水源連:Japan River Keeper Alliance

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国交省の100mm/h安心プランについて

2018年2月28日
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短時間の局地的な大雨(いわゆるゲリラ豪雨)に備えるための国交省の100mm/h安心プランについての情報をお伝えします。(嶋津暉之)

最近は都市部のヒートアイランド現象と、地球温暖化の影響のためか、ゲリラ降雨がしばしば発生するようになりました。東京でも時間雨量70~100㎜以上の雨が降ることもあるようになりました。

確率降雨と時間あたり雨量との関係は地域によって異なりますが、たとえば、東京都清瀬市下水道の資料(公共下水道雨水新規事業評価)http://www.city.kiyose.lg.jp/s002/030/040/110/2306.pdf には次のように書かれています。
1年確率降雨:時間あたり30mm降雨(現況の排水能力)
5年確率降雨:時間あたり50mm降雨(下水道の計画排水能力の目標値、計画降雨)
10年確率降雨:時間あたり75mm降雨
30年確率降雨:時間あたり90mm降雨
50年確率降雨:時間あたり95mm降雨

一般に都市の下水道の雨水排水計画は清瀬市と同様、時間あたり50㎜程度が目標値であって、現状はそれを下回っているところが多いので、上記のようなゲリラ豪雨が降れば、確実にあふれることになります。いわゆる内水氾濫です。
ダムは100年確率降雨に対応して計画され、下流域を1/100の降雨の洪水から守るためにダムが必要とされていますが、下流域の都市の下水道の雨水排水計画は50㎜程度を目標としていることが多いので、ダムで洪水調節をしても、1/100の雨が降れば、ダムがあろうがなかろうが、下流域は内水氾濫で溢れることになります。

石木ダムで氾濫を防ぐという川棚川下流域、安威川ダムで氾濫を防ぐという安威川下流域がまさしくそうです。1/100の雨に対応するために石木ダムや安威川ダムが必要とされているにもかかわらず、実際に1/100の雨が降れば、ダムがあっても、下流域は内水氾濫で溢れてしまうのですから、ダム事業者が宣伝するダムの治水効果は虚構であって、誇大宣伝です。

前置きが長くなりましたが、このゲリラ降雨に対応するということで、国交省は100mm/h安心プランwww.mlit.go.jp/river/kasen/main/100mm/ を2013年度から始めています。

市町村および河川管理者、下水道管理者等が特定流域を対象に100㎜/h降雨に対応するプランを策定して、国交省に登録の申請を行い、登録されれば、登録した地域について、流域貯留浸透事業の交付要件が緩和され〔注〕、社会資本整備総合交付金の重点配分を受けられるというものです
〔注〕流域貯留浸透事業において500 ㎥以上の貯留機能を持つ構造を300㎥以上に緩和するというものです。社会資本整備総合交付金の交付対象事業の要件は http://www.mlit.go.jp/common/001197130.pdf をご覧ください。

今までに100mm/h安心プランに登録された流域は21カ所で、全国的にみれば、ほんの一部です。http://www.mlit.go.jp/common/001219561.pdf

いわば経済特区のようにほんの一部の流域だけ、優遇して100㎜/h降雨に対応するようにしようというものです。

しかし、本当に求められているのは、ほんの一部の流域ではなく、ゲリラ豪雨に対して各地域で対応できるような全体の底上げをするような雨水排水対策の展開です。

無用なダムに巨額の公費を使うのをやめて、その公費を喫緊の課題であるこのような雨水排水対策の実施に回すべきです。

霞ケ浦導水事業の控訴審が大詰めに 那珂川の漁業被害が焦点

茨城・栃木両県の那珂川関係の8漁業協同組合が霞ケ浦導水事業の差止めを求めた裁判の控訴審が大詰めを迎えています。来年1月には最終弁論が予定されています。
霞ケ浦導水事業とは、利根川と霞ヶ浦を結ぶ利根導水路、霞ヶ浦と那珂川を結ぶ那珂導水路を建設して、利根川、霞ヶ浦、那珂川の間で水を行き来きさせるようにする事業で、現段階の総事業費は約1900億円です。
利根導水路は1994年に完成し、那珂導水路は工事中で、那珂川の漁協が2008年にその工事の差し止めを求めて、水戸地方裁判所に提訴しました。
2015年7月の水戸地裁の判決は原告敗訴でしたので、漁協側は東京高等裁判所に控訴し、去る9月19日には証人尋問が行われました。
霞ケ浦導水事業の問題点と、裁判で訴えたことを簡単に紹介します。
なお、那珂川はアユの漁獲高で日本一になることが多い天然アユのメッカであり、最下流で合流する涸沼川はシジミの三大産地の一つです。

