水源連:Japan River Keeper Alliance

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昨年7月の西日本豪雨の小田川氾濫の真因と責任

2019年8月13日
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昨年7月の西日本豪雨では高梁川支流・小田川の大氾濫により、岡山県倉敷市真備町では51人の命が奪われました。
水位が高まった高梁川が支流の小田川の流れをせき止める「バックウォーター現象」が起き、小田川の水位が上昇して小田川で決壊・溢水が起きました。
高梁川の支川である小田川は勾配が緩く、氾濫が起きやすいことから、小田川の合流点を高梁川の下流側に付け替える計画が半世紀前からありましたが、ダム事業(貯水池建設事業)と一体の計画(高梁川総合開発事業)であったため、難航し、2002年に中止が決定しました。その後、小田川合流点の付け替えのみを進める事業の計画が2010年に策定され、ようやく動き出そうとしていた矢先での西日本豪雨でした。
小田川と高梁川の合流点付近は1世紀近く前に大改修工事が行われて、現在の河道になりました。改修前は高梁川が西高梁川と東高梁川に分かれていて、その分岐点に小田川が合流していて、西高梁川につながっていたので、小田川は現状より勾配があったと推測されます。1925年に完成した改修で西高梁川と東高梁川は一つの河川になりました。旧・西高梁川上流部の河道は柳井原貯水池になり、それにより、小田川は旧・東高梁川を回って流れるように付け替えられました。これにより、小田川の緩い河床勾配のベースがつくられました。柳井原貯水池をつくるための小田川の付け替えでしたが、貯水池は水漏れがひどく、当時は漏水を防止する技術が乏しく、貯水池として使われることはありませんでした。


小田川と高梁川との合流地点を付け替える事業(2019年6月16日着工)

小田川と高梁川との合流点を高梁川の下流側に付け替える事業が今年6月からようやく始まりした。この付け替えが早く行われていれば、合流点の水位が4.2mも下がるので、昨年の豪雨で、小田川が氾濫しなかった可能性が高いと考えられます。
問題はそれだけではありません。
今回、小田川について昭和46年の資料「高梁川柳井原堰建設事業計画書」を入手しました。
この計画書を見ると、小田川の付け替えが早期に行われるものとして付け替えを前提として、小田川の計画堤防高を低くする改修計画がつくられていました。下記の通りです。
下記の図-7には「現状計画堤防高」のほかに、それよりかなり低い「切替計画堤防高」が記入されています。この「切替計画堤防高」が当時の新しい計画堤防高です。
このことが大変重要な問題です。
計画堤防高を達成できるように堤防高を嵩上げする築堤工事が行われていくものですが、小田川では達成すべき計画堤防高を低くしてしまったため、築堤工事がきちんと行われないことになり、そのように堤防高不足の状態がずっと続いてきました。
小田川の付け替えを前提とするならば、早期に実現しなければならないにもかかわらず、付け替えを長年あいまいな状態に放置してきたために、小田川の改修がきちんと行われず、その結果として昨年7月、小田川で決壊・溢水が起き、大水害になりました。
小田川の付け替えを前提とした改修計画をつくっておきながら、小田川の付け替え工事を半世紀近くも先送りしてきた国土交通省の責任が厳しく問われるべきだと思います。

【補論】 ダム放流の影響について

 

高梁川水系のダムで、西日本豪雨との関係を検討すべきダムは右図に示す4基のダムです。

各ダムの諸データを次ページの表に示します。

(IWJ 2018年7月23日)

このうち、河本ダムは岡山県の多目的ダム、新成羽川ダム、田原ダム、黒鳥ダムは中国電力のダムです。新成羽川ダムはダム式発電と揚水式発電を兼ねた混合揚水式で、田原ダムを下池として揚水式発電も行っていますが、田原ダムの容量は新成羽川ダムに比べてはるかに小さいので、揚水式発電は一部だけです。

黒鳥ダムは発電ダムの下流に設置される逆調整池ダムです。発電ダムの放流は時間変化が大きいので、それを一定量の放流にするためのもので、その放流で同時に発電も行います。逆調整池ダムは貯水容量が大きくありません。

新成羽川ダムは総貯水容量が12750万㎥もあり、その放流の影響を検討する必要がありますが、中国電力という私企業のダムであるため、その放流量等のデータの入手が容易ではなく、現在、データの入手に努めている段階にあります。

