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霞ヶ浦導水の情報

東京都水道の水需要の実績と予測(大きく減少してきた実績と架空の予測)

一極集中が進む東京都ですが、前にもお伝えしたように、水需要の動向は全く別で、水需要が大きく減少してきました。

東京都水道の最新の水需要データを入手しましたので、水需要の実績と予測の最新のグラフを掲載します。

図1 東京都水道の配水量の実績と予測

図2 東京都水道の一人当たり配水量の実績と予測

図3 東京都水道の給水人口の実績と予測

図1のとおり、東京都水道の一日最大配水量はピーク時(1992年度)には617万㎥/日もありましたが、2019年度(8月までの最大値)は459万㎥/日になりました。

これは、図3のとおり、給水人口は増加し続けてきているのですが、一方で、図2のとおり、一人当たり一日最大配水量がピーク時には522㍑/日もあったのが、340㍑/日程度まで減ってきたことによるものです。

一人当たり一日最大配水量の減少率は約35%にもなります。凄まじい減り方です。

しかし、東京都水道局は八ッ場ダム事業と霞ヶ浦導水事業に参画する理由をつくるため、図1のとおり、水需要の架空予測を続けています。

今年2月の「見える化改革」の予測でも将来のピーク時には600万㎥/日近くまで急増するとしています。

水源開発事業に参画するための架空予測がまかり通っているのです。

魚類迷入試験が開始 霞ケ浦導水事業、那珂川から取水し影響検証へ

2019年7月9日
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霞ヶ浦導水事業の工事中止を求める裁判は昨年4月末に東京高裁で那珂川漁協と国土交通省との間で和解が成立し、漁業への影響がないようにする条件が和解条項に盛り込まれました。
国土交通省は7月2日、那珂川からの取水試験を行って、魚類への影響を調査することを下記の通り、発表しました。
那珂川から霞ヶ浦への計画導水量は15㎥/秒ですが、その導水路は一部しかできていないので、完成済みの桜川への導水路を使って3㎥/秒の規模で取水試験を行うというものです。

国土交通省・霞ヶ浦導水工事務所の発表 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/dousui_00000034.html
魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。

この試験通水が7月8日から開始されました。3年間の試験通水です。その記事を掲載します。
那珂川から霞ヶ浦への取水施設は半分程度しかできていないので、試験験水の結果を見て、取水施設の残りの工事に取りかかるという話になっています。
那珂川から霞ヶ浦への那珂導水路は1/3しかできていませんが(43.1kmのうち、14.2km完了)、那珂導水路の残りの工事を試験通水と並行して進めるので、導水事業の完成予定は今のところ、2023年度となっています。
導水事業の実際の完成はかなり遅れるのではないかと思いますが、東京高裁の裁判で那珂川の漁協が折角、和解に持ち込んだのに、事業がどんどん進んでいくようで、先行きが心配されます。

 

魚類迷入試験が開始 霞ケ浦導水事業、那珂川から取水し影響検証へ【動画】
(下野新聞2019/7/9 5:00) https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/192533

(写真)那珂川から導水した水を桜川に流す桜機場=8日午後、水戸市河和田町 (写真)魚類迷入試験が始まった那珂川取水口。完成した水門4門のうち、手前の2門から那珂川の水が取水された=8日午後、水戸市渡里町町(写真)魚類迷入試験が始まった那珂川取水口。完成した水門4門のうち、手前の2門から那珂川の水が取水された=8日午後、水戸市渡里町
(写真)那珂川からの試験通水が始まった取水口。魚類の吸い込み量などを調べる迷入試験が行われる=8日午後
茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省霞ケ浦導水工事事務所は8日、水戸市渡里町の那珂川取水口から試験的に取水し、魚類の迷入(吸い込み)量やその対策の効果を調べる試験を始めた。事業は1984年の着工から35年を経て、那珂川から初めて取水する段階を迎えた。
和解後初の「意見交換」 国交省、魚類迷入試験など説明
同事務所によると、魚類迷入試験は水門8門からなる取水口のうち、試験のために先行整備した下流側の4門を使用する。3年程度かけて対策の在り方を検証した上で、2023年度末までに残り4門を含め事業を完成させる計画。
この日は午前10時半から午後4時まで、4門のうち最も下流側の2門から毎秒1・5トンを取水。地下トンネルを通り、約5キロ離れた桜機場(水戸市河和田町)まで運ばれ、桜川へ放水された。
今後は徐々に取水の頻度や量を増やし、8月末からは24時間単位などで取水する予定。漁協関係者が特に吸い込みを懸念するアユの仔魚(しぎょ)(幼魚)が降下する秋は夜間を含め取水し、どの時期や時間帯に取水を停止すれば吸い込みをより防げるか分析する。
事業を巡ってはアユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして09年、本県と茨城県の漁連・漁協5団体が取水口建設差し止めを求め、国を提訴。18年4月に和解が成立し、工事が再開した。
同事務所は「試験結果などを示し、漁協関係者の皆さまには引き続き丁寧に対応していきたい」としている。