1  霞ケ浦導水事業について

霞ケ浦導水事業の目的は次の三つです。
① 茨城県・千葉県・東京都・埼玉県の都市用水を開発する。
② 渇水時に利根川、那珂川へ補給する。
③ 利根川、那珂川からの導水で霞ケ浦等の水質を改善する。
しかし、都市用水の需要が減少の一途を辿り、水あまりが一層顕著になっていく時代において、①、②の必要性は失われています。
③の霞ケ浦の水質改善も国交省の机上の計算によるものに過ぎず、導水で霞ケ浦の水質が改善されることはなく、導水事業の目的はいずれも虚構です。
 

2  霞ケ浦導水事業による那珂川の漁業被害
導水事業による那珂川の漁業被害は那珂川から霞ヶ浦への導水、霞ヶ浦から那珂川への送水の両方で引き起こされます。

① 那珂川から霞ヶ浦への導水による漁業被害
最大で毎秒15㎥という大量の水が那珂川から取水され、時には那珂川の流量が取水地点より下流は急に2/3に落ち込みますので、那珂川を遊泳している魚類の生息に大きな影響が与えます。特に影響が大きいのは秋から冬にかけて降河するアユの仔魚 (しぎょ) 、仔アユです。
仔魚とは、卵から孵化したばかりの稚魚の前段階の幼生のことです。 仔アユは自力では遊泳することができないので、流れに乗って、餌の豊富な河口城に到達し、そこでようやく餌を食べます。
仔アユが河口域に到達するまでの間は、腹部に蓄えている卵黄を消費しながら生存するのですが、卵黄は4日分しかないので、その期間内に河口域に到達しないと、仔魚は餓死することになります。
したがって、導水事業による那珂川からの毎秒15㎥の取水により、自力では遊泳できない仔アユが取水口から吸い込まれたり、取水口付近で滞留して餓死することが予想されます。

② 霞ヶ浦から那珂川への送水による漁業被害
霞ヶ浦の水はアオコなど、植物プランクトンの異常増殖で水質がひどく悪化しています。そのような汚濁水が清流の那珂川に最大で毎秒11㎥も送られるのですから、那珂川の水生生物、魚介類、漁業に対して大きな影響を与えることは必至です。
最も懸念されるのはカビ臭物質です。那珂川ではほとんどないカビ臭物質が霞ケ浦では植物プランクトンによって高濃度で生産されており、それが那珂川に持ち込まれて、那珂川の魚類、涸沼シジミをカビ臭くさせ、それらが出荷停止の事態になることが予想されます。
霞ケ浦からの送水は那珂川の渇水時に行われることになっていますので、那珂川でのカビ臭物質の濃度もかなり高くなり、魚介類への影響が避けられません。
さらに、霞ヶ浦の有機汚濁物質(BOD)は那珂川のそれの7~8倍にもなりますので、送水による那珂川の汚濁進行で、那珂川の魚類がダメージを受けることも予想されます。

3  9月19日の証人尋問
9月19日の第7回口頭弁論では、原告側証人の尋問が行われました。
証人は嶋津、濱田篤信さん(元・茨城県内水面水産試験場長)、石嶋久男さん(元・栃木県水産試験場指導環境部長)の3人でした。
私(嶋津)は、霞ケ浦から那珂川への送水によって那珂川の水質がどのように変化するのか、それによってどのような漁業被害が起きると予想されるのかを中心にして証言を行いました。
この証言に使ったスライドの主要なものを解説付きでに掲載しました。お読みいただければと思います。
霞ヶ浦導水裁判の証言スライド(嶋津)抜粋
裁判の結果は予断を許しませんが、裁判長は導水事業の漁業被害について耳を傾けているようであり、一審判決のような一方的な判決にはならないことを期待しています、
この差し止め訴訟を闘ってこられた那珂川漁協の君島恭一組合長が9月26日にご逝去されました。享年84歳でした。
この控訴審は君島さんの弔い合戦になりました。
裁判の結果が那珂川の漁協にとってよいものになることを祈るばかりです。

 

 