河本ダムについてはデータを入手できましたので、流入量と放流量の変化をグラフ化しました。下図のとおりです。河本ダムは本豪雨で満水になり、洪水調節機能を失いました。その放流が小田川の氾濫に影響したかどうかについては今後検討を進めたいと思います。

雨畑ダム(山梨)堆砂率93%、全国の中規模以上でトップ 堆砂除去要請へ 山梨知事、日軽金に

2019年8月11日
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駿河湾サクラエビの深刻な不漁との関係で浮き彫りになった日本軽金属・雨畑ダム(富士川水系)の堆砂問題に関する記事を2点珪砂します。


雨畑ダム(山梨)堆砂率93%、全国の中規模以上でトップ

(静岡新聞2019/8/7 07:42)https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/666723.html

ダム堆砂率ランキング

(写真)総貯水容量500万立方メートル以上のダムの中で堆砂率が全国1位であることが判明した雨畑ダム=8月上旬、山梨県早川町(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)

駿河湾サクラエビの不漁を受け、静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)の堆砂率が2016年度、93・36%に上り、総貯水量500万立方メートル以上の全国のダム約500カ所で最も堆砂が深刻化していることが6日までに、国土交通省公表のデータを分析した静岡新聞社の調べで明らかになった。
発電用の貯水池の役割を果たすダム湖の極端な容量減少で、導水管の取水口も土砂に覆われつつある。
駿河湾に流れ込む濁り水の対策が極めて困難になっている状況が改めて浮き彫りになった。
雨畑ダムの堆砂は、ダムを管理する日本軽金属が除去を始めた1977年度当時は22番目だったが対策が追い付かず、約40年間で急激に進んだ。
中規模以上のダムで同年度に堆砂率が10位以内だったダムのうち、9割を超えたのは雨畑ダムだけだった。
2位は北海道電力保有の岩知志ダムで88・35%、3位は中部電力の平岡ダムで85・23%と、上位には電力会社が管理するダムが目立った。
雨畑ダムは67年完成で、堆砂率10位以内で最も新しいダム。

雨畑ダム、堆砂除去要請へ 山梨知事、日軽金に
(2019/8/8 07:18)https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/667172.html
駿河湾サクラエビの深刻な不漁を受け、静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(同県早川町)の堆砂問題について、同県の長崎幸太郎知事は7日の定例記者会見で、日本軽金属(東京都)に対し、堆砂の除去を行うよう要請する方針を明らかにした。
ダム湖を埋める土砂や泥は、水力発電用の導水管を経て、同社蒲原製造所(静岡市清水区)の放水路からサクラエビの産卵場周辺の駿河湾に流れ込む濁水の原因になっているとみられている。
会見した長崎知事によると、堆砂除去の要請方針はすでに県庁内で意思決定をしていて、国と相談した上で正式に要請する時期を決めるという。
一方、雨畑ダム下流のニッケイ工業の砂利プラント近くで7月、コンクリートくずなどの不法投棄が見つかった問題については「期限を決め可及的速やかに撤去を求めていく」と述べ、刑事告発の明言はしなかった。
同社の社長が元山梨県治水課長であることについては「承知はしているが、行政当局への働きかけは確認されていない。変な疑念が生じないようにしたい」などと述べた。

地球温暖化 増える豪雨に備え 過去データより将来予測重視 国交省検討会、「温暖化前提の治水」提言

2019年8月2日
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7月31日に国土交通省で「第5回 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」が開かれました。この会議でまとめられた提言の内容を毎日新聞が詳しく報じています。

この技術検討会の資料は国土交通省のHPに掲載されています。、
「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会(令和元年7月31日)配布資料」http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai05kai/index.html

この提言は治水計画のあり方を根本から変えていこうというものです。
すなわち、「気候変動の予測精度等の不確実性が存在するが、現在の科学的知見を最大限活用したできる限り定量的な影響の評価を用いて、治水計画の立案にあたり、実績の降雨を活用した手法から、気候変動により予測される将来の降雨を活用する方法に転換する」というものです。
しかし、気候変動による将来の降雨変化を予測することが本当にどこまでできるのでしょうか。所詮は予測モデルによる計算でしかなく、そのモデルの作り方で予測値は大きく変わってきます。
そして、CO2の増加で地球温暖化が進み、気候変動が進行しているという考え方そのものにも異論が出されています。
参考のため、冨永靖德氏(お茶の水大学名誉教授)の見解を紹介しておきます。


