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5月12日、国土交通省の国土審議会が国土交通大臣宛に、「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」の答申を出しました。
「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」(答申)
~需要主導型の水資源開発からリスク管理型の水の安定供給へ~
この答申は八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、設楽ダム、川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発などといった、現在進められているダム等事業を利水面で位置づけることを企図したものです。
水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において利根川、豊川、木曽川、淀川、筑後川水系等の水需給計画である水資源開発基本計画(フルプラン)はその役割が終わっているのですから、
国土交通省は根拠法である水資源開発促進法とともに、フルプランを廃止し、
新規のダム等事業は利水面の必要性がなくなったことを明言すべきです。
しかし、国土交通省は上記のダム等事業を何としても進めるべく、(水需要の面では必要性を言えなくなったので)「リスク管理型の水の安定供給」が必要だという屁理屈をつけて、上記のダム等事業を位置づけるフルプランを策定するため、今回の答申をつくりました。
この答申に沿ってこれからフルプランの変更が行われることになっています。
この答申の関係資料が
この答申案に対して2月22日から3月7日までパブリックコメントが行われました。
答申案に対して厳しい意見が多く出されていますので、ご覧ください。
平成29年度厚生労働省水道課のダム関係補助金が厚生労働省のHPに掲載されました。、
この表には水資源機構ダム(思川開発や川上ダム等)関係の補助金は入っていません。
水資源機構ダムの場合、ダム建設費の水道分はダム完成までは水資源機構が負担しますので、水道分の補助金は水資源機構が受け取ります。(ダム完成後に水資源機構が利水参画者に対して補助金を除くダム建設費負担分に利息をつけて請求します。)
厚生労働省水道課は、ダム事業を推進する国土交通省とは別の省なのですから、独自の判断があって然るべきなのですが、
水需要の架空予測でダム事業に参画する水道事業体に対して、自動的に補助金を与えています。
厚生労働省水道課とは、石木ダム事業に参画する佐世保市や、当別ダム事業に参画する札幌市の水需要予測問題について何度かやり取りしたことがありますが、
架空予測を是正しようとする姿勢は皆無でした。
埼玉県と東京都を流れる荒川の中流部に約2,500億円もかけて、巨大な洪水調節池を三つ造る計画が進んでいます。
新規のダム建設が困難になってきたため、巨額の費用を要する河川開発事業として計画されたものと考えられます。
荒川調節池計画の問題を考えるチラシが作られました。シンプル版と詳細版があります。次のとおりです。
「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」http://yambasaitama.blog38.fc2.com/ が荒川調節池計画の問題に取り組んでいますので、
皆様もこの問題に関心をお寄せください。
以下、荒川調節池計画の概要と問題点を記します。
*計画の概要
埼玉と東京を流れる一級河川の荒川では1973年に旧建設省により、荒川の洪水・渇水対策として中流部に5つの調節池群の構想がつくられ、そのうち、1999年3月に荒川第一調節池が完成しました。
残りの調節池は机上のプランだと思われていたのですが、2016年3月策定の荒川水系河川整備計画で、第一調節池の上流に治水専用の荒川第二、第三、第四調節池をつくることが決まりました。
荒川第二~第四調節池の予定地は、下流側はさいたま市桜区、志木市から、上流側は桶川市、川島町まで及ぶ広大なものです。
池内面積は第二、第三、第四節池の合計で約14㎢にもなり、既設の第一調節池の2倍以上になります。
洪水を貯めるために長い堤防を築き、池内の掘削を行います。
① 第二~第四調節池は、戦後すぐのカスリーン台風洪水の再来に備えて必要とされていますが、
当時と比べて森林の環境整備が格段に進み、山の保水力が高まっています。
当時のように大きな洪水にはならなくなっています。
② 第二~第四調節池の必要性は机上の洪水流量計算から求められたもので、荒川の現状を反映して
いません。
③ 荒川中流域の広大な河川敷には1954年に横堤(左岸14箇所、右岸12箇所)がつくられ、遊水機能
が強化されていますので、洪水調節はこれで十分です。
④ 2004年完成の荒川第一調節池で、今まで越流があったのは、
2007年9月洪水だけで、その越流量はわずか3万㎥、
調節容量3,900万㎥の1/1000で、余裕が十分にありました。
これ以上の調節池の建設は不要です。
⑤ 第二~第四調節池の建設に約2,500億円という巨額な予算を
投じるよりも、河川堤防の強化、越水しても破堤しない堤防
の整備を推進する方が、はるかに有効な治水対策になります。
*予定地の豊かな自然
