水源連:Japan River Keeper Alliance

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田んぼダムについての情報のまとめ

2022年10月1日
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最近、田んぼダムについての記事、ニュースが多いので、田んぼダムについての情報をまとめておきます。

 

1 田んぼダムの主たる考案者である吉川夏樹氏の説明

  • 田んぼダムの適切な装置の設計 新潟大学農学部 吉川夏樹

https://www.bing.com/videos/search?&q=%e7%94%b0%e3%82%93%e3%81%bc%e3%83%80%e3%83%a0+%e4%bb%95%e7%b5%84%e3%81%bf&view=detail&mid=1D8E39191BB5F1CD07711D8E39191BB5F1CD0771&form=VDQVAP&ru=%2Fvideos%2Fsearch%3Fq%3D%25e7%2594%25b0%25e3%2582%2593%25e3%2581%25bc%25e3%2583%2580%25e3%2583%25a0%2B%25e4%25bb%2595%25e7%25b5%2584%25e3%2581%25bf%26qpvt%3D%25e7%2594%25b0%25e3%2582%2593%25e3%2581%25bc%25e3%2583%2580%25e3%2583%25a0%2B%25e4%25bb%2595%25e7%25b5%2584%25e3%2581%25bf%26FORM%3DVDRE&rvsmid=D213EA59A70AE798F464D213EA59A70AE798F464&ajaxhist=0

約30分の映像による説明があります。

また、次の説明もあります。

近年、毎年のように大規模な水害が発生していますが、その原因として、雨の降り方の変化をはじめ、農地転用や、耕作放棄地の増加などが考えられます。
水田のあぜは、雨水を一時的にため込む機能がありますが、水田が減少すれば、この機能も弱体化し、水が一気に河川に流れ込み、氾濫につながります。
明治以降の河川整備は、水の流れを押しとどめるために、堤防設置などが主流でしたが、ここへきて異なる動きが見られます。私が専門とする「田んぼダム」も、そのひとつ。
「田んぼダム」は水田の排水口の口径を狭める「仕掛け」を設置して、大雨が降ったときに水田から排水されるピーク時の流出量を少なくする仕組みです。
遊水地のように河川の水を水田に導いて貯水するのではなく、水田に降った雨水を、一時的にとどめる仕組みです。排水口からの水量を調整する「適切な仕掛け」を設置すれば、水田から水があふれるリスクを低くできます。
排水口を完全にふさいで、全降水量を水田にためてしまった場合、300mmの雨が降れば、水田の水深は30cmになりますが、田んぼダムは排水しながら雨水をためるので、水深はもっと浅くなります。私が開発した仕掛けは、30年に1度の大雨(170mm/日)が降った場合でも、排水量を7割程度カットできるように設計しています。
新潟県で記録された1日あたり180ミリという、50年に1度クラスの大雨が降ったても、ピーク時の水深は11cm程度。田植え直後ならイネが水没しますが、水害が起こりやすい梅雨以降であれば、稲も水没しない程度に成長しています。
新潟県や農協とともに、水田への影響を検討した結果、仮に1年に1回、11cm程度の深さの水に浸かっても、生育にはほとんど影響がないことがわかりました。
しかし、最近では「不適切な仕掛け」を使った装置も出回っているので、注意が必要です。私の設計した装置では、排水口に取り付ける「堰(せき)板A」とは別に、内側にもう1枚、穴が空いた板Bを設置できる仕組みになっています。
水深を調節するには、排水マスの前面にある堰板Aで行いますが、水田から水を抜く中干し時には、これを外して水を抜いたのち、これとは別に、マスの内側に、穴があいたもう1枚の板Bを設置します。
この装置だと、小雨程度では田んぼダムを実施しても、雨水は常に排水されっぱなしになるので、水田にはたまりません。
大雨で水深が増えて、排水マスに流入する水量が、堰板の穴から排出できる水量を上回ったときに初めて、田んぼダムの効果を発揮します。要するに、大雨が降った場合だけ効果が現れるので、通常の中干し期の管理と変わりません。
一方、堰板の構造が異なる不適切な装置の場合、小雨であっても、水田に水がたまってしまううえ、中干し期には水を抜けない状況が起こりやすくなるので要注意です。
田んぼダムは「適切な仕掛け」を採用すれば、イネへの影響はほとんどありません。ここに田んぼダムを推進してきた新潟市が発行するパンフレットがありますので、ご参照ください。