冨永靖德氏(お茶の水大学名誉教授)の温暖化論争のまとめ
   IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)
◆IPCCの温暖化論:
・化石燃料を消費することに伴って、大気中のCO2が増える
・CO2の増加は地球温暖化をもたらす
・地球温暖化はさまざまな害悪をもたらす
◆良心的な科学者の考え方:
・気候変動の原因はCO2だけでなく、太陽活勣が重要である。これは、自然現象であるから制御できない。(商売にはならない)
・CO2による温暖化と太陽活動の変化による寒冷化は打ち消し合い、
今後の気温は50~IOO年にわたってほぼ横ぱいか寒冷化する可能性が大きい
*太陽活勣の低下⇒宇宙線の増加⇒雲の増加⇒寒冷化
・大気中のCO2増加そのものはなんらの害ももたらさない。(自然の恵み)
◆今後の政策の望ましい変更
・大気中のCO2濃度を問題にするのではなく、炭素資源の浪費を防ぐエネルギー政策を追求すべきである。
・温暖化防止一辺倒の政策は改めるべきである。
*排出権取引による、年間数兆円の支払いは無駄!


地球温暖化

増える豪雨に備え 過去データより将来予測重視 国交省検討会、「温暖化前提の治水」提言
(毎日新聞2019年8月1日 東京朝刊)https://mainichi.jp/articles/20190801/ddm/012/040/054000c

 地球温暖化で深刻化が懸念される豪雨災害に備えるため、国土交通省の有識者検討会は31日、治水計画に降雨量の将来予測を反映すべきだとの提言をまとめた。過去の豪雨に基づく対策から、温暖化の影響予測を活用する対策へと治水の大転換になる。昨年の西日本豪雨など想定を上回る水害の頻発を受けたものだが、コスト増が見込まれ、課題も多い。【大場あい、斎藤有香】
国や都道府県などの現在の治水計画は、戦後に河川の各流域で発生した最大の豪雨が再び起こっても被害を防げるよう考えられている。提言は「今後、豪雨の更なる頻発化、激甚化はほぼ確実視されている」として、温暖化による降雨量増加予測を反映させたものに改めるよう求めた。
これまでは温暖化で想定を上回る豪雨が発生した場合、避難などソフト面の対策強化で対応する方針だった。しかし、近年の豪雨災害頻発により、堤防などハード面でも影響を考慮せざるを得なくなった。温暖化に伴う影響の予測技術が向上したこともあり、有識者検討会は昨年4月から議論を進めてきた。
提言は、治水計画に活用する降雨量の将来予測について、来年始まる温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が世界の平均気温の上昇を産業革命前から2度未満に抑える目標を掲げていることを踏まえ、世界の平均気温が2度上昇した場合を基本にするとした。
その上で、降り方の違いから全国を15地域に分けて降雨量の変化を予測し、北海道と九州北西部の降雨量は現在の想定の1・15倍、他の地域は1・1倍になるとして、これに基づく治水計画を策定すべきだとした。降雨量が1・1倍になると、洪水の発生頻度は約2倍になるという。倍率は暫定値で、今後必要に応じて見直す。
具体的な計画策定では、河川管理者が定める河川整備基本方針で対策の基本となる河川流量を設定する際、この予測降雨量を活用することになる。治水計画改定は全河川が対象になるが、提言は、基本方針策定後に想定を上回る大規模な洪水が起きた河川から優先的に見直すよう求めた。
また、実際には2度目標を上回るペースで気温上昇が進んでいるため、提言は4度上昇した場合の予測も参考にするよう明記した。耐用年数の長い施設整備などに関しては、4度上昇に備え、低コストで改造できるような設計上の工夫をすべきことも盛り込んだ。
治水計画の見直しには堤防の設計やダム計画、排水設備などの変更が必要になり、コスト増も見込まれる。国交省河川計画課は「実現に必要な(河川管理などの基本となる)河川砂防技術基準の見直しなどを今後検討していく」としている。
有識者検討会座長の小池俊雄・土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長は「温暖化の進展に伴って毎年各地で深刻な被害が起きる中、先手を打ちたいと考えてきた。被害防止・軽減による経済的メリットが対策コストを上回ると期待され、国民の理解も得られるのではないか」と語った。

