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破られた公約 八ツ場、翻弄された町 (産経新聞2012年11月18日 )
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(2)破られた公約 八ツ場、翻弄された町 (産経新聞2012年11月18日 )
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121118/plc12111813410010-n1.htm
(写真)橋の建設などの工事は進むものの、ダムの本体工事は着手のめども立っておらず、住民は先を見通せない=群馬県長野原町
民主党は前回選挙のマニフェスト(政権公約)のトップに税金の無駄遣いを掲げた。道路やダムといった公共事業の利益誘導で票を集めた自民党との違いを鮮明にし、政権交代を果たした。
風穴をあけたのは、有権者個人に向けた公約を掲げる手法だった。「コンクリートから人へ」。その象徴が群馬県長野原町の八ツ場(やんば)ダムの建設中止だった。
政権交代の高揚感が残る平成21年9月、国土交通相に就いた前原誠司氏(50)は就任会見で「八ツ場ダムの建設は中止する」と高らかに宣言した。
「大勢の人生を左右することを、地元への説明もなしに、宣言するとは思わなかった」
ダム建設予定地の川原湯(かわらゆ)温泉で、旅館「山木館」を営む樋田洋二さん(65)は、こう振り返る。
地元は、民主党の政権公約に八ツ場ダム建設中止がうたわれていることを知っていた。それでも、突然の“ちゃぶ台返し”に温泉街は揺れた。昭和27年のダム構想発表以来、建設の是非をめぐり親兄弟の間でさえ対立し、長い歳月を費やして建設を受け入れた経緯があるからだ。
地元や関係者の猛反発に加え、国交省内でも異論が噴出した。強引な手法への批判も強まった。それでも前原氏の意向は変わらなかった。
だが、後任の馬淵澄夫氏(52)は事実上、建設中止を撤回。事業計画の再検証を経て昨年12月には建設再開が決まった。
温泉街の土産物店を切り盛りする樋田ふさ子さん(83)は「結局元に戻っただけ。この3年は何だったのか」とつぶやく。
蓄え切り崩す日々
建設再開が決まって1年になるが、公約違反の“後遺症”は残る。川原湯温泉の老舗旅館「柏屋」の社長、豊田幹雄さん(46)は今月8日、国交省と旅館の移転先の補償契約を交わした。
旅館の休業から2年8カ月。ようやく再開業への一歩を踏み出したが、まだ先は見えない。今後は移転先に決まった土地を国交省に整備してもらい、新たな旅館を建てる手はずだが、土地の整備にめどが立っていないのだ。
先週も、豊田さんと国交省担当者の間でこんなやり取りがあった。
「いつ造成(整備)できるのか」
「なかなか予算がつかない…」
事業は遅延している。「少しの骨休みのつもりで旅館を閉めたが、いまだ将来を見通せない」。ぶっきらぼうに話す豊田さんの口調には政治への不信がにじむ。江戸末期創業の旅館は、年2億円近い売り上げがあった時期もあった。今は蓄えを切り崩す生活が続く。「時間が過ぎるだけの毎日だ」
財源の裏付けなし
子ども手当、脱官僚、脱公共事業…。民主党は先の衆院選でこうした公約を掲げたが、完全に実現できたものは少ない。
「財源の裏付けもないまま、有権者への耳当たりのよい言葉を並べただけ。あまりにも無責任だ」。政治評論家の浅川博忠氏(70)はそう話し続けた。
「公共事業などへのバラマキを批判した民主党も、結局は個人へのバラマキで有権者を引きつけただけ。有権者も安易に流された。次期衆院選では政党は公約で財源まで示し、有権者も厳しい目を向けるべきだ。そうしないと、また生活を壊される」
樋田洋二さんは言う。「今となっては政治は信用できない。くしくも政権交代で改めてそれを痛感した。言葉だけではない、生活を守ってくれる政治であってほしい」(森本充)
■八ツ場ダム 群馬県長野原町の利根川水系吾妻川に計画されている多目的ダム。総貯水量1億750万トン。洪水対策や首都圏430万人分の水道用水供給を図る。
昭和27年に建設計画の調査に着手。激しい反対運動の末に地元地権者らが補償案を受け入れ、道路などの付け替え工事が進んできた。総事業費は約4600億円。完成予定は平成27年度とされていたが、見通しが立っていない。
マニフェスト:廃れた村「再建」描けず 脱ダム押しつけ 補償棚上げ 熊本・五木村水没予定地(毎日新聞社会面 2012年11月19日)
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検証・民主党マニフェスト:廃れた村「再建」描けず 脱ダム押しつけ 補償棚上げ 熊本・五木村水没予定地(毎日新聞社会面 2012年11月19日)
http://mainichi.jp/area/news/20121119sog00m040004000c.html
(写真)自宅裏の畑で妻とサトイモを収穫する尾方さん=熊本県五木村頭地で、取違剛撮影
「昔は役場も何もかもあったですけどな。みんな上に行ってしもうたですたい」。国営川辺川ダム計画の水没予定地、熊本県五木村頭地(とうじ)地区。