吉川氏は、田んぼダムは適切な仕掛けにしなければ効果がないと、強く指摘しています。田んぼダムは下図の通り、流量調整版を新たに設ける機能分離型と、そうではない機能一体型があり、一般には後者の方が多いようですが、吉川氏は前者でなければ効果がなく、持続しないと指摘しています。


2 スマート田んぼダム

最近実用化されているのは、スマート田んぼダムです。田んぼの排水門に通信機能をつけて、スマートフォンやパソコンから遠隔操作するものです。

大雨が予想されるときには、市町村の職員がスマートフォンやパソコンで排水門を遠隔操作して、田んぼに張ってあった水をあらかじめすべて外に排水して水位を下げ、排水門を閉鎖して雨水を貯留し、降雨後に排水門を遠隔操作で開けて水位を下げるものです。

スマート田んぼダムについてはすでに9月9日のメール「浸水対策のカギにぎる?“田んぼ”が秘める可能性」

(NHK2022年9月8日 17時30分) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013808881000.html でお知らせしました。

スマート田んぼダムを導入した兵庫県たつの市では、農家の協力を得て市内24か所、約9haの水田に遠隔操作のできる排水門を設置し、すべての田んぼで排水すれば、約9000トンの雨水をためることができることになっています。

「スマホで簡単に水管理ができる! 田んぼのダム化に対応する自動排水制御装置とは?」株式会社 笑農和)(アグリジャーナル) https://agrijournal.jp/renewableenergy/58384/ という情報もあります。

通常の田んぼは稲作の時期によって水深が確保されていますので、田んぼダムで貯留できる雨水は10㎝程度ではないかと思いますが、スマート田んぼダムは事前に排水するので、貯留できる雨水の量をもっと大きくすることができます。

田んぼの畔の高さは約30cmですので、最大で20cm程度、雨量と同様に単位をmmで示せば、最大で200mm程度までの雨水貯留ができるのではないでしょうか。

スマート田んぼダムがこれからどんどん普及していくことを私は期待します。

 

3 農林水産省の動き

農林水産省も田んぼダムの普及に向けての動きを示しています。

2021年4月に流域治水関連法が成立したことを受けて、

農林水産省農村振興局のHP 6.農業用水 流域治水への取組み https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/kurasi_agwater/ryuuiki_tisui.html

に田んぼダムの情報が次のように掲載されています。

○「田んぼダム」の手引き (概要版) 平成4年4月  農林水産省 農村振興局 整備部

https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/kurasi_agwater/attach/pdf/ryuuiki_tisui-66.pdf

○「田んぼダム」の手引き  平成4年4月  農林水産省 農村振興局 整備部

https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/kurasi_agwater/attach/pdf/ryuuiki_tisui-67.pdf

○「田んぼダム」の手引き 参考資料

https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/kurasi_agwater/attach/pdf/ryuuiki_tisui-65.pdf

その中に上記のスマート田んぼダムの情報も掲載されています。

 

自然と人々の生活に大きな影響を与えるダム建設をやめて、田んぼダムなどの本来の流域治水が進められていくことを強く期待します。

 

流水型川辺川ダムの環境影響の検討委員会の資料

2022年9月7日
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8月24日、流水型川辺川ダムの環境影響の検討委員会が開かれました。

その検討委員会の資料が下記の通り、川辺川ダム砂防事務所のHPに掲載されました。

かなり分厚い資料です。委託費がふんだんにあるから、このような資料もつくれるのでしょうね。

流水型川辺川ダムは既存の流水型ダムと比べて桁違いに大きい流水型ダムですから、今後の環境影響を予測できるはずがありません。そして、既設の流水型ダム(たとえば最上小国川ダム)では環境への影響が深刻な問題になってきています。

