水源連:Japan River Keeper Alliance

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石木ダム計画、県の立ち入り調査阻止 地権者ら抗議「話し合いを」 (長崎県)

2015年1月14日
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何とも腹立たしい話ですが、石木ダム計画で長崎県が、4世帯の家屋・土地の強制収用を可能にする裁決申請のため、立ち入り調査を昨日(1月13日)強行しようとしました。地権者や支援者たちが抗議して阻止しました。西日本新聞と読売新聞の記事をお送りします。
昨日の抗議行動は石木川まもり隊のブログ http://blog.goo.ne.jp/hotaru392011 をご覧ください。
石木ダム計画、県の立ち入り調査阻止 地権者ら抗議「話し合いを」 (長崎県)
(西日本新聞長崎版 2015年01月14日) http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/138990
(写真)立ち入り調査に来た県職員(右の2人)に「ダムはいらない」「まず話し合いを」と抗議する地権者や支援者たち
立ち入り調査に来た県職員(右の2人)に「ダムはいらない」「まず話し合いを」と抗議する地権者や支援者たち

県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム事業をめぐり、県は13日、建設予定地の収用裁決申請に必要な調査や測量のため反対地権者が所有する家屋や農地に立ち入ろうとしたが、地権者や支援者たちの抗議を受けてこの日の調査を見送った。県は16日までの調査を通知しており「引き続きお願いする」としている。

調査は土地の強制収用を可能にする裁決申請のための手続きで、今回は4世帯の家屋・土地と2世帯の土地で、対象面積は計3万800平方メートル。
県職員や測量業者ら約40人は再三、複数のルートから予定地付近を訪れ「地権者の不利益にならないよう調査が必要」「事業認定されたことでダムの必要性は認められている」と調査に応じるよう求めたが、各所で地権者たちが阻止。
地権者たちは「私たちが納得できる話し合いをするのが先だ」「平行線だからといって強行するのか」と口々に訴えた。
家屋が調査対象となっている岩下秀男さん(67)は「必要のないダムは税金の無駄遣いでしかない」。帰省していた娘の甲斐久仁子さん(34)も幼い子どもたちと抗議行動に加わり「人として、古里を思う心はみんな分かり合えるものだと思う。石木ダム問題を広く知ってもらうことから始めたい」と話した。
県は昨年9月、付け替え道路工事に必要な別の4世帯の農地について裁決申請し、現在、収用委員会が審理している。

県、立ち入り調査できず 石木ダム 阻止行動で

(読売新聞長崎版 2015年01月14日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150113-OYTNT50071.html
(写真)立ち入り調査に訪れた県職員ら(手前)を拒む地権者ら

県と佐世保市が計画している川棚町の石木ダム建設事業で、県は13日、ダム予定地にある反対地権者の所有地への立ち入り調査を行おうとしたが、地権者や支援者の阻止行動を受け、この日の着手を断念した。

調査は未買収用地の強制収用に向けた手続きの一環で、補償額を算定するための家屋調査や測量を行うもの。県は実施期間を16日までと設定しているが、地権者側は阻止行動を続ける方針。
今回、対象となっているのは、未買収となっている反対地権者13世帯の住宅地や農地など約15万平方メートルのうち、昨年11月に収用手続きが開始された5世帯の約3万平方メートル。対象には4世帯の家屋も含まれる。
13日は午前9時半に県職員や委託業者ら約40人が現地に到着。地権者や支援者ら約60人が「強制収用は許さない」などと書かれた横断幕や看板を掲げて道路を遮り、立ち入りを拒んだ。
県石木ダム建設事務所の古川章所長が「適正な調査が行えなければ皆さんの不利益となる。協力をお願いします」と理解を求め、地権者側が「土地は売らない。まずは話し合いをしなさい」などと答える押し問答が15分ほど続いた。その後も県側は対象地に入ろうと複数回試みたが、いずれも地権者らに阻止された。
ダム事業を巡っては、国が2013年9月、土地収用法に基づいて事業認定し、県は用地の強制収用に向けた手続きが可能となった。今回の用地に先だって収用手続きが進んでいた農地5400平方メートルについても、県は昨年7月に立ち入り調査を試みたが、地権者側の阻止行動で断念。県は1980年に国土調査法に基づいて作成された図面を代用して、昨年9月に所有権移転に向けた裁決申請を行っており、今回も同様の経過をたどる可能性がある。
古川所長は「今回の対象には家屋が含まれており、調査が行えなければ外観などから最低限の推定しかできず、補償額の算定で地権者が不利益を被る」と主張。一方、今回の対象用地の家屋で妻と暮らしている岩下秀男さん(67)は「利水、治水のどちらの面でもダムは必要ない。このままここに住み続ける」と語気を強めた。

