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長崎県・石木ダム計画見直し、著名人が力添え ラジオ番組やライブ

2017年1月13日
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石木ダムの見直しを求める活動の様子を伝える佐賀新聞(共同通信)の記事を掲載します。

長崎県・石木ダム計画見直し、著名人が力添え

ラジオ番組やライブ

(佐賀新聞2017年01月12日 16時55分) http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/394632

石木ダム建設予定地
石木ダム建設予定地
野外ライブが開催された石木ダムの水没予定地
=2016年10月、長崎県川棚町
(写真)野外ライブが開催された石木ダムの水没予定地 =2016年10月、長崎県川棚町

 長崎県の石木ダム計画(川棚町)の見直しを求める活動に、クリエーターのいとうせいこうさんや音楽家の小林武史さんといった著名人が加わっている。

環境問題に取り組むアウトドア用品メーカーの「パタゴニア」も新聞に意見広告を出すなどして議論を呼び掛け、水没予定地に残って反対を続ける住民へ力添えの輪が広がっている。

 石木ダムは石木川が流れ込む川棚川の洪水防止と、川棚町に隣接する佐世保市の安定した水源の確保を主な目的として、2013年に国が事業認定した。

 だが、予定地の13世帯約60人は「河川改修で治水対策はできる上、人口減少で水需要も減り、ダムは必要ない」として移転を拒否。美しい棚田やホタルが舞う清流など「日本の原風景」と呼べるような山あいの集落の抵抗は、少しずつ共感を集めてきた。

 いとうさんは、15年に反対運動のことを聞いて現地を訪れて以降、ラジオ番組などで発信している。「エネルギーや環境の問題など、石木ダムには日本各地が抱える課題が象徴的に含まれている。ダムに多額の税金をかけるのは非合理だと思う」と話す。

 小林さんは昨年10月、水没予定地で「失われるかもしれない美しい場所で」と題した野外ライブを催した。

趣旨に賛同した歌手SalyuさんやTOSHI-LOWさんらがステージに立ち、約700人の観客が県内外から足を運んだ。小林さんは「同じ日本人としてつながっている。人ごととは思えなかった」と協力した理由を語る。

 パタゴニアは、ダムや水問題を取り上げたシンポジウムを長崎や東京で定期的に開いている。辻井隆行日本支社長は「ダムの建設費や維持費、環境への影響についてオープンな場でもっと議論すべきだ」と指摘する。【共同】

■石木ダム 長崎県と佐世保市が川棚川支流の石木川に計画する多目的ダム。1972年に県が調査を始めたが、水没予定地域の反対で停滞。規模を縮小し、2013年に国が事業認定した。

これまでに約8割の用地取得が済んだが、13世帯は応じず、県は14年から強制収用の手続きに入った。住民側は15年、事業認定の取り消しを求めて長崎地裁に提訴。県側は工事現場での住民の抗議行動を禁じようと、地裁佐世保支部に仮処分を申し立てている。【共同】

石木ダム工事差止仮処分申立、不当却下

2016年12月28日
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12月20日、長崎地方裁判所佐世保支部、申立を却下

この石木ダム工事差止仮処分申立は、居住者らに合理的な説明をすることなく石木ダム事業を強行する長崎県及び佐世保市に対して,石木ダム建設予定地とされているこうばるの住民,川棚町民,佐世保市民他全国の505名が,「石木ダム建設工事及びこれに伴う県道等付替道路工事が不必要,違憲・違法な工事であり,その不必要,違憲・違法な工事によって,各債権者の生命身体の安全,総体としての人間の存在そのもの,人格権等を侵害され,且つ,これらの権利が一度侵害された場合その回復は不可能な権利である」として,その続行の差し止めを、2016年2月2日に長崎地方裁判所佐世保支部に求めたものです。
これまでに3回の審尋が行われましたが、 起業者である長崎県と佐世保市が「石木ダムの必要性」についての審尋を拒否したことから、2016年9月8日の第3回審尋で結審していました。

