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長崎県は5月19日、石木ダム(川棚町)の建設に伴う付け替え道路の工事を約10カ月ぶりに着工しようと試みましたが、ダムに反対する建設予定地の地権者らの抗議を受け、着工できませんでした。その記事を掲載します。
石木ダム道路工事再開できず 反対派が阻止行動
県と佐世保市が川棚町に進めている石木ダム建設事業で、県は19日、2010年に中断した付け替え道路工事の再開を試みた。しかし、反対派の阻止行動を受け、この日の着手を断念。県は20日以降も試みる方針。
午前9時半頃、県職員や業者の関係者ら約10人が工事現場に到着。現場入りしようとしたが、人物が特定されないよう顔を隠した反対派約40人が行く手を遮った。
県石木ダム建設事務所の古川章所長が「ここは県が管理する土地です。道を空けてください。(妨害禁止の)仮処分決定が出ている」と呼びかけたが、反対派は無言で「工事強行より話し合い!」「地元の理解は得ましたか?」などと書いたプラカードを掲げ続けた。
現場入り出来なかった県側はいったん引き返し、その後、2回にわたって再開を試みたが、いずれも阻止された。
古川所長は報道陣の取材に対し「ダムの必要性についてはすでに結論が出ており、これ以上の話し合いは平行線。何とか理解をお願いしたい」とした。一方、反対派の地権者は「長期戦は覚悟の上だ。ダムは必要なく、工事の強行は絶対に阻止する」と語った。
2日目も着手できず 石木ダム道路工事 反対派が阻止行動
(読売新聞長崎版2015年05月21日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150520-OYTNT50279.html
県と佐世保市が川棚町で計画する石木ダム建設事業で、県は20日、中断している付け替え道路工事の再開を試みたが、前日に続いて反対派の阻止行動を受け、2日目も工事に着手できなかった。
午前9時半頃、県職員ら約20人が工事現場に入ろうとしたが、顔を隠した反対派約30人は、前日と同様に無言でプラカードを掲げ、入り口に立ちふさがった。県側はその後も3回にわたり現場入りを試みたが、いずれも阻止された。
県石木ダム建設事務所の古川章所長は「妨害禁止の仮処分決定を守ってほしい。現時点で強硬手段をとるつもりはなく、粘り強く説得していく」と話した。
一方、反対派の地権者は「40年以上戦ってきたので、持久戦は慣れている。仮処分は権力者の弱い者いじめ。必要のないダム建設は認められない」と譲らない姿勢を強調した。
石木ダム問題の経緯と今後についての報告の記事です。
40年経って石木ダム無しで何も困らないのですから、好い加減に事業者は諦めたらよいのですが、利権があるためか、ダム建設に執着しています。
何としても、強制収用を阻止しなければなりません。
(写真)のどかな自然に囲まれた石木ダム建設予定地
初夏の訪れを感じさせる晴天となった5月初旬、建設予定地の川棚町岩屋郷は、新緑の山々と田畑に囲まれた民家が点在し、牧歌的な景色が広がっていた。
集落の至る所には、ダム建設反対を訴える看板が掲げられている。現在、立ち退きに応じない13世帯約60人が生活をしているが、近い将来、強制収用という法的措置に直面する。
石木ダムは、川棚川の治水と佐世保市の水不足解消などを目的に1975年に事業採択された多目的ダム。総事業費は285億円で、2013年度末までの事業費ベースの進捗(しんちょく)率は52%、用地取得率は約80%にとどまっている。
県は16年度の完成を目指しているが、建設に反対する13世帯の農地や住宅地など約15万平方メートルが未買収で、本体工事の着工には至っていない。
◇
佐世保市では、1994年の大渇水で264日間に及ぶ給水制限が続き、2005年は8日間、07年も160日間の給水制限が行われた。同市は「水源を確保して安定供給を達成しなければ、今後も将来にわたって渇水のリスクを負い続けなければならない」と理解を求める。
一方、反対派は同市の水需要は人口減少とともに減少しているとして、水源は足りていると主張。ダムが建設された場合、市民の水道料金が1世帯あたり年間4000円増えることを挙げて、「必要性のないダムのために住んでいた人を追い出し、市民に負担を強いるのは間違っている」と訴えている。
40年という年月がたっても、双方とも歩み寄る機運はない。
◇
県は昨年9月、未買収用地のうち、工事に必要な道路用地など約5400平方メートルについて、強制的に所有権を移転させるための裁決申請を行った。県収用委員会は公開で審理し、今年中に用地の補償額や明け渡し期限を決める。
また、昨年11月には4世帯の家屋を含む約3万平方メートルについても収用手続きを始めており、今年11月までに地権者の同意が得られなければ、家屋についても裁決申請を行う方針だ。