反対派が測量調査を阻止

(長崎新聞 2014年1月14日)  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150114-00010004-nagasaki-l42
(写真)県側の立ち入りを拒否する調査対象の地権者、岩永さん(中央)=13日午前11時2分、川棚町
反対派が測量調査を阻止
長崎県が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業で、県は13日、反対地権者13世帯のうち4世帯の家屋と土地などの収用裁決申請に向け、測量調査のため現地に立ち入ろうとしたが、地権者ら反対派約70人から阻止され、この日は調査を見送った。
県が同事業で家屋の強制収用に向けて具体的な行動を取るのは初めて。調査は16日までの予定で、14日も立ち入りを試みる。
調査対象は4世帯の家屋、土地のほか農地などを含む計3万平方メートルで、地権者は6人。県は昨年11月25日、対象地の収用裁決申請に向けた準備に着手。1年後を期限に県収用委員会に裁決申請できる。調査は申請に必要な土地調書と物件調書の作成に必要な手続き。
午前9時半から反対派が対象地に出入りできる3カ所で待機。県石木ダム建設事務所(同町)の古川章所長が家屋鑑定コンサルタント、測量業者ら約40人とともに対象地に近づくと、地権者の代表格、岩下和雄さん(67)が「ダムには反対。測量は阻止する」と声を上げた。古川所長は調査への協力を求めたが、対象地内に農地を所有する岩永正さん(63)が「何回来ても絶対に(土地は)売らない」と突っぱねた。
県はこの日、2ルートから計5回、対象地への立ち入りを試みたが、いずれも反対派が阻止した。
県側はこの日のやりとりで、対象の地権者6人全員が拒否の意思を文書で提出すれば調査を中止する可能性も示唆。地権者側は「調査をやめるのならば14日に文書を提出する」としている。

石木ダム建設:測量調査、地権者が立ち入りを阻止 強制収用裁決申請へ 期間は16日まで /長崎

(毎日新聞長崎版 2015年01月14日)http://mainichi.jp/area/nagasaki/news/20150114ddlk42010533000c.html
県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダム建設事業を巡り、県は13日、反対地権者4世帯の家屋や土地などの強制収用裁決申請に向け、測量を目的とした立ち入り調査を試みたが、地権者らに阻止され、この日の調査を断念した。県は16日までを調査期間としている。
13日午前9時半ごろ、県石木ダム建設事務所の古川章所長ら職員と測量業者ら約40人が建設予定地に到着すると、地権者や支援者ら約60人は横断幕や看板を掲げ、調査対象の土地に通じる道を封鎖。「帰れ」「土地を奪うな」などと気勢を上げた。
古川所長は「ご協力お願いします」などと同意を求めたが、地権者は「県知事は話し合いに応じよ」などと述べ、阻止した。
立ち入り調査は、裁決申請に必要な調書を作成するために必要で、対象は地権者4世帯の家屋を含む用地約3万平方メートル。県は昨年7月にも他の地権者の農地約5400平方メートルの立ち入り調査を試みたが阻止され、断念していた。
古川所長は「測量調査への協力を要請し続けたい」と話すが、地権者の岩永正さん(63)は「うちの水田は前の代から受け継いできた土地。前々から売らんと言い続けている」と県の対応に憤っている。【梅田啓祐】

原発・リニアなどの企画紹介 150208

2015年1月8日
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2015年2月8日時点で公共事業改革市民会議MLに紹介された企画。

【東京】「原発再稼働の是非を問う」

議員と市民の院内集会
グレゴリー・ヤツコ氏 国会議員多数
2015年2月12日(木) 12:30~ 参議院議員会館1F 参加費1200円
詳細   http://www.page.sannet.ne.jp/stopthemonju/20150212.pdf

 【大阪】「2.14緊急集会 原発再稼働と原子力規制を考える」

脱原発政策実現全国ネットワーク 関西・福井ブロック
グレゴリー・ヤツコ氏 / 国会報告 阿部知子氏
2015年2月14日(土) 13:00~ PLP会館 大阪環状線天満 参加費1500円
http://www.page.sannet.ne.jp/stopthemonju/20150214tirasi.pdf