検討委員会のニュース記事も掲載します。

 

九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/

流水型ダム環境保全対策検討委員会  https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/

第4回 流水型ダム環境保全対策検討委員会8月24日(水)開催資料

https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou2/daiyonkai.html

説明資料2-1

【配慮レポートに対するご意見と事業者見解(案)】 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou2/siryou405.pdf

説明資料2-2

【流水型ダムによる環境影響の最小化に向けた検討状況】 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou2/siryou406.pdf

説明資料2-3

【環境影響評価にあたっての調査、予測及び評価手法等】 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou2/siryou407.pdf

説明資料3

【今後のスケジュールについて】 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou2/siryou408.pdf

【参考資料1】(1) (2)

【参考資料2】

【参考資料3】

 

流水型ダム 放流設備の検討例示される【熊本】

(テレビ熊本2022年8月25日 木曜 午後0:00) https://www.fnn.jp/articles/-/407879

(映像)

川辺川に建設予定の流水型ダムによる環境影響の最小化について考える検討委員会が24日開かれ、流水型ダムの放流設備の検討例が示されました。
検討委員会では、国がダムの形状について平常時に水を流す門と洪水調節を行う門の
数の違いによる検討例を提示。
また環境影響の調査方法などを記した「方法レポート」の原案では、ダム完成後の水質や生物、植物などへの影響調査や予測の方法が示されました。
委員からは、調査する生物や植物の追加を求める意見などが挙がりました。
流水型ダムについては、環境アセス法と同等の環境影響評価を行うことになっていて、今回の議論を踏まえてレポートがまとめられます。

球磨川水系河川整備計画への県知事と各市町村長の意見

2022年8月14日
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8月9日、流水型川辺川ダムの建設をメインとする球磨川水系河川整備計画が策定されました。

この計画策定に対して蒲島郁夫・熊本県知事は「異存はない」と回答しました。(知事回答の文面を下記に転載)

川辺川ダム計画は潮谷義子・熊本県前知事が中止に向けて長年取り組んできたダム計画で、中止が県民の願いとなっていました。それを受けて、2008 年9月、蒲島郁夫・現知事がやむなく、県議会で建設反対を表明したものであり、ダム中止は蒲島氏の本意ではありませんでした。

蒲島氏は、2020年球磨川水害のあと、12年前の白紙撤回から方針転換し、2020年11月に新たな流水型のダム建設を国に求めると表明し、今回、上記の回答を行いました。

川辺川ダム計画は2009年に中止とされたものの、特定多目的ダム法に基づく廃止手続きは取られておらず、法的には生き残っていて、国交省はダム事業復活の機会をずっと伺ってきました。2020年球磨川水害がその復活の機会となってしまいましたが、当時、仮に川辺川ダムがあっても、亡くなった方の大半はその命を救うことができなかったことが明らかになっています。

この球磨川水系河川整備計画に対して球磨川流域の各市町村長がどのような意見を述べたかですが、次の「熊本県知事意見」の中に市町村長の意見も入っていますので、ご覧ください。

球磨川水系河川整備計画[国管理区間](令和4年8月9日策定)

熊本県知事意見 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/river/kasenseibi/tiji_iken.pdf

流域市町村長のうち、川辺川ダムのダムサイト予定地「相良村」、川辺川ダムの水没予定地「五木村」、2020年7月の熊本豪雨で大勢の死者が出た「球磨村」と「人吉市」の各首長の意見を下記に転記しておきます。

相良村長、五木村長、球磨村長は川辺川ダム計画への賛意を示していないように読み取れます。

それに対して、人吉市長は川辺川ダム計画の推進を強く求めています。

かつて、2008年に蒲島郁夫熊本県知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明したのは、球磨川流域で川辺川ダムの恩恵を最も受けるとされる人吉市の田中信孝市長がダム反対を表明したことが大きな要因になりました。

当時の田中市長と比べると、今の松岡隼人市長は全く逆方向を向いています。

2020年7月の熊本豪雨で、人吉市で多くの死者が出たのは、球磨川の本川よりも支川が早く氾濫したことによるものであり、当時、仮に川辺川ダムがあっても、その命を救うことができませんでした。