収用委は、事業の是非について審議する場ではなく、書類などに重大な欠陥がない限り裁決が出される。地権者が期限までに明け渡しに応じなければ、家屋まで強制収用される事態が起きる。
残りの家屋を含む用地についても、県は17年9月までに裁決申請を行う見通しで、地権者側にとって大きな転機が近づいている。
現時点で地権者側は法的手段で争う意向はなく、「県が何をしようとも死んでもここを離れるつもりはない」との姿勢を崩さない。
一方、県側は「今後の生活再建に向けた話し合いに応じてほしい」と呼びかけるが、ダム事業の見直しに応じるつもりはない。両者に残された解決までの時間は多くない。
〈石木ダム事業の経緯〉
1972年 県が予備調査を開始
75年 国が事業採択
82年 県が強制測量を行い、機動隊と住民が衝突
2009年 県と佐世保市が国に事業認定を申請
13年 国が事業認定を告示
14年 県と佐世保市が一部用地の農地について裁決申請
今年 県と佐世保市が4世帯の家屋を含む一部用地について裁決申請か?
5月5日の東京新聞に、昨年お亡くなりになった宇沢弘文氏と、拓殖大の関良基准教授の共同編著による「社会的共通資本としての森」(東京大学出版会)の紹介記事が掲載されました。
下記の本のHPに書かれているように、この本は、
「森林環境と人間社会による森の利用は,濃密な相互作用を経て,各地域固有の文化とコモンズを形成してきた.森林資源の略奪を批判し,森林は自然環境を持続させ,社会と文化に安定をもたらし,社会的共通資本のネットワークの重要な一環であることを多面的に考察」したものです。
宇沢氏が病床のところ、序章を書かれ、各分野の専門家がそれぞれ執筆されています。
河川の関係では、第I部「森は緑のダム」の第1章「森林の保水力と緑のダム機能を蔵治光一郎氏・五名美江氏、第2章「森林回復による治水機能の向上はダムに優る」を関 良基氏が、第3章「横川山の入会の変遷と「流域コモンズ」の可能性」を保屋野初子氏が書かれています。
この記事の終わりに書かれているように、この本は「森の保水力を無視してダム建設を強行しようとする国土交通省の姿勢に対する憤りが、編集の直接のきっかけだった。森や川は国有、私有を問わず、自然の機能を損なってまで金もうけのために開発してはならない。」
という宇沢氏の思いを込めた本です。
是非、お読みください。
経済学者・故宇沢弘文氏 晩年の思い込め 編集本 (東京新聞 2015年5月5日)
共通資本の森守って 金もうけ開発ダメ
昨年9月に亡くなった経済学者の宇沢弘文氏が、最晩年に編集した「社会的共通資本としての森」(東京大学出版会)が先月出版された。ノーベル経済学賞候補として名前が挙がり、環境問題でも積極的に発言した宇沢氏。森が育むさまざまな価値が、公正に配分される社会の実現を目指して同書を編んだ。
二〇一〇年十二月に編集作業が始まった。宇沢氏は会議に先立ち、共同編者の拓殖大の関良基准教授(森林政策)に向かい、「いよいよ人生の最後の局面に入ったとの感が否めない。森の中にあるさまざまな資源や、森の果たす宗教的、歴史的な役割まで、できるだけ広範に盛り込みたい」と編集の意図を伝えている。
その言葉通り、同書では、森の保水・治水機能や地域住民の森利用の可能性、森が育んできた思想や文化といった多様な側面について、各分野の専門家による分析が行われている。
宇沢氏は論文で、森や大気、河川の自然環境と、教育や医療サービスなどを、社会の共通資本と位置付けている。その上で、森の長期安定化のための国際的な枠組みを提案する。
木の伐採や二酸化炭素排出に「炭素税」をかけ、各国は一定比率を「大気安定化国際基金」に拠出する。基金を国民所得などに応じて各国に分配し、それぞれが森育成や再生可能エネルギー開発を進める構想だ。
宇沢氏は一一年の東日本大震災直後に脳梗塞で倒れた。そのため論文は、書きかけの原稿に、発表済みの論文の主要部分を盛り込む形でまとめていった。
関氏は、宇沢氏の思いをこう語る。「森の保水力を無視してダム建設を強行しようとする国土交通省の姿勢に対する憤りが、編集の直接のきっかけだった。森や川は国有、私有を問わず、自然の機能を損なってまで金もうけのために開発してはならない。これがこの本に込めたメッセージだ」
Social Common Capital 社会的共通資本としての森
宇沢 弘文 編, 関 良基 編
発売日:2015年04月上旬, 判型:A5, 344頁,税込5832円/本体5400円
内容紹介
森林環境と人間社会による森の利用は,濃密な相互作用を経て,各地域固有の文化とコモンズを形成してきた.森林資源の略奪を批判し,森林は自然環境を持続させ,社会と文化に安定をもたらし,社会的共通資本のネットワークの重要な一環であることを多面的に考察する.
