上,書面による同意を受けた後着手する」との内容を有する、「石木川の河川開発調査に関する覚書」を取り上げました。作成の経緯及びその記載内容の明確性・具体性からして、本件覚書は、法的拘束力を持たせる意思を持って締結された契約出あることを明白にしました。土地収用法を適用して工事を進めていること自体がこの覚書違反の違法行為であると指摘しました。あわせて、「客観的に合理的な必要性も説明せず,強制的に当事者たる住民個人の私有財産,生活の基盤を侵害することは,日本国憲法のよって立つ立憲民主主義にも反する違憲な行為」と主張しました。
口頭弁論終了後は中部地区公民館研修室で報告集会を持ちました。とりわけ、今日のお二人の原告による違憲陳述、3弁護士による代理人意見陳述について多くの皆さんに知らせル用に取組もう、と意思一致が図られました。
意見陳述、被告から提出された答弁書等は、こちら
マスコミ報道
KTNテレビ長崎 石木ダム工事差し止め訴訟の第1回口頭弁論
石木ダム工事差し止め訴訟の第1回口頭弁論
石木ダム 米国衣料メーカー日本支社が実施、事業の県民意識調査 県の説明不十分8割 「公開の場で話し合い必要」
パタゴニア日本支社が昨日発表した、石木ダムに関する世論調査の結果について朝日新聞と毎日新聞の記事とテレビ長崎のニュースを掲載します。
石木ダムに関する県民アンケート
(テレビ長崎2017年6月22日 18:53)http://www.ktn.co.jp/news/20170622137065/
第六回事業認定取消訴訟開廷 石木ダム
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裁判長交代、双方が裁判長に説明弁論
2017年5月22日14時から、長崎地方裁判所で6回目の事業認定取消訴訟法廷が開かれました。裁判長が異動で替わったため、原告側はこの訴訟の意義とこれまでの経過で明らかになった争点について説明、被告側はこれまで通りの説明を繰返していました。
原告の炭谷 猛氏が{無駄な石木ダムで何代も継がれてきている生活の地が奪われるのは如何しても理解が行かないので、是非、石木ダム事業認定取消の判決を!」と強く訴えました。弁護団の八木大和弁護士が利水面から、平山博久弁護士が治水面から、「起業者があげ、認定庁が追認している石木ダムの必要性はまったくデタラメ」であることを要領よく説明しました。馬奈木弁護団長は、「前任裁判長は当方からの石木ダム事業認定執行停止仮処分申立について『13世帯が被害を受けるとしても補償金で払われる』として却下、一方で諫早訴訟では『開門すると農業者に生活基盤に影響与える』として開門停止決定をくだすという、余りに行政権力に迎合した矛盾した判決・決定をだしている事実をあげ、本取消訴訟においては行政に追随しない判決を求める」と訴えました。
被告側も意見陳述を行いました。これまでの主張を繰り返すだけで、争点についての説明は希薄でした。何よりも気になったのは、失われる利益の説明で、13世帯皆さんが営々と築いてこられた現地での生活と地域社会、切っても切れはなすことのできない自然環境の取壊しについては一言も触れていないことです。事業認定申請書においても、事業認定理由にもこのことは一切触れられていません。「土地収用法を適用することで、金銭解決ができるから、1世帯の不利益はない」というのが起業者側の一貫した考え方なんです。
次回はこの期日一週間前に被告から出された反論への当方からの反論を提出し、弁論することになります。
この日の裁判所で双方が裁判所に提出した書面等は、下記をご覧ください。
第6回口頭弁論 |
当日の地裁前集会と終了後の報告集会
地裁前で「今日の裁判の意義は、裁判長が替わったので、裁判長にこの問題について説明し、まったく不要な石木ダムのために13世帯の皆さんの生活・地域社会・自然が破壊されることは許されないことを理解させたい」と弁護団が説明。岩下さんは、「現地こうばるでは長崎県が事前の説明もなく川を壊し始めている。『川をいじるのであれば文書を示せ』と抗議する私たちに県はそれを示すことができず、逆に私たちを排除するために警察官を呼んだが、その警官たちに『今日はもう止めにして、もう少し説明しなさい。」とたしなめられている。長崎県職員はその場は下がるが、警察が帰途につくやすぐに工事を再開している。」と現地の最新情報を報告しました。(下の写真、メガホンを手に報告しているには、岩下さん)
裁判終了後には長崎市立図書館隣のメモリアルホールに迎い、田代圭介氏の司会の下で報告集会を持ちました。
平山弁護士は、被告処分庁(九州地方裁判所)の弁論について、
「向こう側の言い分しか言っていない。言いっぱなし。すなわち、
① 設計指針などの 基準通りに行っている、②治水・利水とも事業者の広範な裁量権が許されている、③よって事業認定に違法性はない」というだけで、「治水については過去の水源を挙げたうえで必要性を語っていた。失われる権利で13世帯に触れていない」
と指摘しました。
馬奈木弁護団長は、「前任裁判長が事業認定執行停止仮処分で、『13世帯の皆さんが不利益を被るとしても金銭で補償される』(ので問題なし)、としながら、諫早裁判では、『開門調査は農業者の生活基盤に影響与えるから(確定判決に関わらず)開門調査をしてはならない』と判決している。前任裁判長は、1年半前『国は負けても控訴しない。確定する』と言っていた。国は確定判決に従う気はなかった(=長崎地裁判決で国が敗訴しても良い)。それに裁判所が一枚かんだのが諫早事件の長崎地裁判決である。最高裁、法務省総務局長が関わるようになって諫早と辺野古の状況が変わった。最高裁からの指令(に違いない)。」と現在の政治状況絡みの司法問題を率直に指摘し、「これに対応するには『許せない』を示し続ければよい。」と処方箋を示しました。そして、「憲法守る力は現地の皆さんが戦い抜くこと。勝てるんだという確信。頑張りぬきましょう。」と結びました。
炭谷原告は、「裁判所はなぜ国に沿うのか。(私は)司法しか頼れないと思っている。それなのに補償金で解決できるとは何事か。悔しい。公共事業工事は、周りに理解をもらって始めるはず。長崎県はそれをせずに警察を呼んだあげく「説明が足りない。この場は工事を停止して引き上げるのが良い」と忠告されてその場で合意を示しても、警察が引き上げる途中で工事を再開している。それ以来、隙(場所と時間)を狙って工事に入っている。新土木部長は就任にあたって「公共事業は地域の皆さんに貢献」といったが、やっていることが全く違う。」と長崎県の卑劣なやり方に怒りを込めて報告しました。
佐世保市、長崎市、こうばるの方々は、世論を喚起するために様々な工夫を凝らして情報の共有を図っていることが報告されました。「ダムが街の発展を阻害する。街づくりとダム」の視点で多くの人との話合いを持つようにすることが確認されました。
左から、魚住弁護士、高橋弁護士、板井弁護団副団長、馬奈木弁護団長、炭谷原告、平山弁護士、緒方弁護士、毛利弁護士
次回7月31日は今回被告から提出された説明への当方からの反論と、立証準備(証人申請の検討)。被告側は証人申請する予定はない、としています。
『裁判報告 八ッ場ダム・思川開発・湯西川ダム 6都県住民11年の闘い』の書評
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『人間と環境』2017年№1に書かれています。