茨城)魚類の吸い込み防止試験を開始 霞ケ浦導水事業

(朝日新聞茨城版2019年7月9日03時00分) https://digital.asahi.com/articles/ASM784VT8M78UJHB01M.html

(写真)試験施設の取水口=水戸市渡里町の那珂川
那珂川と利根川を霞ケ浦を経て地下トンネルでつなぎ、水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省は8日、取水時に魚類を吸い込まないための試験を始めた。那珂川から桜川や千波湖に送水し、3年程度かけて有効な対策を探る。
霞ケ浦導水工事事務所(土浦市)によると、この日午前、水戸市渡里町の那珂機場に建設した施設で、那珂川からの取水を始めた。取水口は4門あり、前面に稚魚を吸い込まないための網のほか、川底の部分に底生魚が入り込まないような「魚返し」などを設けている。
試験期間中は、アユやサケ、サクラマスのほか、ウナギ、モクズガニといった魚種を対象に、どれほど取水口の中に入り込むのかや、迷い込み防止にはどのような対策が効果的なのかを探るという。
霞ケ浦導水事業は、那珂川から霞ケ浦までの延長約43キロと、霞ケ浦と利根川をつなぐ約2・6キロの導水路からなる。両河川の水をやりとりすることで、渇水時に飲み水や工業用水を確保したり、霞ケ浦や桜川などの水質浄化をはかったりする狙いがある。2023年度の完成見込みで、工事の進捗(しんちょく)状況は約40%という。(庄司直樹)


霞ケ浦導水 那珂川から初の取水 魚吸い込み試験開始

(茨城新聞2019/7/9(火) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190709-00000003-ibaraki-l08

(写真)魚類迷入試験に伴い、水戸地下トンネルに初めて水を通した那珂川の取水口=水戸市渡里町
霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶ霞ケ浦導水事業で、国土交通省は8日、那珂川から初めて取水した。取水による魚の稚魚などの吸い込み量を調べる「魚類迷入(吸い込み)試験」を開始し、那珂川と桜川を結ぶ那珂導水路水戸トンネル区間(6・8キロ)で水を通した。試験は月に数回ずつ、午前8時から午後6時までの時間帯に行う。1984年の建設着手から35年を経て、初めて那珂導水路に水が流れた。

同日午前10時半、水戸市渡里町に完成した那珂川の取水口が開門されると、直径約4メートルの導水管に水が流れ込んだ。同市河和田の桜川の放流口の水門も同時に開かれ、那珂川の水が桜川に勢いよく放出され始めた。初日の通水は5時間半行われ、水門は午後4時に再び閉じられた。

国交省関東地方整備局霞ケ浦導水工事事務所によると、事業計画水量は最大で毎秒3トンの導水だが、当面は1・5トン。9月に3トンまで増やす予定だ。

霞ヶ浦導水事業:魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始

2019年7月2日
カテゴリー:

霞ヶ浦導水事業に関する情報をお知らせします。
霞ヶ浦導水事業の工事中止を求める裁判は昨年4月末に東京高裁で那珂川漁協と国土交通省との間で和解が成立し、漁業への影響がないようにする条件が和解条項に盛り込まれました。
国土交通省は今日(7月2日)、那珂川からの取水試験を行って、魚類への影響を調査することを下記の通り、発表しました。試験の内容は魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始の通りです。
那珂川から霞ヶ浦への計画導水量は15㎥/秒ですが、その導水路は一部しかできていないので、完成済みの桜川への導水路を使って3㎥/秒の規模で取水試験を行うというものです。
3年間の試験ですが、その結果によって導水路の工事が再開されますので、試験の経過を厳しく監視することが必要です。

国土交通省・霞ヶ浦導水工事務所の発表 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/dousui_00000034.html
魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。

霞ヶ浦導水事業において、那珂川の魚類迷入試験施設が完成したことから、令和元年7月8日に魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。
霞ヶ浦導水工事事務所
1.試験の目的
霞ヶ浦導水事業において、那珂川からの導水の本格運用の方法を決定するに当たり、魚類の迷入(吸い込み)を防止する魚類迷入防止対策(案)について、魚類迷入防止効果を科学的に評価・検証することを目的として実施するものです。
2.試験の実施時期
令和元年7月8日(月)~(3年間程度を予定)
3.試験の実施場所
茨城県水戸市渡里町字枝内地先
4.試験の概要
添付のとおり
5.その他
・那珂樋管設置魚類迷入(吸い込み)防止対策効果試験検討委員会の経緯等
http://www.ktr.mlit.go.jp/dousui/dousui_index003.html

別紙・参考資料 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000750538.pdf

漁協、国と和解成立 本格稼働まで意見交換 導水訴訟控訴審(記事の続き3)

2018年4月30日
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霞ヶ浦導水訴訟の和解成立について下野新聞の詳細な記事がありますので、掲載します。
霞ヶ浦導水事業のうち、霞ケ浦と利根川を結ぶ利根導水路は1994年3月に完成しましたが、1995年9月の試験通水で霞ケ浦の水を利根川に送水したところ、利根川でシジミの大量死が起きたため、その後、この利根導水路はほとんど使われておらず、いわば「開かずの水路」になっています。
今後、霞ヶ浦と那珂川を結ぶ那珂導水路が仮に完成しても、那珂川で漁業被害が起きることは避けられず、那珂導水路もまた「開かずの水路」になることが予想されます。

漁協、国と和解成立
本格稼働まで意見交換 導水訴訟控訴審
(下野新聞 2018年4月28日)

アユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、本県と茨城県の漁連・漁協5団体が国に霞ケ浦導水事業の那珂川取水口建設差し止めを求めた住民訴訟控訴審は27日、東京高裁で和解が成立した。国が漁協側との「意見交換の場」を設けることなどを条件に、漁協側が請求を放棄する。2009年の水戸地裁への提訴から約9年。着工から34年がたつ巨大公共事業の是非を問う住民訴訟が終結した。
この日の口頭弁論で都築政則裁判長は「和解は終着点でなく出発点。双方が率直かつ冷静に意見交換し、納得のいく結論を導くことを希望する」と述べた。
和解条項では、国は事業が本格稼働するまで年1回、原則7月に意見交換の場を設けることを規定。アユの稚魚などが取水口に吸い込まれるのを防ぐため、10~1月は那珂川からの夜間取水を停止することや、霞ヶ浦から那珂川への少量の試験送水(逆送水)を行い魚類への影響をモニタリンクすることも定めた。
本県の那珂川流域4漁協がつくる県那珂川漁協連合会の佐藤文雄会長は和解後の記者会見で「長く裁判が続いたが、今後は国とよく相談ができるので和解を前向きに捉えている。最も被害が懸念されるアユについて特によく話し合いたい」と述べた。漁協側の谷萩陽一弁護団長は「漁業への影響を防ぐという訴訟の目的を達成でき、成果があった」と強調した。

国側の国土交通省関東地方整備局の泊宏局長は「和解条項を踏まえ、引き続き漁業関係者に丁寧に対応し事業の推進に努める」などとコメントした。
事業を巡っては、漁協側が事業による漁業権侵害を訴え提訴。一審水戸地裁は15年7月に請求を棄却し、高裁は今年1月に和解を勧告していた。
(石井賢俊)