日本有数の広大な高水敷には、かつての荒川の蛇行形状と自然環境をとどめる旧流路や周辺の湿地、ハンノキ等の河畔林が見られ、多種多様な動植物の生息・生育環境を形成しています。
旧流路の水域には、ヒシ等の水生植物、トウキョウダルマガエル等の両生類や、メダカ等の魚類が見られ、湿地のヨシ群落と周辺のオギ群落は、オオヨシキリ等の鳥類やカヤネズミ等の哺乳類の生息場として利用されています。
ハンノキ等の河畔林には、ミドリシジミ等の昆虫類も生息しています。(「荒川上流河川維持管理計画」より)
2017(平成29)年度の各ダムの予算額がきまりました。
直轄ダムと水資源機構ダムの2017年度予算は、国交省のホームページ
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/yosan/gaiyou/yosan/h28/h28damyosan.pdf の予算案と同じです。
補助ダムの2017年度予算は、事業実施箇所(当初配分)
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_001112.html の中に示されています。
例えば、石木ダムについては長崎県を開くと、最初に道路局の予算、次に国土保全・水管理局の予算が書かれていて、
石木ダムの事業費が5.88億円となっています。
石木ダムの最近5年間の予算の推移は次のとおりです。
2013年度 8.40 億円 2014年度 14.90億円 2015年度 9.20 億円 2016年度 1.20億円 2017年度 5.88億円
各ダムの2009~2017年度の予算の推移を整理しました。参考までにご覧ください。
直轄ダム・水資源機構ダムの予算(2009~2017年度)
補助ダムの予算 (2009~2017年度)
長野県の浅川ダムの運用が近く開始されます。その記事を掲載します。
住民側はダム直下の断層が活断層であることなど、ダムの危険性を裁判で訴えてきましたが、3月2日の東京高裁判決は残念ながら、住民側の敗訴でした。
浅川ダムは穴あきダム(流水型ダム)ですが、流水型ダムについて強く心配されることは、大洪水時に流木や土砂などで洪水吐きが詰まって、洪水調節機能が失われてしまうことです。常用洪水吐の手前に鋼製のスクリーンを設置して、流木等の流入を防ぐとしていますが、山腹が崩壊したような大洪水時には、枝葉が付いた樹木そのものが土砂とともに一挙に流出してくるでしょうから、鋼製スクリーンは流出樹木や土砂で覆われて、通水能力が激減してしまうことが予想されます。
流水型ダムの問題は、その例が極めて少なく、歴史がまだ浅いことです。日本で最も古い島根県の益田川ダムさえ、完成してから約11年しか経っていません。その後、完成した流水型ダムは石川県の辰巳ダムですが、完成してから約4年です。
日本での流水型ダムの実例は現在はたったこれだけであり、しかも、益田川ダムや辰巳ダムではいまだ大洪水が来ておらず、大洪水が来た時に、流水型ダムの小さな洪水吐きが閉塞することがないのか、鋼鉄製スクリーンの周辺がどうなるのか、全くの未知数なのです。
さらに、浅川ダムの場合、流域面積が小さいため、常用洪水吐きの断面積が1.9㎡しかなく、他の流水型ダムと比べると、
流水型ダムの諸元のとおり、非常に小さいので、大洪水時に詰まって洪水調節機能が失われてしまうことが強く危惧されます。
県営浅川ダム 本格運用へ 専門家委「安全に機能」
(信濃毎日新聞2017年3月15日)http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170315/KT170314ATI090018000.php
県営浅川ダム(長野市)建設工事の安全対策などを確認する学識者らの施工技術委員会(委員長・富所五郎信州大名誉教授、6人)は14日、長野市で開き、「ダム本体は安全に機能する」と総括した。県は近く、ダムを施工した共同企業体(JV)から引き渡しを受け、全国4例目の「穴あきダム」として運用を始める。
この日は委員がダム内部に入り、各種計器などを見て回った。その後、長野市浅川公民館に移動し、県側からダムに水をためて安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」の報告を受けた。
県側は、昨年10月〜今年2月に実施した試験湛水の結果を数値で示し、ダムからの異常な漏水や傾き、貯水池周辺の地滑りの危険性などはなかったと説明。技術委はこれを受け、「適正な施工により品質が確保され、試験湛水の観測結果について異常は認められず、ダム本体は十分安全に機能すると評価する」とした。
一方、ダム建設に反対する流域住民らは14日、建設にかかる公金支出の差し止めを求めた訴訟で住民側の請求を退けた2日の東京高裁の二審判決を不服とし、最高裁に上告すると発表した。
浅川ダムは治水専用ダムで2010年に本体工事に着手。通常時はダム下部にある「常用洪水吐(ば)き」(高さ1・45メートル、幅1・3メートル)から水を流し、洪水時は自然に水がたまる仕組み。ダム本体の高さは53メートル、上部幅165メートルで、総貯水容量は110万立方メートル。県はダムを含む流域の治水水準について「100年に1度」の大雨(日雨量130ミリ)に対応できる規模とする。総事業費は約380億円。舗装といった残工事を経て7月に完成式を開く計画だ。