1月14日「八ッ場あしたの会」第12回総会記念集会「『ダムに抗(あらが)う』の配布資料

1月14日に高崎で「八ッ場あしたの会」第12回総会記念集会「ダムに抗(あらが)う」を開きました。
この集会では八ッ場ダム、石木ダム、最上小国川ダム等のダム問題をとりあげました。
この集会の配布資料が「八ッ場あしたの会」のホームページ

https://yamba-net.org/40631/     に掲載されました。
32ページの資料です。目次は次のとおりです。
お読みいただければと思います。

第12回総会記念集会「ダムに抗(あらが)う」
資料目次                      ページ

〇 八ッ場ダム、最上小国川ダム、石木ダムの位置図           1

〇 レジメ「ダムに抗う」-主権者として生き抜く人たち(相川俊英)  2~3

〇 日本有数の清流で持ち上がったダム建設計画(相川俊英)      4~6

・もの言わぬ、もの言えぬ地域風土
・漁協組合長はなぜ死を選択したのか
・豊かな日本と貧しい政治
・最上小国川ダムは税金の歪んだ使い方の典型事例ではないか

〇 石木ダム問題を知っていただくために               7~14
1 石木ダムの諸元
2 石木ダム問題の主な経過
3 石木ダムの諸問題
4 必要性が皆無の石木ダム
5 川原(こうばる)地区の土地・家屋の収用
6 地権者らによる石木ダム阻止の闘い
7 あなたにできること

〇 多くの問題、矛盾を抱えながら進行中の八ッ場ダム         15~22
1 失われていくかけがえのない自然
2 川原湯温泉街の現状
3 地すべり対策は十分か
4 鉄鋼スラグ問題
5 ダム建設の目的の喪失
6 更なる事業費の増額
7 工期再延長の可能性
8 八ッ場ダム事業の行く末を見据えよう
[補遺1]八ッ場ダム代替地の安全対策はどうなるのか?      23~24
[補遺2]川原湯温泉の源泉について                25

〇 八ッ場ダム水没予定地の遺跡                    26~29
・特に注目される遺跡
・八ッ場ダム工事関連埋蔵文化財調査について(縄文時代の遺跡)

PFI法改正案を閣議決定/指定管理者手続き簡素化/上下水道でコンセッション後押し

2018年2月25日
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水道・下水道の民営化の動きが心配されているところです。
水道に関しては民営化を可能にする水道法改正案が今国会に再上程されます。
さらに、水道・下水道等の民営化を進めるため、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)の改正も行われようとしています。この法案はすでに国会に上程されています。

内閣府のHPにPFI法改正案の内容が掲載されています。

民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)の 一部を改正する法律案の概要
http://www.cao.go.jp/houan/doc/196_4gaiyou.pdf
次の目標まで掲げられています。
○事業規模:平成25~34年度までの10年間で21兆円(コンセッション事業は7兆円)
〇コンセッション事業件数:水道6件、下水道6件、文教施設3件、国際会議場施設等6

法律の名称が「民間資金等の活用による・・」となっていますが、上下水道の場合は収入が料金から得られますので、民間資金等の活用に主眼があるわけではありません。
民間企業に運用権を譲渡することによって、公営ではなく、民間企業の観点で経営の効率化を図ることを企図したものです。
しかし、上下水道の運用権を民間企業に譲渡した場合に次のように心配されることがいろいろあります。
〇 特に外国資本が入った民間企業の場合、企業の利益を上げるために経営の効率化が行われ、その利益が外国資本の株主に回され、水道・下水道の利用者に還元されないのではないのか。
〇 経営効率化といっても、その多くは人件費の削減によることになり、合理化で、働く人々にしわ寄せがいくのではないのか。正規職員から非正規職員への転換が進むのではないのか。
〇 水道、下水道という生活に身近な施設の運用を民間企業に丸投げするのは危険ではないのか。利益を追求するために様々なサービスが低下していくのではないのか。

フランスのパリ市水道などでは上記のような問題があるため、再公営化が行われています。

少し前の記事ですが、このPFI法の改正について下記の通り、解説されています。
外資を含む民間業者に水道・下水道の運営権を譲渡すれば、どのようなことになるのでしょうか。
運営権の譲渡でどのようなことが予想されるのかを明確にしていく必要があります。