【大阪】「とめよう 高浜原発再稼働!」

2015年3月8日(日) 10:00~ 大阪市立北区民センター 映画
2015年3月8日(日) 12:40~ 扇町公園 集会・デモ
さよなら原発関西アクション
詳細  http://www.page.sannet.ne.jp/stopthemonju/38tirasi.pdf

【岩内】※下記札幌と同趣旨

2015年3月8日(日) 午後 北海道岩内町
詳細後日

 【札幌】「泊原発緊急事態! その時、私たちはどうなる?」上岡直見

泊原発の廃炉をめざす会
ベクレルフリー北海道 / 脱原発をめざす北電株主の会 / Shut泊
2015年3月9日(月) 18:00~ かでる2・7   http://homepage.kaderu27.or.jp/
  詳細  http://homepage3.nifty.com/sustran-japan/datafile/tomarihairo.pdf

 【仙台】「国連防災世界会議パブリック・フォーラム」

「原子力防災と自治体の役割~その教訓と課題~」
脱原発をめざす首長会議     同時通訳有
2015年3月14日(土) 17:30~19:30
TKPガーデンシティ仙台勾当台  http://www.stcb.or.jp/facilities/facilities.php?id=57

上原公子事務局長 / 馬場有氏 浪江町長 / 桜井勝延氏 南相馬市長 /村上達也氏 前東海村長 /アンドレ・ヴェルモレル氏 前フランス・ビドン町長 / 上岡直見
詳細 http://www.bosai-sendai.jp/pf/?c=10031

パブリックフォーラム一覧 http://www.bosai-sendai.jp/public_list.html

3月14日 川のための国際行動デーに上映会を!

2015年1月7日
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DAMNAITON 上映会を企画しよう!

3月14日は「川のための国際行動デー」です。
水源連団体会員企画の場合は、特別割引とパタゴニア支社からの2万円補助により
負担金は2万円でOK!

パタゴニア日本支社と、ユナイテッドピープルからの呼びかけ

3月14日の「川のための国際行動デー(International Day of Action for Rivers)」にあわせ、河川と周辺環境における問題の理解と関心をより深め、さらに行動につなげていただくことを目標に、問題解決に取り組む個人・団体向けに、映画「ダムネーション」市民上映会の開催を呼びかけます。

「川のための国際行動デー」は、世界中で起こる川やダムにまつわる問題の解決に向け、地球規模で学び、考え、そして行動を起こす日として、今年で18年目を迎えます。ぜひグローバルな動きに合わせてこの日本でも3月14日に映画『ダムネーション』を上映して行動しませんか?

 パタゴニア日本支社長である辻井隆行氏メッセージ:

アメリカでは、客観的に見て存在価値の低いダムが次々と撤去され、2014年だけでも、72基が解体あるいは爆破されたとの発表もありました。翻って日本では、ダム撤去の動きは始まったばかりです。九州の球磨川にある荒瀬ダムは、約60年もの間、生活環境、漁業、観光などさまざまな分野で地域の方々を苦しめてきました。2012年にダム撤去作業が開始されて以来、支流は蘇り、護岸は緑で覆われ、河口で採取される青海苔は生命力を取り返しました。私たちは、新たなダムの建設計画に着手する前に、まず既存のダムについて、経済的、文化的、環境的、景観的観点から、その必要性を客観的に評価し、莫大な建設費用に私たちの大切な税金を投じる価値があるかを冷静に検討すべきだと考えています。同時に、私自身は、どこかで誰かが利益を享受するために、別の場所にいる誰かが犠牲になる、という構造は終わりを迎えるべきだと強く感じています。パタゴニア日本支社は、これまで以上に、不必要なダムに関する撤去活動や建設反対活動を支援して参ります。

 この3月14日に市民上映会の開催をご希望される場合、通常の開催時とは異なる以下の条件にてお申込みいただくことができます。

※通常上映費は、50,000円/日(税別)または参加者x500円(税別)どちらかが高い金額です。

●3月14日「川のための国際行動デー」上映料金

40,000円(税別)/日または、参加者×500円(税別)どちらかが高い金額
※送料全国一律510円。

※水源連(水源開発問題全国連絡会)団会員については、3月14日前後1週間に上映会を催す場合は、パタゴニアからの助成金20,000円(税込)を受けることができます。お申込時に、対象となる方は通信欄にご明記ください。