和解条項のポイント
●国は原則として毎年7月に漁協関係者と意見交換の場を設ける
●魚類の吸い込みを防ぐため、国は10~1月は那珂川からの夜間取水を停止する
●国は霞ケ浦から那珂川へ少量の試験送水(逆送水)を行い、水質への影饗をモニタリングする
●これらは事業の本格運用の方法が決まるまでの問の取り決めである

和解は苦渋の決断 悪影響あれば中止を 解説
(下野新聞 2018年4月28日)

取水口の建設差し止めを求めてきた以上、漁協側にとって和解は苦渋の決断だった。だが長年をかけて国から引き出した霞ケ浦導水の試験運用時の条件の数々は、今後につながる大きな成果と言える。
「漁業権侵害の具体的危険があるとまでは言えない」(水戸地裁)として2015年の一審判決は、漁協側が全面敗訴した。控訴審では、漁協側はアユに関する独自調査を行うなどして漁業被害の懸念を粘り強く訴え続けた。結果、和解条項に盛り込まれた夜間取水停止期間は、国の当初の主張を上回る内容となった。
今回の和解で漁協側は事業を容認する形となるが、導水の運用開始後の悪影響の有無を見極め、引き続き国と相対する。国は、和解の条件となった「意見交換の場」の設置や、水質モニタリングを早期に始める必要がある。
事業で霞ヶ浦の水が那珂川へ入った時に、何が起きるのかは未知数だ。汚濁した水が水産資源や生態系へ打撃を与える可能性は消えていない。国は和解条項を厳守するとともに、情報開示を徹底し、悪影響があった際には、中止も視野に事業見直しを行うべきだ。
「清流・那珂川を、孫の代まで守る」。今後も揺るがない漁業関係者の思いを国は忘れてはならない。       (手塚京治)

霞ケ浦導水事業
霞ケ浦の水質浄化と那珂川、利根川の渇水対策、首都圏の水道・工業用水確保を目的に、霞ヶ浦と両河川を総延長約46㌔の地下トンネルで結び水を行き来させる計画。総事業費1900億円。2017年度末で1534億円を投入済みだが、完成区間は16.8㌔にとどまる。現在のエ期は23年度まで。

霞ヶ浦導水事業を巡る経過
1984年4月▶着工
91年3月▶霞ヶ浦と利根川を結ぶ利根導水路がほぼ完成
99年1月▶霞ヶ浦と那珂川を結ぶ那珂導水路の一部約6.8㌔がほぼ完成
2008年1月▶栃木、茨城両県の漁協が那珂川取水口建設中止を求める共同声明を発表
3月▶両県漁協が、取水□の建設中止を求める仮処分を水戸地裁に申し立て
09年3月▶漁協側が取水口建設差し止めを求め水戸地裁に提訴
10年3月▶取水口工事(陸上部)完成
14年8月▶ダム事業の見直し検証で国土交通省が事業継続を決定
15年3月▶漁協側が、差し止め判決を求める署名約1万3千人分を水戸地裁に提出
7月▶地裁判決で漁協側の請求棄却、漁協側は月内に控訴
16年1月▶東京高裁で控訴審第1回口頭弁論
3月ごろ▶国交省が事業の工期を2023年度まで延長
17年7月ごろ▶高裁が水面下で漁協側に和解を打診
18年1月▶高裁が口頭弁論で和解勧告、和解協議始まる
3月▶高裁が和解案提示。応じるかどうか、国と漁協側双方に4月25日までの回答求める
4月27日▶和解成立

アユ守る 決意不変  控訴審和解成立
敗訴なら何も残らない 今後見据える漁協関係者
(下野新聞 2018年4月28日)