短時間、滝のように

 温暖化の進展で、短時間に降る強い雨など災害をもたらす可能性の高い雨は増えている。気象庁によると、日本の年平均気温は100年当たり1・21度のペースで上昇し、1時間に50ミリ以上の「滝のように降る雨」の発生回数は統計を取り始めた1976年以降、10年ごとに27・5回ずつ増加している。
更に近年、これまでの経験に基づく対策では対応できないような豪雨や台風の被害が発生している。2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市の3分の1に当たる約40平方キロが浸水した。昨年7月の西日本豪雨では270人以上(災害関連死含む)が亡くなった。西日本豪雨について気象庁は個別の豪雨災害で初めて、温暖化が一因との見解を示した。
世界の温室効果ガス排出量は増加し続けており、人間の活動が原因の温暖化によって、短時間強雨などは更なる増加が予測される。
気象庁によると、世界全体で効果的な対策を取らず、今世紀末に世界の平均気温が産業革命前より約4度上昇した場合、1日の降雨量が200ミリ以上の大雨や「滝のように降る雨」の年間発生回数は日本全国平均で現在の2倍以上になる。気象庁気象研究所の分析によると、日本の南海上で猛烈な台風が増加し、現在の10年に3回程度から5回程度に増えるとされる。
温暖化の被害軽減策に詳しい三村信男・茨城大学長(地球環境工学)は「多くの人が気候変動を実感するようになり、治水に関して本格的な適応策の導入が提案された意義は非常に大きい」と提言を評価した。一方で「影響予測技術は政策に活用できるように向上してきているが想定を超える豪雨災害は十分起こり得る。ハード面の対策を急ぐと同時に、住民への迅速な情報提供など、ソフト面も含めた何重もの備えが重要だ」と話している。

東京都江戸川区のスーパー堤防の差し止めを求める控訴審の判決文と弁護団声明

2019年8月2日
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東京都江戸川区のスーパー堤防の差し止めを求める控訴審で7月16日に東京高裁の判決がありました。
まことに残念ながら、住民側の敗訴でした。
都築政則裁判長は判決言い渡しを瞬時に終わらせるのではなく、判決文の要旨を述べる姿勢を示しましたが、敗訴には変わりはありませんでした。
判決文は22ページの短いものです。住民側が主張した項目は一通り取り上げているものの、国と区に勝たせるための結論が先にある論理性がない判決文でした。
都築裁判長は国に対して地耐力関係の全データの文書提出命令が出すなど、訴訟指揮はよかったのですが、判決は行政に忖度するものでした。

判決文はスーパー堤防差止東京高裁判決 20190716

判決要旨はスーパー堤防差止東京高裁判決の要旨20190716

をお読みください。

弁護団は7月26日にスーパー堤防差止訴訟東京高裁判決に対する弁護団声明 2019年7月26日

を出しました。そして、同日、最高裁判所に上告兼上告受理申立を行いました。

大江弁護士が「裁判支援の会たより」に書かれた文章を引用します。

 

2019年7月27日

弁護団事務局長 弁護士 大江 京子

1 はじめに
2019年7月16日、東京高等裁判所民事第19部(裁判長都築政則)は、江戸川区スーパー堤防事業差止め等請求訴訟について、控訴棄却の不当判決を言い渡しました。判決の問題点について詳しくは別紙の弁護団声明をご参照ください。

2 控訴審の成果について
判決の結論は不当であり、とりわけ行政追随型司法(行政に対して違法と言えない裁判所)の姿勢に対して、強く抗議したいと思います。
しかし、本件控訴審の審理は大きな成果を生みました。成果の第1は、何といっても国に対して地盤調査結果のデータ等の文書提出命令を出した画期的な決定です(平成30年3月27日)。本決定が、「土地に関する情報は、国民の生命、身体及び財産に関わるものとして公共性を有する」としたことは、個人情報を盾に地盤の情報開示を拒否してきたこれまでの行政の在り方に大きな影響を及ぼすものと期待します。
成果の第2点目は、控訴人らが要求した証人のすべてを採用して十分な証拠調べが行われた点です。スーパー堤防の必要性については、嶋津暉之証人、国の青野正志証人の尋問が行われ、その結果、治水事業としてのスーパー堤防事業が完全に破綻していること、国もその必要性については、結局のところ高台事業としか言えなかったことなどが誰の目にも明らかになったといえます。また、盛り土の安全性についても、国側の青野・金沢裕勝証人に対する反対尋問により、重要な事実が次々と明らかになりました。これらの立証の結果、控訴人らが、国らを圧倒していたと思います。国や行政を相手にする訴訟は、はじめから証拠の偏在があり、原告としては不公平な戦いを余儀なくされるのが通常です。本件の都築裁判長の訴訟指揮は、他の裁判体とは異なり、高く評価されるものです。
また、成果といえるかは疑問ですが、判決言い渡しの法廷で、裁判長自ら判決理由を口頭で述べたことも、今の裁判所の実情から見れば異例のことでした。
都築裁判長は、本件スーパー堤防訴訟の控訴人らの主張に真摯に耳を傾けて、公正な訴訟指揮を行ったと思います。