決定は下記の通りです。

決定
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 本件申立てをいずれも却下する。
2 申立費用は,債権者らの負担とする。
理由
第1 申立の趣旨
第2 事業の概要
第3 争点に対する判断
第4 結論

却下とした理由は、「第3 争点に対する判断」に書かれています。それによると、およそ、
1, 仮処分は, 「債権者に生ずる著しい損害文は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」(民事保全法23条2項)にのみ認められる。
2,債権者らが主張する各被保全権利の侵害が現に差し迫り,本件各工事の続行を禁止しなければ被保全権利の侵害を予防することのできない緊急の必要性があるとは認められない。
となっています。

「権利の侵害が現に差し迫ってはいない」というのが却下の理由ですが、これは現地での「付替道路工事中止要請行動」をまったく無視したものであり、現状の緊急性に対する認識を誤っています。
申立人と弁護団は12月21日に即時抗告する旨の声明を発表し、今日12月28日にも即時抗告を予定しています。(即時抗告は2週間以内なので期限は1月2日です。)

関係資料

2016年12月20日付決定書 除債権者目録(個人情報につき債権者目録は削除しました)
長崎地方裁判所佐世保支部による決定書
仮処分却下決定に対する声明
  決定に対する、石木ダム反対長崎県内5団体と弁護団の連名による声明
2016年12月24日の長崎新聞・論説
却下を厳しく批判すると共に、長崎県に見直しを迫る論説

工事差止仮処分申立、長崎県・佐世保市、必要性の審議拒否、結審!?

2016年12月28日
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  • 9月8日、第3回工事差止仮処分申立審尋。
    長崎県・佐世保市、必要性の審議拒否、結審

9月8日午後2時から長崎地方裁判所佐世保支部で第3回工事差止仮処分申立て審尋が開かれました。債務者側は事業の必要性についての審尋は不要としてこれ以上の審尋を拒んだため、裁判所は審議はつきたとして、結審となりました。決定は年内に出されることになりました。
裁判所は3ヶ月をかけて判断を下すとしていることから、申立者が受けるであろう権利侵害にも踏み込むことと思われます。

債務者側が「事業の必要性についての審尋は不要」としていることは許しがたいことです。
一連の工事が必要であるならばその説明責任を何故、果たそうとしないのでしょうか!!

債権者が提出した書類

準備書面6(被保全権利についての追加主張)改訂版
準備書面7(44条関係)
準備書面8(被保全権利についての追加主張②) 

債務者が提出した書類

県準備書面1
第2準備書面(佐世保市) 

写真家が県に抗議 石木ダム仮処分で写真無断使用

2016年12月27日
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12月27日 長崎県は石木ダム建設計画で、地権者らによる工事妨害行為の禁止を求めて仮処分を申し立てた際、写真家・村山嘉昭さんの写真集の写真を無断使用しました。
長崎県の形振り構わぬやり方に心底からの怒りを覚えます。

石木ダムの写真使用で抗議

長崎県が、川棚町に計画している石木ダムの建設をめぐって、地権者らが妨害しないよう求める仮処分を裁判所に申し立てた際、工事に反対する住民を写した写真集の写真を、無断で、裁判所に提出したとして、撮影した写真家が県に抗議文を提出しました。
石木ダムをめぐっては、建設に反対する地権者などが工事現場で座り込みを続けていて長崎県はことし10月、地権者らが工事を妨害しないよう求める仮処分を長崎地方裁判所佐世保支部に申し立てています。
これについて、石木ダムや住民を撮影している写真家の男性が、写真集の写真を、県が、無断で、裁判所に提出したとして県に抗議文を提出しました。
男性や県によりますと、提出した写真は、現場で抗議活動をする住民が写った4枚だということで男性は、「ダム建設に反対する住民の思いを伝えようと撮影したのに、逆の意図に使われ不利益になりかねない。裁判での使用は住民も自分も想定しておらず、今後の撮影活動にも大きな影響が出る」と批判しています。
一方、長崎県は、NHKの取材に対し、抗議活動をする住民を特定するための証拠として裁判所に提出したと説明していて「写真集は公に出版されており、法的に問題はない」と話しています。