政府/PFI法改正案を閣議決定/二重適用の指定管理者手続き簡素化/上下水道でコンセッション後押し

[日刊建設工業新聞2018年2月13日2面] www.decn.co.jp/?p=97462

政府は9日の閣議で、内閣府が今国会に提出するPFI法改正案を決定した。地方自治体への公共施設等運営権(コンセッション)の普及でネックになっている「指定管理者制度との二重適用」が必要になる際の手続きを簡素化する。コンセッションの普及が空港など他のインフラより遅れている上下水道事業に限定し、自治体の財政負担を減らしてコンセッション導入を後押しする特例措置も設ける。
2013~22年度の10年間で7兆円に上るコンセッション事業の創出目標を達成するため、現行法の運用で普及に支障を来している課題の解決を図ることにした。具体策の一つとして、指定管理者制度との二重適用時の手続きを簡素化する。
現行法では、自治体が公共施設の運営権者として指定する民間事業者に施設の使用許可を出す際、民間事業者を従来の指定管理者としても指定する二重適用の義務が原則発生する。運営権者はコンセッション事業で必要になる手続きに加え、指定管理者としての手続きでも、設定した施設利用料金を自治体に承認してもらうほか、運営権の移転について議会議決を得る必要がある。
改正法案では、運営権者向けに指定管理者手続きを簡素化。施設利用料金の設定は自治体への届け出だけで済むように変更し、議会承認は事後報告だけで済むように変更する。
上下水道事業へのコンセッション導入を後押しする特例措置も設ける。具体的には、自治体が民間事業者から受け取る運営権対価を利用し、上下水道事業の財源として発行していた地方債の元本を一括で繰り上げ返済すれば、国に本来支払うはずだった利息を返済済み分を除いて全額免除できるようにする。この要件として、18~21年度の間に実施方針条例を定めることを規定する。
今国会で成立すれば、改正法のうち上下水道事業へのコンセッション導入支援措置を公布から3カ月以内に施行し、それ以外の規定は半年以内に施行する。

インフラ、民間への売却容易に 自治体の負担軽く
法改正へ 老朽水道など運営効率化

(日本経済新聞 朝刊2018/1/4)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25291440T00C18A1MM8000/

政府は地方自治体が運営する公共インフラの民間への売却を促すためPFI(民間資金を活用した社会資本整備=総合・経済面きょうのことば)法を改正する。上下水道や公共施設の運営権を売却する際、地方議会の議決を不要にし、国から借りたお金を前倒しで返すことも認める。公共インフラの老朽化が進む中、民間の資金を使った低コストの運営に転換し、公共料金の引き下げも視野に入れる。

政府は2017年にPFIを推進する行動計画を改定し、インフラの売却額や投資額などの合計を13年度から22年度の10年間で21兆円にする目標を掲げた。例えば水道事業を巡っては、浜松市の下水道が18年度から20年間、民間運営される予定。事業規模は年20億円程度で、収支次第では利用料が下がる可能性もあるという。
耐用年数を迎える公共インフラは増える見通しだ。国土交通省は補修の目安とする建設から50年以上の下水道が全体に占める割合が、11年度の2%から21年度に7%、31年度に23%に増えると試算する。上下水道などのインフラの維持費は、13年度の3.6兆円から23年度に最大で5.1兆円に膨らむと見込む。
15年度までのPFIの実績は関西国際空港や仙台空港の売却など大型事業で9.1兆円。空港と比べて上下水道は売却があまり進んでいない。狙い通り進まない背景には、手続きの面倒さや自治体が見込む利点の乏しさなどがある。
政府は自治体の売却手続きや財政負担を軽くするPFI法改正案を22日召集の通常国会に提出し、早期の成立・施行をめざす。
いまは案件ごとに議会の議決が必要だが、自治体が条例を定めれば、議決を不要にする。数カ月から年単位で時間がかかる場合があるためだ。
運営権を取得した企業が利用料金を設定しやすいようにもする。いまは所有する自治体の承認が必要だが、届け出るだけで済むように改める。民間のより自由な運営を促し、サービスの効率化や質の向上につなげる。
企業や自治体への国の支援も強める。首相をトップとする相談窓口を設け、支援措置や規制の内容を助言する。運営状況の報告を受け、全国のインフラの民間開放の情報をまとめる。職員が少ない自治体などは窓口の機能が手薄な現状を改善する。
さらに自治体が運営権を売却する際にかかる財政負担を軽くする。国から借りた運営資金を前倒しして返すことを認める。その際、本来は国の利息収入の減少を補うために必要となる補償金の支払いを特例で減免する。全国の自治体が水道事業で国から借りた資金の1~2割が減免対象に当たるとみられる。
インフラの運営権の民間売却は欧州の先進国で進む。内閣府などの調査によると、フランスは上水道の6割、下水道の5割を民間が運営する。スペインは上水道の5割、下水道の6割を民間が運営し、行政コストの軽減につなげているという。