主要目次
はしがき プレビュー(宇沢弘文・関 良基)
序 章 社会的共通資本と森林コモンズの経済理論(宇沢弘文)
第I部 森は緑のダム
第1章 森林の保水力と緑のダム機能(蔵治光一郎・五名美江)
第2章 森林回復による治水機能の向上はダムに優る(関 良基)
第3章 横川山の入会の変遷と「流域コモンズ」の可能性(保屋野初子)
第II部 森を育む思想と文化 第4章 コモンズとしての森林――学校林の歴史に宿るエコロジー思想(三俣学)
第5章 地域と森林の時間軸・空間軸――流域圏と農山村の遺産(山本美穂)
第6章 平和の森――先住民族プナンのイニシアティブ(金沢謙太郎)
第7章 イノシシと日本人の関係史――自然領域と人間領域の適正な配分(小寺祐二)
第III部 森を支える制度 第8章 制度資本としてのコモンズ――政令指定都市の中の森林・林業を事例として(池田寛二)
第9章 自然災害リスク管理と保安林制度のあり方――オーストリア・チロル州の保安林改良事業と野渓監護事業を中心に(古井戸宏通)
第10章 林業労働者のキャリア形成支援と「緑の雇用」制度(興梠克久)
終 章 森林を社会的共通資本とするために(関良基)
あとがき(関 良基)
4月22日の朝日新聞全国版、23日の長崎新聞、25日の東京新聞全国版にアウトドア衣料の会社のパタゴニアが石木ダム問題の意見広告を掲載しました。
「失うものは美しいもの 水は足りています ダムは ほんとうに必要か皆で考えましょう」
石木ダム問題への関心を高めて、何としても強制収用を阻止したいと思います。
アウトドア衣料の会社のパタゴニアと石木川まもり隊の共同プロジェクトで「ダムはほんとうに必要か皆で考えましょう」と訴えながら走るラッピングバスが走行開始しました。 イラストは石木ダム予定地に住むいしまるまずみさんの作品で、これから1年間佐世保の町を走ります。
(「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」のブログhttp://yambasaitama.blog38.fc2.com/ より)


実は佐世保では税金を使って「石木ダム建設は佐世保市民の願い」という推進派のラッピングバスが前から走っています。 ↓
◇虚構の民意 – 石木川まもり隊 –
http://is.gd/kS9bGb

今回のラッピングバスはパタゴニアの助成金のおかげです。 パタゴニアが石木川の反対運動をしている方たちと石木川まもり隊の支援を発表して、外国人特派員協会で記者会見を開いたり、長崎の地元紙や朝日新聞、東京新聞などに前面の意見広告を出してくれたり、次々と市民だけでは出来ない活動の実現を支援してくれています。
石木ダム予定地でのパタゴニアの社員研修の様子がブログにアップされています。 まるで自分も参加しているような報告です。 ダムが出来る予定地の小さな川の石木川の写真もご覧ください。
◇パタゴニア、こうばるを全身で体感! – 石木川まもり隊 –
http://is.gd/QhpqQt