▼詳細・お申込み▼

http://damnationfilm.net/314day/

1月11日から日本の川の流れを変える! 映画『ダムネーション』の市民上映会 

2015年1月4日
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 1月.11日から日本の川の流れを変える!   映画『ダムネーション』を上映して、一緒に「自由な川の日」を盛り上げよう!!http://damnationfilm.net/riverday/
『ダムネーション』の制作を支えたパタゴニア日本支社と、同作品を日本に配給するユナイテッドピープルは、日本でも川の自由な流れが取り戻される よう、一層アクションが起きていくことを願って、1 月 11 日(日)を新たな「自由な川の日」とすることにしました。

そこで 1 月 11 日から映画『ダムネーション』の市民上映会を解禁します!
ぜひ日本中で、この「自由な 川の 日」 に、日本におけるダム問題や、あるいは、より広く「私たちは自然とどう付き合っていくべきなのか」などを考えるきっかけとなる上映運動を一緒に起こしましょう。
※1月12日(月)以後も、いつでも上映可能です。 詳しくはこちら  http://damnationfilm.net/riverday/  をご覧ください。

2月以降の市民上映会
2015/02/01[ 東京都 ] 『ダムネーション』上映会@八ッ場あしたの会

2015/02/11[ 東京都 ] 映画『DAMNATION(ダムネーション)』自主上映会 イノベーションサロンZ 2月11日(水) ①10時~ ②14時~ ③18時~ @渋谷

2015/02/14[ 千葉県 ] ダムネーション自主上映会(@佐倉市おもてなしラボ)

2015/02/21[ 沖縄県 ] 沖縄「ダムネーション」市民上映会

2015/02/22[ 東京都 ] ダムネーション上映会 ~防潮堤問題とともに~

≪市民上映開催地≫

新潟県三条市 エコライフを楽しむ会、happy nature、燕三条ダムを愛でる会 http://goo.gl/Zbs3Ay
愛知県豊橋市 設楽ダムの建設中止を求める会 http://goo.gl/0oB0sh
静岡県浜松市 トランジションジャパン、トランジション浜松 映画「ダムネーション」自由な川の日、全国一斉上映会 in 浜松
東京都あきる野市 ダムネーション上映実行委員会 http://goo.gl/NX3llz
和歌山県田辺市 CABELO http://goo.gl/Uc63mN
大分県中津市 くぬぎ舎 http://goo.gl/AiCwKT
新潟県上越市 NGOモノサシ http://goo.gl/LlhZvb
徳島県 NPO法人川塾 http://goo.gl/XlxCR8
群馬県前橋市 八ッ場あしたの会、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 http://goo.gl/Ho7XI9
滋賀県 ノラノコ(BASE FOR REST) http://goo.gl/KmHsDb
群馬県高崎市 STOP 八ッ場ダム・市民ネット http://goo.gl/CKhcaY
山形県新庄市 最上小国川の清流を守る会 DAMNATIONダムネーション上映会 新庄・鶴岡
大阪府茨木市 DAMNATION上映会@茨木市 http://goo.gl/oLvSRC
山梨県北杜市明野町 グリーン経済および開発と人口の原理研究所 明野総合会館 1:30-3:30 090-9243-9186
神奈川県鎌倉市 ダムネーション鎌倉上映実行委員会 http://goo.gl/9GJ8IK

●「ダムネーション」 SCREEN 上映予定はこちら
 http://damnationfilm.net/screen/

子供の声消えた 産業衰退過疎止まらず(中止になった細川内ダムの計画地)

2015年1月4日
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2000年に中止が決まった徳島県の直轄ダム「細川内ダム」の計画地「旧木頭村」について読売の記事の続きです。

多くの山村は過疎化の問題に直面していますが、もし細川内ダムができていたら、旧木頭村は過疎化が一層進んでいたのではないでしょうか。
元村長の藤田恵さん(水源連顧問)のお話しも紹介されています。
子供の声消えた
(読売新聞 2015年01月04日)http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO012651/20150104-OYTAT50005.html
 