大阪府の安威川ダムは無意味で愚かなダム事業 

2018年2月24日
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去る11月4 日(土)に大阪府茨木市で安威川ダムに焦点を当てたシンポジウム「川は誰のものか。河川法改正20 年。河川行政はかわったか」が開催されました。
安威川ダムは大阪府が茨木市に建設しようとしている治水を主目的とするダムです。
安威川ダムへの公金支出差し止めを求める裁判が2014年から進行しています。
裁判の争点は、①ダムサイトの岩盤がぜい弱でダムの安全性が保証できないのではないか、②治水上の必要性が本当にあるのか、ダムが役に立つのかです。
後者の治水問題に関しては嶋津が原告弁護団への技術的な支援を担ってきており、今回のシンポジウムでもその報告を行いました。

この報告に使ったスライドを

安威川ダムは役に立つのか に掲載しましたので、ご覧いただければと思います。
安威川ダムは大阪の市街地に建設される特異なダムで、総貯水容量が1800万㎥もあり、補助ダムとしてはかなり大きいダムです。
他のダムと同様に、工期の延長と事業費の増額が繰り返されてきていて、工期は当初の2008年度完成が2023年度まで延期され、事業費は当初の836億円から1676億円へと、約2倍になりました。
安威川ダムの治水問題で最も重要な問題は、100年に1回の降雨による洪水への対応で安威川ダムが必要とされているものの、実際には1/100の降雨があると、安威川ダムがあっても、安威川・神崎川流域の大半のところが氾濫してしまうことです。
(安威川は下流の神崎川につながっていて、一連の川ですので、安威川・神崎川と呼ぶことにします。)
安威川ダム下流の安威川・神崎川流域の大半は低地部であって、内水氾濫域です。
内水氾濫域は降った雨がはけ切れずに溢れる地域で、川からの越水による氾濫ではないので、安威川ダムで川の水位を下げても氾濫を防ぐことができません。そのことは裁判で被告の大阪府も認めました。
内水氾濫域については河川整備計画では1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっていますので、1/100の雨が降れば、安威川ダムがあっても確実に氾濫します。
また、安威川・神崎川の支川の多くは、1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっており、整備が完了しても1/100の雨が降れば、やはり氾濫します。
したがって、安威川ダムが完成しても、1/100の雨が降れば、安威川・神崎川流域の大半のところで氾濫することになります。
1/100の雨に対応するために、安威川ダムが必要とされていながら、実際には安威川ダムができても、下図のとおり、流域の大半で氾濫することになります。
1536億円という巨額の公費を使ってダムを建設しても、目的とする1/100の降雨への対応ができないのですから、何のためにダムをつくるのか、わかりません。

さらに、治水に関しては次のような問題もあります。

〇 ダム推進のために、来る可能性がほとんどない、極めて過大な 洪水目標流量1,850㎥/秒(相川基準点)が机上の計算で設定されており、実際の1/100流量は河道整備で対応できる1,250㎥/秒を下回る可能性が高い。
〇 耐越水堤防工法を導入すれば、安威川・神崎川の流下能力が飛躍的に大きくなり、大洪水への対応が可能となるだけでなく、仮にそれを超える洪水が来ても、壊滅的な被害を防ぐことができるようになる。しかし、有効な治水対策である耐越水堤防工法がダム事業の推進のために表舞台から消されている。
〇 安威川・神崎川流域の実際の水害被害額(水害統計)の166倍という被害額の架空計算から安威川ダムの費用便益比が求められ、それが安威川ダム推進の根拠となっている。
〇 大阪府は治水効果が乏しい安威川ダムの建設ばかりに力を入れ、流域住民の安全を守るために必要な河川管理を疎かにし、河床堆積土砂の撤去に取り組んでいない。
このように無意味で愚かなダム事業は中止されなければなりません。安威川ダムの建設を中止させ、流域住民の安全を真に守ることができる治水対策の実施と河川管理を大阪府に求めていくことが必要です。
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