約50席の傍聴席が埋め尽くされた812号法廷。和解条項を読み上げた都築政則裁判長は、漁協と国側に諭すような口調でこう語り掛けた。「今後、双方が(和解案で決めた)意見交換の場で意見を述べ合っていくことになる。和解は終着点ではなく出発点でもある」
提訴から約9年間、法廷闘争を続けた原告5団体のうち4団体の代表が記者会見に臨んだ。那珂川漁協(茨城県)の添田規矩組合長(76)は「これからが本当の協議の場。自然と環境を守っていく」と力を込めた。
本県那珂川漁協連合会の佐藤文男会長(73)も「これからも那珂川を守っていくために一生懸命頑張っていく」と報道陣に訴えかけた。漁協側の意見を国に伝え、問題点を話し合う協議の場ができる和解条項自体は評価している。『特にアユの遡上環境や稚魚の保護は厳重に訴えていく』と強気の姿勢に変わりはない。
一方で「国が強引に事業を進めず、最初から話し合いをしていればこんなに長くかからず、もっといい(解決の)方法が見つかった」との思いも拭えない。
和解は苦渋の決断だった。本県の大木一俊弁護士は会見で「完成しても無用の長物になる可能性もある」と疑問を呈した。事業が本当に必要なのか、国が言うとおり環境への影響は軽微なのか。疑念は消えない。
一方で「敗訴すれば何も残らない。それより、事業は遂行されてしまうが、我々の意見を取り入れさせる方を選んだ」と谷萩陽一弁護団長は苦悩をにじませた。記者会見には出られなかったが、これまで本県の反対運動をけん引してきた同連合会の金子清次参事(83)は和解を受け「国は我々の意見を取り入れて、きちんとした手続きで進めるべきだ」とくぎを刺した。

国側反応 「課題クリア」工事再開へ 事業費、工期変更せず
霞ケ浦導水事業を巡る住民訴訟が終結した27日、国側は「施工に向け、一つの課題をクリアした」と胸をなで下ろした。訴訟で中断していたエ事は再開へかじを切る。1984年に着工した事業は、総事業費の8割を費やしながら、水が行き来する地下トンネルの完成は4割にとどまる。国は「事業費や工期の変更は考えていない」としているが、予定通り5年後完成するどうか疑問が残る。
和解を受け、国土交通省関東地方整備局は今後の事業の見通しについて「和解直後であり、具体的な事は言えない」とした上で「工事はすぐ再開できるものではない。課題や条件を整理し適切な施工計画を立てることになる」と話した。
現在の工期は2023年度までで、地下トンネル約30㌔などの整備を進める予定。費用は総事業費1900億円のうち、残り360億円余りとなっているが、担当者は「着工当時と比べ施工技術は向上しており、現在の事業費で完成できると考えている」「今のところ工期を延長する議論はない」と話した。
一方、事業の進め方に関しては「強引な進め方が訴訟を招いたという批判を受け止め、漁協関係者とは丁寧に協議していく」と強調した。ただ和解の条件の一つとなった国と漁協側との「意見交換の場」の設置時期については「協議していく」として明苔を避けた。       (手塚京治)

(写真)和解成立後の記者会見で「那珂川を守る」と語る本県那珂川漁協連合会の佐藤会長(左から2人目)=27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

霞ヶ浦導水で和解 国 漁業に配慮 事業継続 控訴審 (記事の続き2)

2018年4月28日
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霞ヶ浦導水訴訟の和解成立について朝日新聞、毎日新聞、下野新聞の記事を掲載します。

霞ヶ浦導水で和解 国 漁業に配慮 事業継続 控訴審
(朝日新聞茨城版2018年4月28日)

2河川を地下トンネルで結んで水をやり取りし合う霞ケ浦導水事業をめぐり、茨城、栃木両県の漁協関係者が国に建設差し止めを求めた訴訟の控訴審の和解が27日、東京高裁で成立した。運用などで国は一定の譲歩をしたが、事業は継続する。
(比留間陽介)

和解条項の骨子
・国側は漁業への影響を配慮し、漁協側の意見を尊重する
・那珂川からの夜間の取水の停止期間を10月1日~1月末とする
・霞ヶ浦から那珂川への「逆送水」は渇水時に限り、農業用水などの「水利利用者から送水の要請があった場合に限る」とする
・アユの仔魚の降下数や塩分濃度などのモニタリング調査の定期的な実施
・上記の運用方法は「本格運用」までとする。漁協側と国側の意見交換の場を設置し、本格運用での運用方法を決める