その重要な事実を踏まえずに、松岡市長は安易に川辺川ダム計画の推進を強く求めているのです。

 

熊本県知事

相良村長

 五木村長

 球磨村長


 人吉市長

「埼玉の川と水を考える会」の活動経過とこれからのこと

2022年8月3日
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18年間活動を続けてきた「埼玉の川と水を考える会」(旧名「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」)が、7月31日に解散総会を開きました。

18年間はかなり長い期間です。幹事の高齢化による健康問題も出て来て、この状況で活動の継続が困難と思われ、埼玉の会としての活動は終了することになりました。

ただし、「埼玉の川と水を考える会」のブログ https://watersaitama.blog.fc2.com/ は「ダム・河川行政・無駄な公共事業を考える」と名称変更して、これからも継続していきますので、

河川・ダム問題等の情報サイトとしてご利用いただければと思います。

河川・ダム問題等の情報サイトは、「八ッ場あしたの会」https://yamba-net.org/ もありますので、ご利用ください。

解散総会の報告は埼玉の会のブログhttps://watersaitama.blog.fc2.com/blog-entry-1971.html に掲載されています。

この総会で、「河川行政の現状と私たちが注視してゆくべきこと(「埼玉の会」の活動経過と今後)」というタイトルで、嶋津が次のテーマについて話をしました。

Ⅰ 八ツ場ダム問題への取り組み

  • 八ッ場ダムの公金支出差し止め住民訴訟
  • 八ツ場ダム問題の経過
  • 八ッ場ダムの運用開始でこれから危惧されること、
  • 八ツ場ダムは必要であったのか?

Ⅱ その他の河川・ダム問題への取り組み

  • 荒川のダム問題
  • 荒川の第二~第四調節池の問題
  • 荒川の橋梁問題
  • 荒川・江戸川のスーパー堤防問題

Ⅲ 全国の河川・ダム問題の現状

  • 中止されたダム、継続となったダム
  • 石木ダムの問題
  • 流水型川辺川ダムの問題

Ⅳ 今後の河川行政のあり方として望まれること

  • 耐越水堤防工法の推進
  • 流域治水の推進で模範となるのは滋賀県の取組み
  • 河川浚渫事業

今回の話で使用したスライドを https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/08/e4a69f5096732e5c5499b8210a0c91c9.pdf

にアップしました。

上記のテーマについての情報をできるだけ入れましたので、112枚もありますが、お読みいただければと思います。

「流水型ダム」は観光資源にはならない 最上小国川ダム

流水型ダムを観光資源として捉えようとする動きに対して、最上小国川ダムの現状を踏まえて、最上小国川の清流を守る会が作成された「『流水型ダム』は観光資源にはならない」を掲載します。下記の通りです。

守る会の阿部修さんから送付していただきました。

「最上小国川の清流を守る会」からは、下記のチラシを送っていただいています。

チラシ 最上小国川ダムによって濁りが増え、河川環境に変化が!

最上小国川ダムは山形県が建設したダムで、2020年4月から運用を開始しました。

最上小国川ダムの現状と見ると、流水型ダム(穴あきダム)が環境にやさしいというのは全くの嘘で、行政が作り上げた虚構に過ぎないことがよくわかります。

この問題については昨年8月に川辺孝幸先生(元山形大学)が発表された報告「濁水を増加させる穴あきダムは、環境にやさしくない(最上小国川ダム)」

が水源連HPhttps://suigenren.jp/news/2021/08/26/14932/

に掲載されていますので、その報告も合わせてお読みください。

最上小国川ダムについてはhttps://suigenren.jp/damlist/dammap/mogamiogunigawadam/の通り、反対運動の長い経過があります。

2018年1月には『ダムに抗う』という集会が開かれ、ジャーナリストの相川俊英さんが「日本有数の清流で持ち上がったダム建設計画」というタイトルで最上小国川ダム問題についての講演をされています。

その講演要旨(https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2018/01/918cb79ea35273983c39ca412db54ba4.pdf

もお読みください。

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