ただ一軒、妻と住み続けている尾方茂さん(85)は高台の代替地を見上げた。かつて493世帯が暮らし、元の役場や小・中学校、消防署など全ての公共施設が集まっていた「一等地」は現在、国が買収した更地にやぶが茂る。
ダム計画が発表された1966年以降、住民は代替地や村外へ移っていった。尾方さんは「畑から離れたら仕事ができん」と移転を断り、3反歩(約3000平方メートル)の畑でソバや大豆を作ってきた。「ダムはできん方がよかです。しかし、このままで村がどうやって生きていけますか」
民主党は前回総選挙のマニフェストで、川辺川ダムと八ッ場(やんば)ダム(群馬県)中止を掲げた。
前提条件に、地元への補償も打ち出したが、川辺川ダムの計画中止を表明した09年以降、村の中心部を占める水没予定地244・3ヘクタール(東京ドーム52個相当)を今後どうするか、具体策を打ち出さないままだ。
河川法で「河川」の水没予定地は、コンクリート製工作物を造れないなど利用の制約がある。再建ビジョンを描けない村の人口は10月末現在1287人。この46年で4分の1に減った。
村では60?70年代、産業の中心だった林業が寂れるのと入れ替わるようにダム関連工事が増え、やがて建設業が最大の雇用の場になった。
建設会社オーナーで村議長も務めた照山哲栄さん(80)は嘆く。「ダムは国が村に押しつけた事業だ。建設業が潤い、コンクリートが村の骨身、血肉になってしまった。いきなり『コンクリートから人へ』と言われても生殺しだ」
村は国のダム中止表明以降、当時の前原誠司・国土交通相が明言した地元補償のための新法作りを再三要望している。
新法は廃止ダムの全国モデルとなるはずだったが、国と熊本県、村の三者協議の場に国交相など政務三役が出席したことは一度もなく、実現の見通しは立っていない。
八ッ場ダムの建設再開に反対する民主党議連会長、川内博史前衆院議員(鹿児島1区)は「そもそも国交省の頭の中には『ダム中止』がないので補償しようという気もない。そんな官僚機構と戦える大臣が民主党にも自民党にもいないのが現状だ」と話す。
サンルダム:工事継続決定 流域自治体「願い実る」 環境保護団体は失望 /北海道(毎日新聞 2012年11月14日)
サンルダム事業継続…国交省が決定(2012年11月13日)
国がサンルダムの事業継続決定 来年度にも本体工事(北海道新聞2012年11月13 日) http://www.47news.jp/localnews/video/2012/11/post_20121113175627.php
国土交通省は12日、民主党政権のダム見直しに伴い、本体工事が凍結された天塩川水系サンルダム(上川管内下川町)について事業継続を最終決定した。道内で再検証の対象となった国直轄の4ダムのうち、国交省の方針が確定したのは初めて。早ければ2013年度にも本体工事に着手する。本体工事凍結解除を決めた12日、地元自治体からは歓迎の声が上がった。
大雨時の河川流出量 森林回復で4割減 八ッ場建設に影響も(東京新聞 朝刊 一面 2012年11月13日)
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大雨時の河川流出量 森林回復で4割減 八ッ場建設に影響も(東京新聞 朝刊 一面 2012年11月13日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012111302000087.html
森林機能が回復した土壌は、はげ山が目立つ荒廃した時期に比べ、大雨が川に流れ出す量を三~四割程度も減らすことが、東京大学演習林・生態水文学研究所(愛知県瀬戸市)の研究で分かった。森林が雨水を浸透させて洪水を和らげる「緑のダム」効果が、実際の観測値を基に実証されたのは珍しい。
国土交通省は森林の保水力を十分反映させずに、今後想定される最大洪水の規模を計算し、利根川上流域の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の根拠としている。専門家は「想定洪水の規模は過大で見直すべきだ」と指摘している。
同研究所の五名(ごみょう)美江特任研究員と蔵治光一郎准教授によると、演習林内の丘陵地(約十四ヘクタール)では降雨量と、降った雨が川に流れ出す直接流出量を観測してきた。
これまでの記録から、木々の乱伐で三割近くが裸地だった一九三五~四六年の荒廃期と、森林面積が九割以上回復し、土壌の再生が進む二〇〇〇~一一年の各十二年間で、総雨量六〇ミリ以上のデータを比べた。
このうち一時間当たりの雨量がピーク時で三〇ミリ以上の強い雨の場合、荒廃期よりも森林回復期の方が雨の流出量が大幅に減少。総雨量が二〇〇ミリで38・3%減り、倍の四〇〇ミリでも25・6%減少していた。保水力の差を見ると、四〇〇ミリで七一・三ミリもあった。
蔵治准教授は「大雨では森林の保水力は効果を発揮しないという国交省の従来の見解を覆す結果が出た。今後は森林政策と治水計画を融合していくことが望ましい」と語る。
八ッ場ダムの是非などを検証している「利根川・江戸川有識者会議」委員の関良基・拓殖大准教授は「利根川流域で最も被害が出た一九四七年のカスリーン台風洪水時、上流域ははげ山も多かったが、
現在、森林は回復し、土壌が発達している。計算をやり直せば八ッ場ダムが不要になるはずだ」と話した。