知事「大変意義ある」
「適切な内容の和解ができた。和解が双方にとって有益なものになりますよう希望します」。東京高裁の都築政則裁判長は和解条項を読み上げ、原告、被告双方に呼び掛けた。2009年の水戸地裁への提訴から9年―。大型公共事業をめぐる訴訟にようやく終止符が打たれた。
漁協側の谷萩陽一弁護団長は和解後の会見で「(国側が)こちらの条件をかなりのんだ。(漁業への)影響が出ることを認めざるを得なかったのでは」と振り返った。その上で国側に対し「(今後)真面目に、正直に、誠実にやって欲しい」と注文をつけた。
一方、国土交通省は泊宏関東地方整備局長が「引き続き漁業関係者へ丁寧に対応するとともに関係機関と連携し、事業の推進に努める」とのコメントを出した。事業費の4割強を負担する県は大井川和彦知事が「相互に理解が深められたものであり、大変意義がある。関係者の理解のもと事業が円滑に進められることを期待している」とした。

分かれる地元の反応
地元からは和解を評価する声が出る一方、複雑な思いも浮き彫りになった。
涸沼などを漁場とする大涸沼漁協の石崎豊彦さん(62)は「シジミがカビ臭いと言われるのが怖かったが、調査やモニタリングも盛り込まれて、これで漁に励みが出る」と話す。約35O人の組合員のうち180人程度がシジミ漁だけで生計を立てる。逆送水による塩分濃度の変化やカビ臭物質の流入の影響は大きい。
東日本大震災後の原発事故による風評被害で当時は赤字が続き、いまも漁を取り巻く環境は厳しい。石崎さんは「(和解まで)長かった。地裁で棄却されているし、譲歩を勝ち取った方だと思う」と話す。
一方、導水が漁業権を侵害すると訴え続けていた那珂川の漁協関係者らからは厳しい声が出た。
サケ漁を主とする那珂川第一漁協の小林益三組合長は会見で「うれしくない」と言い切った。サケやアユの仔魚が遡上するか不安は残るという。「モニタリングの結果が(良くても)、長く続くか分からない。これからも戦っていく」と涙ながらに訴えた。
上流域の那珂川漁協の添田規矩組合長も「色々な問題が出てくると思うが、国と協議をして頑張りたい」と語気を強めたが、その表情は硬かった。

水質改善は疑問
今後問題になるのは事業費だ。当初の1600億円から4度の計画変更で1900億円に拡大した。トンネル部分(総延長約45.6㌔)の工事進捗率は3割にもかかわらず、すでに1534億円が使われている。
国交省と県は残り工区の事業費について明言を避けるが、増大するのは必至だ。八ッ場ダム(群馬県)では事業費は当初の2.5倍の5320億円に膨らんでいる。
事業最大の目的である水質改善についても、疑問は残ったままだ。霞ヶ浦の貯水量8.5億㌧に対し、導水事業で霞ケ浦にもたらされる水は年6億㌧と少なく、事業を検証したことがある東京の大手ゼネコンの関係者は「改善につながるとは思えない」と言い切る。
茨城大学人文社会科学部の原口弥生教授(環境社会学)は「和解は評価できる。国側か漁協側の意見を聞く場が設けられたのは前進だ」とする。一方で、「必要な水の量や環境保全の必要性など、着工したときと状況は変わっており、継続する場合も事業を多面的に捉えて、見直す必要があるのでは」と指摘する。

霞ケ浦導水訴訟 国と漁協、和解成立で終結 取水口運用、定期協議 /茨城
(毎日新聞茨城版2018年4月28日)https://mainichi.jp/articles/20180428/ddl/k08/040/043000c

霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶ「霞ケ浦導水事業」を巡り、茨城、栃木両県の漁協が那珂川取水口(水戸市)の建設工事を差し止めるよう国に求めた訴訟は27日、東京高裁(都築政則裁判長)で和解が成立し、9年に及んだ訴訟が終結した。今後は国と漁協が定期的な協議の場を設け、環境悪化を防ぐため取水口の運用について話し合う。【加藤栄】
高裁が先月30日に示した和解案を原告、被告(国)の双方が受け入れた。
和解条項は「那珂川水系での漁業への影響に配慮し、漁協らの意見を尊重する」と明記。国土交通省関東地方整備局に対して、毎年7月に漁協との協議の場を設け、本格的な運用方法を話し合うよう求めた。
また運用が決まるまでは、毎年10~1月の午後6時~午前8時はアユの稚魚が吸い込まれるのを防ぐため取水せず、霞ケ浦からの「逆送水」も少量にとどめたうえ、同川に生息するアユやサケ、同水系の涸沼に生息するシジミを定期的にモニタリングするよう求めた。
和解成立後、原告側は東京都内で記者会見を開いた。那珂川漁業協同組合(城里町)の添田規矩(つねのり)組合長(75)は「まだまだ出発点で、これからが本当の協議の場。みなさんと自然や環境を守る努力をしていく」と決意を表明した。また那珂川漁業協同組合連合会(栃木県)の佐藤文男組合長(73)も「アユが吸い込まれるのを防ぐため厳重に話し合いたい」と述べた。
谷萩陽一弁護団長(県弁護士会)は「漁協の意見をふまえて環境を守る仕組みであり、さまざまな懸念を協議できる」と和解の意義を強調。「国はモニタリングのデータを全て出すなど、真面目に誠実に取り組んでほしい」と注文を付けた。
同事業は、霞ケ浦と那珂川、利根川を総延長約45キロの地下トンネルで結ぶもので、霞ケ浦の浄化と両川流域の渇水対策を目的としている。総事業費は約1900億円で、うち851億円を県が負担する。利根川との導水路や那珂取水口のポンプ場は既に完成しているが、地下トンネルは約7割が未完成。
1審・水戸地裁判決(15年7月)は「漁獲量が減る具体的危険があるとまでは言えない」として請求を棄却。原告側が控訴していた。
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霞ケ浦導水事業を巡る経過
1985年 7月 事業計画策定
10月 着工
94年 3月 利根川との導水路完成
2005年 3月 那珂取水口近くのポンプ場が完成
08年 3月 7漁協が取水口工事の中止を求める仮処分を水戸地裁に申し立て
4月 取水口工事に着手
09年 3月 8漁協が取水口工事の差し止めを求め水戸地裁に提訴
10月 民主党政権で見直しの対象になり、事業が凍結
14年 8月 国土交通省が事業再開を決定
15年 7月 水戸地裁が請求棄却の判決
18年 1月 東京高裁が和解勧告
3月 東京高裁が和解案

漁協、国と和解成立 本格稼動まで意見交換 導水訴訟控訴審

(下野新聞2018年4月28日 朝刊)http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20180428/3039975

(写真)和解成立後の記者会見で「那珂川を守る」と語る本県那珂川漁協連合会の佐藤会長(左から2人目)=27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

アユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、本県と茨城県の漁連・漁協5団体が国に霞ケ浦導水事業の那珂川取水口建設差し止めを求めた住民訴訟控訴審は27日、東京高裁で和解が成立した。国が漁協側との「意見交換の場」を設けることなどを条件に、漁協側が請求を放棄する。2009年の水戸地裁への提訴から約9年。着工から34年がたつ巨大公共事業の是非を問う住民訴訟が終結した。
この日の口頭弁論で都築政則(つづきまさのり)裁判長は「和解は終着点でなく出発点。双方が率直かつ冷静に意見交換し、納得のいく結論を導くことを希望する」と述べた。
和解条項では、国は事業が本格稼働するまで年1回、原則7月に意見交換の場を設けることを規定。アユの稚魚などが取水口に吸い込まれるのを防ぐため、10~1月は那珂川からの夜間取水を停止することや、霞ケ浦から那珂川への少量の試験送水(逆送水)を行い魚類への影響をモニタリングすることも定めた。
本県の那珂川流域4漁協でつくる県那珂川漁協連合会の佐藤文男(さとうふみお)会長は和解後の記者会見で「長く裁判が続いたが、今後は国とよく相談ができるので和解を前向きに捉えている。最も被害が懸念されるアユについて特によく話し合いたい」と述べた。漁協側の谷萩陽一(やはぎよういち)弁護団長は「漁業への影響を防ぐという訴訟の目的を達成でき、成果があった」と強調した。

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