3 今後に向けて(最高裁)
それだけに、判決の内容は非常に残念です。国を勝たせる結論ありきの判決という点では、1審判決と同様でした。違うのは木で鼻を括るような1審判決と違い、控訴人らの主張に対して、一応ひとつひとつ答えようとしている点でしょうか。しかし、法的権限論のところはいかにも自信なさそうに書いていたり、スーパー堤防の必要性のところでは、裁判所自体が証拠の矛盾や不合理を分かっていながら理由を書いたとしか思えない箇所が散見されました。
控訴人ら4名は、本東京高裁判決を容認せず最高裁に上告いたしました。今後、弁護団としては、最高裁に提出する上告理由書等で徹底的に判決の矛盾を追及していくつもりです。
2011年11月に第1次訴訟を提起して以来これまで本当に多くの方に応援をいただきました。改めて深く感謝を申し上げます。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い致します。

足羽川ダム 事業費1300億円に増加 人件費など原因 当初は960億円

2019年7月31日
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近畿地方整備局が福井県に建設する足羽川ダムの総事業費が960億円から1300億円に大幅に増額されることになりました。その記事を掲載します。。
現在の足羽川ダムの計画は下記に示すとおり、足羽川の支川「部子川」にダムを築き、足羽川の各支川の洪水を導水トンネルで集めるという奇妙なダム計画です。
第一期と第二期があって、第一期は今後20~30年間に行うもので、導水トンネルは水海川からのものだけです。残りの導水トンネルは第二期ですから、いつ完成するのかわからないものです。
もともとの足羽川ダム計画は下流の足羽川(旧・美山町(現・福井市))につくるものでしたが、美山町の反対とダム反対運動の高まりで、中止になりました。
しかし、何としてもダムをつくりたい人たちの力が働いて、現在の奇妙なダム計画になりました。

足羽川ダム 事業費1300億円に増加
(中日新聞福井版2019年7月30日)https://www.chunichi.co.jp/kenmin-fukui/article/kenmin-news/CK2019073002000199.html

人件費など原因 当初は960億円
国が池田町で建設を進めている足羽川ダムについて、総事業費の見通しが人件費や資材の高騰などにより、当初計画の九百六十億円から三百四十億円(35%)増の千三百億円に膨らむことが分かった。国土交通省足羽川ダム工事事務所が二十九日、福井市内で開いた事業費等監理委員会で明らかにした。
事業費増の内訳は、人件費や資材の高騰、消費税増税など社会的要因で百八十七億円。ダム本体の詳細設計が進み、放流設備の規模拡大や追加の地滑り対策などで百八十億円が必要になった。一方、本体構造の工夫などコスト縮減で二十七億円を圧縮した。
同事務所によると、二〇二六年度の完成予定に変更はない。総事業費が二〇〇六年度の計画時から増えたのは今回が初めて。総事業費の三分の一は県負担になる。県は事業費増に理解を示しつつ、引き続きコスト縮減に努めるよう要望したという。
足羽川ダム建設は、一九年度末で五百十八億円が執行される予定。増加後の事業費ベースの進捗(しんちょく)率は約40%となっている。二〇年度からはダム本体の工事が始まる。 (山本洋児)


工事単価、人件費増などでダム事業費340億円増、1300億円に

(福井新聞2019/7/30(火) 19:58配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190730-00010002-fukui-l18


足羽川ダム計画

福井県負担も増
国土交通省が福井県池田町に建設する足羽川ダムについて、近畿地方整備局の同ダム工事事務所は7月29日、2026年度完成予定の1期工事の事業費が当初計画の960億円から340億円増額し、1300億円になるとの見通しを明らかにした。工事単価や人件費増、消費税増税などが理由。

29日に福井市内で開かれた同ダム事業費等管理委員会で報告された。8月1日に同整備局の事業評価監視委員会で費用対効果などが審議され、事業の継続が妥当かどうか判断される。

同事務所によると、1期工事の事業費は06年度の物価や人件費を基に算出していた。来夏に本体工事に着手するため、地質調査などを踏まえて今年2月に作った足羽川ダムの詳細設計を基に見直した。