産業衰退過疎止まらず
「メーン」「ドォー」
元日の朝、徳島県旧木頭村(きとうそん)(現那賀(なか)町)の体育館。小学生たちの剣道場「木頭錬心館」の初げいこは、帰省したOBらも加わり、約40人でにぎわった。
広場が少ない山あいでもできる剣道は、戦前から盛んだった。村民らが平家の落人の血を引いているからだとの伝承まであり、「村技」と言われてきた。
特産のユズを加工販売する会社「黄金の村」を作った藤田恭嗣(やすし)(41)も小4の頃から通った。当時は約30人が練習に励み、県大会の団体戦で優勝を重ねた。
だが、今では6人に減り、チームを組むことさえ難しい。「村で子供の声をほとんど聞かなくなった。寂しいもんです」と、約40年間ボランティアで指導してきた岡田豊(60)は嘆く。
深刻な過疎は、若年層がやせ細った、極めていびつな人口構成に表れている。
村の面積の98%は山林。人口が現在の3倍の4115人とピークだった1965年当時、基幹産業の林業は、国の「拡大造林」政策で活況に沸いた。補助金を受け、建材やパルプ用の木材を大量に切り出し、スギやヒノキの苗を植える。それでも木材は不足し、どんどん値上がりした。
林業に従事した元村議の田村好(よしみ)(84)は、当時の様子を鮮明に覚えている。
どの山も人手が足りず、他県から出稼ぎが押し寄せた。宿舎となる旅館は10軒ほどあり、映画館もあった。父が営む商店では酒やたばこが飛ぶように売れ、「今年の売り上げは400万円」と聞かされた。サラリーマンの平均年収が40万円余りだった頃の話だ。
田村は振り返る。「徳島市に出て『木頭から来た』と言えば、なんぼでもお金を貸してくれた。木頭は、金持ちの代名詞やった」
伐採された木を引き取る業者には当時、木材引取税が課せられた。村が得た税収は63年度、1018万円で、歳入全体の1割を占めた。村の財政は潤った。
64年の木材輸入の全面自由化で、安価な「外材」が流通し始め、時代の時計はカチリと音を立てた。
76年秋、台風の豪雨で6人が死亡する大規模な山崩れが起き、復旧工事が急ピッチで始まった。4年後、林業からの転職が進んだ建設業の就業人口は林業を追い越した。その結果、国が村内で計画する「細川内(ほそごうち)ダム」への期待も高まったのだ。
だが、建設業は今、公共事業の削減で苦境と向き合う。木頭にある5業者の受注額は、98年度の17億円から、2012年度には7億円に激減。県建設業協会那賀支部参事の川原武志(69)は「明るい話題は何ひとつない」とこぼす。
「平成の大合併」も、大きな変化をもたらした。
村は05年、那賀川下流の4町村と合併した。役場の本庁がある最下流の旧鷲敷(わじき)町まで、車で1時間。「木頭支所」は地域振興室だけになり、かつて60人以上いた職員は10人に減った。
副支所長の北岡仁志(56)は「決定権もマンパワーもなくなり、地域のことを地域で決められなくなった」と複雑な心境を明かす。
木頭にある2小学校と1中学校の児童・生徒数は現在、57人。唯一の高校分校は05年春に廃校となり、今年、中学を卒業する6人全員が木頭を出ていく。
産業が廃れ、人材も減る現状に、かつて「ダムに頼らない村づくり」を進めた元村長の藤田恵(75)は「たった一人でいい。『村を活気づけたい』とがむしゃらになれる人間がいれば、流れは変わるはず」と話した。そして、こう続けた。
「過疎化は何十年も前から続いてきた、この国の構造的な問題。私らがじたばたしても、変わらんかった。止めるんは、ダムよりずっと難しかった」(敬称略)
少子化により、日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じた。地方では、大都市圏への転出が人口減に拍車をかけている。
民間の研究機関「日本創成会議」は昨年5月、2010~40年の30年間に、全国の半数の市区町村で、出産の中心世代となる20、30歳代の女性が半分以下に減るとの推計を発表。これらの自治体を「消滅可能性都市」と呼んだ。人口流出の要因として、働く場が少ないことを挙げた。
那賀町の若年女性数は、522人(10年)から85人に減ると推計され、減少率は83.7%。四国で最も高く、全国でも13位だった。全国ワースト1は、群馬県南牧(なんもく)村の89.9%だった。
(写真)木頭錬心館の初げいこで黙想する子供ら。普段は6人の道場も、大勢が帰省してにぎわった(1日)

(写真) 山あいを流れる那賀川に沿って点在する旧木頭村の集落(昨年12月、本社ヘリから) 記事へ(写真)山あいを流れる那賀川に沿って点在する旧木頭村の集落(昨年12月、本社ヘリから)

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