 

 

 

 

 

鬼怒川決壊1年 「国の失政」疑念今も

2016年12月26日
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12月26日 旧・建設省は2000年に「河川堤防設計指針(第3稿)」をつくって、耐越水堤防(フロンティア堤防)の普及を図ろうとしました。しかし、耐越水堤防が川辺川ダム等のダム事業の推進の妨げになると見た国交省はこの指針を2002年に撤回しました。

安価な耐越水堤防の普及が進められていれば、昨年9月の鬼怒川水害の堤防決壊を防ぐことができていたかもしれません。
この問題を取り上げた記事を掲載します。

<取材ノート いばらき2016>鬼怒川決壊1年 「国の失政」疑念今も

(東京新聞2016年12月26日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201612/CK2016122602000165.html

(写真)鬼怒川決壊から1年の今年9月10日、決壊現場に集まり手を合わせる地元住民=常総市で

写真

 「計画規模を超えた洪水による被害を最小限に抑え、危機的状況を回避する」「越水に対しても、破堤しにくい堤防の整備が求められる」

 一見すると、常総水害の鬼怒川決壊についての記述に思える。しかし、これらは十年以上前、旧建設省が毎年、白書に繰り返し書いていた内容だ。国は当時から、今回のような堤防の決壊を危惧し、対策の必要性を指摘していた。

 鬼怒川決壊は、川の水が堤防を越える「越水」によって、住宅地側から崩れたのが原因。堤防決壊は、より大量の水が住宅地に流れ込み、勢いも強く、被害は大きい。鬼怒川決壊の現場では、一人が亡くなり、住宅数戸が流失した。

      ■

 多くの識者は常総水害を「想定外の雨が原因」としたが、国土交通省OBは「国は『想定外の雨』を想定していた」と語った。

 ダムは上流で水を貯(た)め、川に流れる水量を減らす。しかし、想定以上の雨で貯水能力を超えれば、川の水位は上がる。堤防を越える「越水」が起き、堤防決壊の可能性が高まる。

 このため、建設白書は一九九六年から五年連続で、想定外の雨や越水対策の必要性を明記。二〇〇〇年、決壊しにくい構造の「フロンティア堤防」の設計指針が全国に通知された。全国で整備が計画され、四つの河川で完成した。

 しかし、〇二年に設計指針の通達は急に撤回され、フロンティア堤防の整備は立ち消えに。白書に撤回理由は書かれていない。

 取材を進めると、複数の国交省OBや学識者は「当時、ダムの反対運動が激しく、堤防強化がダム不要論につながるのを恐れたため」と証言した。

 国交省の担当者は「効果がはっきりしないため」と説明した。「経過があまりにも不自然だが」と尋ねると、「過去に、そういう取り組みをした人たちがいたのは承知している。見解の相違」と話し、歯切れが悪くなったように感じた。

      ■

 発生から一年後の今年九月、決壊現場で開かれたイベント会場を訪れた。国交省が、ダムがなかった場合の被害予想図を展示していた。浸水面積はもっと広かったはず、とダムの効果をPRしていた。一方、堤防が決壊しなかった場合の被害予想は、分かっていないという。

 国交省は現在、鬼怒川で堤防の集中整備を進めている。しかし、「決壊しにくい構造の堤防にしないと、また同じことが起きうる」と訴え続けている国交省OBもいる。

 鬼怒川決壊では避難指示をめぐる常総市の混乱が問題になり、堤防強化を撤回した国の政策転換は、注目されなかった。決壊は、河川政策の間違いの証明ではなかったのか。十分に検証されたとは思えず、疑念は今も消えない。 (宮本隆康)

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 二〇一六年もあとわずか。今年県内で起きた出来事を記者が取材ノートをもとに振り返る。

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