その結果、▽物価や人件費の増額など社会的要因で187億円増▽事業進捗に伴い判明した、洪水調節機能や安全性を確保するための追加対策費で180億円増▽洪水時にダム本体へ水を流す導水トンネルの経口縮小化などのコスト縮減策で27億円減―となり、340億円増額となる。

事業費の負担割合は国が3分の2、県が3分の1。見直し案が同整備局の事業評価監視委員会で認められれば、国交省は今夏の概算要求に必要経費を計上する方針。同事務所は「26年度の完成が遅れないための対策も含め、事業工程に影響が出ないよう進めていく。可能な限りコスト縮減を図り、事業費の抑制に努めたい」としている。

2期工事に関しては、国の「河川整備方針」で490億円かかるとされているが、同事務所は「まだ事業化されていないので、次の段階での話になる」と説明している。

福井県河川課は「ダムは福井市中心部の洪水を守る重要な事業で、26年度までに完成することが第一。コスト増はやむを得ない部分はあるが、国はコスト縮減の管理をしっかりやってほしい」としている。

■足羽川ダム 足羽川、日野川、九頭竜川下流域の洪水被害軽減を目的に、国が足羽川支川の部子川(福井県池田町)に建設する治水ダム。高さ96メートル、幅351メートルで普段はゲートを開け、非常時のみ貯水する「穴あきダム」。1期工事で水海川とダムをつなぐ導水路も整備する。貯水量は2870万トン。福井豪雨で破堤した足羽川堤防地点の水位を90センチ下げられるという。他流域の3河川(足羽川上流、割谷川、赤谷川)からダムに導水路を設ける2期工事の計画は事業が確定していない。

 


足羽川ダム、事業費340億円増、福井県負担81億円増

(日本経済新聞2019/8/1 18:39) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48083040R00C19A8LB0000/

国土交通省が建設を進める足羽川ダム(福井県池田町)の事業費が340億円増えて1300億円となることが1日、大阪市内で開かれた事業評価監視委員会で了承された。福井県の負担も81億円増えて310億円になる。2006年度に960億円と算定した見積もりの甘さや、事業の長期化による人件費上昇などコスト増リスクが現実になった。

同ダムは20年度に本体工事に着手し、26年度に完成する予定。福井県も事業費増に同意した。同省の説明によると、人件費上昇などの社会的要因で187億円増える。水没する道路の代わりに建設する道路の崖崩れ対策の拡大や、ダム洪水調整地の地滑り対策場所の増加など9件の工事計画変更で180億円増加した。
周辺河川の洪水を防ぐためにダム湖に水を導くトンネルの小型化などで27億円を削減したが、事業費は差し引き340億円増えた。今後も事業費が拡大する可能性はあり、自治体側に拒否権は原則ない。
費用対効果については費用が増えた一方で、下流の福井市などで世帯数が微増するのに加えて北陸新幹線の将来の開通などで被害軽減効果が増したとして、費用便益比1.3は変えなかった。
足羽川ダムは1983年度に調査が始まり、94年度に水道用水を含む多目的ダムとして事業に着手した。水道用水が不要になったため事業継続が困難になったが、2004年の福井豪雨で治水ダムとして継続された。


現在の足羽川ダム建設事業(足羽川ダム工事事務所のHPより)

足羽川ダム建設事業は、足羽川、日野川(ひのがわ)及び九頭竜川(くずりゅうがわ)の下流地域における洪水被害の軽減を目的として、九頭竜川水系河川整備基本方針に定められた天神橋(てんじんばし)地点の基本高水のピーク流量2,600m3/s に対し、800m3/s の洪水調節を行うため、洪水調節専用(流水型)ダムと併せて、他の4 河川(水海川(みずうみがわ)、足羽川、割谷川(わりたにがわ)、赤谷川(あかたにがわ))の洪水を導水するための分水施設(分水堰と導水トンネル)を整備するものです。
また、今後20年~30年の河川の整備内容を定めた九頭竜川水系河川整備計画においては、目標である戦後最大規模の洪水(福井豪雨規模)の流量2,400m3/sに対して、600m3/sを足羽川ダムにより洪水調整を行うこととしています。
河川整備計画期間内に先行的に建設する施設は、ダム本体と水海川からの分水施設です。なお、ダム本体は段階整備に適さない構造物であるなどの理由により、九頭竜川水系河川整備基本方針規模で整備する計画です。

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